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私と家族

思い出した。私の名前はエミリア。エミリア・マガニャ。12歳の黒猫獣人だ。12歳かぁ〜。どおりで胸がささやかだと思ったよ。12歳なら、これから育つだろう。多分。だと良いな。


私が自分の事を思い出してると、父さんが私がベッドにいない事に驚いてた。ごめんね、びっくりさせちゃった。

父さんは私がどこにいるのかとキョロキョロと辺りを見渡した。そして、私を見つけて目を見張った。


「おお!!エミリア!!目覚めたのか」


父さんは私に向かって勢いよく走ってくると、勢いそのままに抱きついてきた。


「…エミリア、良かった…」


ギュッとキツく抱きしめてくる。私の名前を呼ぶその声は、涙声だ。


「父さん?」


父さんの様子がおかしい。私が疑問を覚えると、父さんはちょっと身体を離して私の顔を覗き込んだ。


「エミリアは病に倒れた後、3日間も意識がなかったんだ」

「えっ!?3日間も!」


それって死にかけてたんじゃ…。


「ああ。このまま意識が戻らなかったらと不安だったが、目を開けてくれた。良かった…」


そして、泣きながらまた私を抱きしめた。


「父さん…」


何て声を掛ければ良いのか分からず、戸惑ってしまう。『心配してくれてありがとう』かな?それとも『心配かけてごめんね』かな?

うーん、どっちもかな。


「心配かけてごめんね。でも、もう大丈夫だから。心配してくれてありがとう」

「いいんだ。無事でいてくれさえいたら。ソフィアに続いてお前まで喪ってしまったらと思うと恐ろしくて…」

「えっ?ソフィアって、母さんの事だよね?母さんに何かあったの?」


『ソフィア』って名前を聞いて、母さんの事を思い出した。

どうやら私は私の事だけじゃなくて、忘れてる事が多いみたい。きっと記憶が混乱してるんだ。


「…そうか。エミリアは覚えてないんだな…」


そう言った父さんは、暗い顔・辛そうな顔をしている。


「うん…」

「ソフィアは……死んでしまったよ……。流行り病で…」

「そんなっ!?母さんが……」


私はあまりの衝撃に呆然としてしまった。父さんの言葉が衝撃的すぎて。そして、思い出したから。流行り病に倒れた母さんを。一生懸命に看病した事を。そして、願い虚しく母さんが………。

私はしばらく何も考えられず、何も言えなかった。

私も父さんも無言だった。

どれくらいそうしていたか分からないけど、ふと父さんを見たら、父さんは唇を噛みしめていた。辛いのを懸命にこらえているようだった。

その姿を見た瞬間、私は父さんを抱きしめた。ううん、父さんの背が高いから、抱きついたようにしかならなかった。けど、私は父さんの心を守りたかった。ギュッと父さんの体を抱きしめて、心を抱きしめて、悲しみに押し潰されないように守りたかったのだ。


「父さん!泣こう。泣いて良いんだよ。泣くのを我慢しなくちゃいけない時ってあると思う。けど、今は我慢しなくて良いんだよ。泣いて泣いて悲しもう。泣いて泣いて母さんを悼もう」


私がいきなり抱きついたものだから、父さんはびっくりしてたけど、私の言葉に1つ頷いて涙を流しはじめた。

私も泣いた。本当はまだ事実を受け入れたくないし、目をそらしていたい。母さんがもういないなんて、全然納得してない。

けど、父さんが泣いてるのを見てたら、私の目からも涙が溢れ出したのだ。父さんと一緒に泣こう。1人でなくよりもきっとその方が良いから。



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