日常
終息宣言から早くも1週間が過ぎた。街には日常が戻りつつある。7・8割は戻ってきたかな?でも、まだ完全ではない。
とてもとても心が痛む事だけど、人口が減り、仕事の担い手も減ったのだ。
新たな担い手はなかなか集まらない。近隣の街に仕事する人の募集をかけても、あまり来て貰えないのだ。
まあ、当たり前だ。誰だって、病気が流行った土地に、病気が治まってすぐに来たいとは思わないだろう。
我が家も、まだまだ日々を暮らすのに精一杯で、この生活が日常になるには程遠い。
朝、父さんより早起きするのが、とてもしんどい。私は眠い目をこすって、身体を起こした。
夏でこれだよ。冬は起きるのが、もっとしんどくなるのに。先が思いやられる。
ー母さんは、本当にすごいなぁ。
毎日早起きして朝ごはんを用意してくれていた。私が起きた時には、ニッコリ笑って『おはよう』と言ってくれていた。
朝、起きて台所に行った時に、誰もいない事にまだ慣れない。夏なのにあんなに寒々とした台所は、私は知らない。
今日も寒々とした台所に立つ。
「おはよう、母さん」
いない事は分かってるけど、台所に入る時には挨拶をする。
保冷庫を開けて、食材を取り出す。卵、ベーコン、キャベツ。
今日の朝ごはんは、パンとベーコンエッグとキャベツのスープにする予定。
用意が出来たら、テーブルに運ぶ。
「よし、セッティング完了!」
全部の用意が終わったところで、ちょうど父さんが入って来た。
「おはよう」
「おはよう、父さん」
2人で席に着いて、両手を組んで、食前の祈りを捧げる。そして、ご飯を食べ始める。
「おっ、今日もうまいな」
「エヘヘ、ありがとう」
こうして褒められると嬉しいものだ。
それに、料理初日よりは、手際も味も良くなった気がする。
あんまり出来なかったけど、ちょっとは母さんのお手伝いをしていたから、最初から少しは出来てたけど、それは本当に少しって言っちゃうレベルだった。
それが、レベルが1上がったかもしれない。今、料理レベル2くらいかな。
「エミリア、今日は昨日より帰るのが遅くなるかもしれない」
「そうなの?」
「ああ。あんまり遅いようなら、待ってないで先に食べてて構わないからな」
「分かった」
淋しいけど、仕方がない。別に食べないで待ってても良いんだけど、それは父さんがきっと気にするだろう。最後の1口分だけ残しておいて、それを一緒に食べようかな。
それなら一緒に食べた事になるし、父さんも気にせずにすむもんね。我ながら、良い考えかも。ニシシ。
朝食の後、父さんを見送ってから、食器を片付ける。
な、な、なんと!食器は洗浄の魔石を使って洗うんだよ!水の魔石と光の魔石の混合魔石に、洗浄の術式が組み込まれた物を使うんだ。これを使うと、あっという間にキレイになるの。便利〜。
こっちには家電がない代わりに、生活魔石があるんだ。
ちなみに、洗濯も掃除もこの洗浄魔石を使うんだよ。
洗濯も掃除もこれ1個〜、せ・ん・じょ・う・の・魔石〜。
家事が終わったら、学校へ行く時間。
「行ってきまーす」
ドアを閉めて、鍵をかける。
ちなみに、鍵も魔石ですよ。魔石って、凄すぎ!!