流行り病の終息
私が回復してから3日が過ぎた。その間は、父さんが買っておいてくれた食べ物を食べ繋いできた。父さんもお店にちょっと顔を出しては、すぐに家に戻って来ていた。
私は1歩も外に出ず、ずっと家の中で過ごしていた。掃除や洗濯をやったり、料理をしたり。
でも、とうとう食料を調達する為に外に出る事になった。これまでは、父さんが私を外に出そうとしなかったんだけど、1回感染している事や病の流行自体が終息に向かっている事を言って説得したのだ。
外に出るのは、正直怖い。流行り病がじゃなくて、周りの人たちの事を聞いたり見たりするのが。ご近所さんや友達が感染したって話を聞いたり、よく挨拶する人を見かけなくなったりしたらと思うと、心が冷えていく。怖い。けど、これから先、ずっと家に閉じこもっている訳にはいかないから、外に出る!頑張る!
外に出ると、歩いてる人がちらほらいた。良かった。人気がなかったら嫌だもんね。
えーっと、最初は八百屋さんに行こうかな。
「こんにちはー」
「おう、らっしゃい!エミリア」
「こんにちは。おじさん」
「エミリア、しばらくだったが、大丈夫だったか?」
「うん。私は大丈夫だったよ」
「そりゃ、良かった。で、今日は何にする?」
「今日はじゃがいもとキャベツをお願い」
「はいよー」
おじさんは、手早く用意してくれた。お金を払って、じゃがいもとキャベツを受け取る。
「まいどありー」
「おじさん、またねー」
じゃがいもとキャベツを買うと、カゴがずっしり重くなった。ふぅ。
でも、良かった。八百屋のおじさんは元気そうだった。
私は安心した。
お店も結構開いてるお店がある。流行り病が終息に向かってるって話は本当のようだ。別に疑ってた訳じゃないけど、実感する事が出来たから、安心感が増した。
次はお肉屋さんに向かう。
トコトコ歩いてると、お肉屋さんが見えてきた。
見えてきたんだけど。
あれ?開いてない?
お肉屋さんのドアも窓も閉まってる。どうやらお休みみたい。
仕方ないから、私は他のお肉屋さんに行く事にした。
ちょっと遠いんだけど、仕方がないね。
ーお肉屋さんのおじさんとおばさんは大丈夫かな?
心配になる。終息に向かっているとは言え、まだ完全に終息した訳じゃない。一刻も早く終わってほしい。
ちょっと先にあるお肉屋さんに行くと、そっちのお店は開いていた。良かった。
もう薫製肉が無くなりそうだから、補充したかったんだよね。
「こんにちはー」
「はい、いらっしゃい。おや、可愛らしいお嬢ちゃんだね」
「ありがとう」
私は褒められて嬉しくなった。ウフフ。
「何にしましょうか?」
「えーっと、薫製肉を600グランと豚肉を200グランお願いします」
褒めてくれたから、お礼に豚肉を買う事にした。おだてにのせられて買う豚肉だけど、決して無駄な出費じゃありませんよ。
ちなみに、この世界には魔石によって冷える冷蔵庫があるから、お肉は既に切ってあるお肉を買う事が出来るんだー。良かったー。豚一頭とか買えないしねー。解体とか出来ないしねー。魔石万歳!
けど、冷凍庫はないから長期保存は出来ない。だから、あんまりたくさんの生肉は買えないんだよね。
「はいはい。ちょっと待ってね」
「はーい」
おばさんが用意してくれるのを大人しく待っていると、その間におばさんがすぐに用意してくれた。お金を払って、お肉を受け取る。
「ありがとうよ」
「いいえー」
お店を出たら、後は家に帰るだけだ。
カゴがずっしり重くなったけど、頑張るぞ!
けど、おーもーいー。
ーあー、エコバッグとかリュックがあったらなぁ。
買い物バッグって、しっかりしたバッグなんだよねー。丈夫だけど、その分ちょっと重いし、かさばる。もう使えない服からトートバッグとか作ろうかな。リュックも欲しいなー。
そんな事を考えながら歩いてると、あっという間に家に着いた。
「ただいまー」
父さんはお店に行ってていないんだけど、一応挨拶して家に入る。
家に入ると荷物を降ろして、手洗いうがいをする。その後で、買ってきた物のお片付けだ。
「お肉は保冷庫でー、じゃがいもはここに置いてー、キャベツはこっち」
あっという間に片付け終わり!
「あー、疲れたー」
終わった途端、疲れがどっときた。
お水を飲んで、ちょっと休憩しよう。
コップに水を入れて、ゴクゴク飲む。
ーふぃー、生き返ったー。
私が一息ついてると、急に玄関のドアが開いた。
「エミリアーーー!」
「ひいいいいいっ!?いきなり何?」
手にコップを持ってなくて良かった。持ってたら、きっとコップを落としてるか、コップの中の水をこぼしてただろう。
父さんが急に現れて大声で私を呼ぶものだから、すっっっごくびっくりした。
身体がびくぅっとなって、耳と尻尾がピンっ!!ってなったよ。
「父さん、一体何?驚かせないでよ」
「病だ!!病が終息したぞ!!」
「えっ!」
「これから神殿で、領主様と神殿長がお話されるそうだ。行こう!」
「分かった!!」
そんな重大な事を聞き逃す訳にはいかない!
私は玄関に向かって走り出した。