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14歳

母さんがいなくなってから、もう2年が過ぎた。早かったような、長かったような、そんな気がする。どっちやねん!って感じだけどね。


街はすっかり日常を取り戻した。いや、違うな。新たな日常に慣れたと言うべきかな。1度壊れた日常が、新たな形で創られたのだ。


私も家事をするようになった頃は、朝起きるのが辛かったけど、いつの間にか朝早く起きる事に慣れてしまった。今では、目覚まし時計が鳴る前に目が覚めるようになった。


余談だけど、そう、驚いた事にこっちの世界にも目覚まし時計があったのだ。それは、電池ではなくて魔石で動いている。一種の生活魔道具なのだ。

私はもともと持ってなかったから、目覚まし時計の存在を知らなかったんだけど、母さんは使ってたみたい。ちなみに父さんも前から使ってたらしい。全然知らなかった。

私の事は母さんが起こしてくれてたから必要なかったし、それなりのお値段がするから、そう簡単には買えないんだそうだ。

そんな訳で、私は母さんが使ってた目覚まし時計を貰ったのでした。大事に大事に使ってます。



「「いただきます」」


私が用意した朝食を2人で食べる。


「うん、今日も美味いな」

「エヘヘ。ありがとう」

父さんはいつも私のご飯を褒めてくれる。嬉しいな!


「じゃあ、今日からしばらく留守にするからな。くれぐれも、くれぐれも気をつけるんだぞ。本当に伯父さんの家に行かなくて良いのか?これからでも大丈夫だぞ」

「ううん。大丈夫だよ!留守は任せてよ!」


私は、父さんに向かって胸をドンと叩いた。

父さんは、今日からしばらく買い付けで遠くに行くのだ。なんと、船に乗って外国まで行くんだって。


ー良いな〜。私も外国に行きたい。


本当はついて行きたいけど、父さんはお仕事で行くんだから、我が儘言わずに我慢です。

これまでも買い付けには行ってたけど、外国まで行くのは私が知る限りでは初めて。いつもより長く家を空ける事になるようだ。


ーううっ、淋しい。


いつもは伯父さん一家のお(うち)にお世話になるんだけど、私ももう14歳になったからね。もう1人でお留守番をする事にしたんだ。

父さんは心配してるけど、私は料理はちゃんと出来るし、心配ないと思うんだけどな。


「そうか?なら留守は任せるが…。知らない人が来ても、絶対にドアを開けちゃダメだぞ!」

「大丈夫。分かってるよ」


もう、この言い付けは耳にタコが出来るくらい聞かされている。そんなに心配しなくても大丈夫なのに。

でも、心配してくれる気持ちは嬉しい。


「心配してくれて、ありがとう、父さん。でも、私ももう14歳だよ!ちっちゃい子供じゃないんだから」

「そうだな。もう14だもんな」


父さんはしみじみと言った。

月日が経つのが早いものですよね。


「ちっちゃい子供じゃなくても、心配するのは仕方がない。けど、心配しつつも任せる事も大事だよな」

「うん」

「けど、何かあったら、すぐに伯父さんと伯母さんに言うんだぞ?」

「分かってる」


伯父さんも伯母さんも、従姉のお姉ちゃんからも、同じ事を言われている。『何かあったら言うんだぞ』って。有り難い事です。ありがとうございます。



朝食を済ませた後、私は父さんを見送る為に、一緒に港へ行った。

港には、たくさんの船が停泊している。


「うわぁ、大きい船〜」


父さんが乗る船は大きな船だった。流石、外国まで行く船である。


「じゃあな、エミリア。身体には気をつけるんだぞ」

「フフっ。それは父さんも同じだよ。身体に気をつけてね」

「ああ、分かってる。お土産、買ってくるからな」

「うん!楽しみにしてるね」

「ああ」


父さんは、私の頭をくしゃっと撫でると、船の係りの人に旅券を渡した。

係りの人は、旅券を確かめて『良し』と頷くと、父さんに向かって手を差し出した。


ー何をやってるのかな?握手?


すると、父さんは手を差し出さずに、首に掛けていた魔石のネックレスを取り出した。そして、係りの人に手渡した。係りの人は、その魔石を水晶のような物にピタッとくっつけた。


ー何してるんだろう。


すると、水晶が光りだした。


ーうぇっ!?


思わず、父さんや周りの人達を見るけど、誰も驚いたりしていない。皆には当たり前の事なんだ。

これは、気になる。

ええい!聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥!

私は、私と同じように見送りに来ているだろう隣に立っているご婦人に聞いてみる事にした。


「あの。これって何してるんですか?」

「ああ、これね。これは誕生の魔石で人物照会をしているのよ」

「ええっ!?そんな事、出来るんですか!」

「ええ。出来るのよ。不思議よね」


ご婦人はそう言って笑った。

とても雰囲気の柔らかいご婦人である。この人に聞いて良かった。


「すごいですね」

「本当よね」


ご婦人と話してる間に、父さんの人物照会は終わったようだ。荷物を手にした父さんが、私に手を振っている。私も父さんに手を振り返した。


「あの、教えて下さり、ありがとうございました」


私はご婦人にお礼を言って、父さんに近づいた。とは言っても、係りの人がいるから、ある程度は距離があるんだけど。言うなれば、駅の改札を挟んで対峙している感じだ。


「じゃあ、エミリア、行って来るな」

「うん。くれぐれも気をつけて」

「ああ、エミリアも」

「うん。気をつける」

「じゃあな」

「うん、行ってらっしゃい」


そうして、父さんは船に乗り込んで行った。

全ての乗客が乗り込むと、出発時間になった船は港を出港した。


「エミリアー!行って来るからなー」

「行ってらっしゃーーーい!!」


父さんは船の上にから私に手を振り、私は港から父さんに手を振って見送った。

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