終息宣言
流行り病について領主様と神殿長様からお話があるからと、神殿に大急ぎで行くと、そこには大勢の人たちが集まってた。
「わあ!すごい人だね、父さん!」
「ああ、そうだな」
私達ははぐれないように、ギュッと手を繋いだ。
その間も、どんどん人が増えていく。
私達の後からもたくさんの人がやって来ているのが、分かる。
ーわあ、すごい人。
この街は結構大きい港街で、人口も多いからね。たくさんの人達が集まって来るのだ。
その時、『リンゴーンリンゴーン』
鐘の音が鳴り響いた。
すると、神殿の前に神官や巫女が現れた。その後に続いて、神殿長様とこの街の領主様が現れた。
神殿長様は白髪頭のおじいちゃんだ。対して領主様はまだお若い。40代かな?もしかすると30代かもしれない。
領主様が、風の魔石を使った拡大音声機で皆に声を届ける。
「シバリャエラの民よ。全ての民よ。我らは皆、等しく苦難の中にあった。それももう終わりだ。我らを苦しめてきた病は、終息した」
終息を宣言した途端、『わあぁぁぁぁ』と大歓声が上がった。中には涙を流して喜んでいる人もいる。皆、ほっとしたようだ。
私も父さんと顔を見合わせて『良かったね』と喜び合った。
次は、領主様と交代した神殿長様が話し始めた。
「流行り病の新たなる罹患者は、この1週間の間には1人も出ていない。この事から、私は病は終息したと考える。だが、油断は禁物だ。ちょっとでも体調の悪い者は、この後に神官や巫女に名乗り出るように」
それを聞いて、私は父さんに聞いてみた。
「父さん、体調はどう?」
「大丈夫だ」
その答えを聞いて、私は心底ほっとした。
「良かった」
「ああ」
私と父さんの会話の間にも神殿長様のお話は続いていた。でも、父さんと話してたから、あまり聞いてなかった。ありゃ。すみません。ちゃんと聞きます。
ちゃんと聞いていると、神殿長様が祈りを捧げようと言い出した。
「では最後に、儚くなった者たちへ祈りを捧げよう。皆、共に祈りなさい」
神殿長様のその言葉で、皆が一斉に跪き、両手を組んだ。そして目を閉じる。
神殿長様の言葉に合わせて、祈りを捧げる。安らかに眠れるように。生まれ変わって、また出会えるように。
ー母さん。あんまりお手伝いしなくてごめんね。これからは、母さんの分まで私が頑張るからね。今まで色々ありがとう。親孝行しておくんだったな。でも、こんな早くいなくなっちゃうなんて、思ってもみなかったの。母さん、次会った時は孝行するからね。また会おうね。
祈りを捧げてるうちに、涙が流れていた。
神殿長様の合図でお祈りを止めて隣を見ると、父さんも泣いていた。周りの人たちも。
私は父さんの手をぎゅっと握った。父さんを慰めようと。
父さんは私を見て、優しく微笑んだ。
「大丈夫だ。ありがとう」
父さんには私の気持ちが通じていたらしい。
「うん」
終息宣言は、お祈りをもって終わりとなった。たくさんの人達が、元来た方へと帰って行く。私と父さんも、手を繋いでゆっくり家路についた。