脱出
私達は、さっき開けた壁の穴を通って、私がいた牢に戻った。牢の隅に空けてある穴の傍に3人でしゃがんで、穴を覗き込んだ。
「うーん、よく分からないわねぇー」
「そうですね」
アリシアさんの発言に、私は頷いた。下の部屋が何なのか確かめたんだけど、よく分からなかったのだ。でも、誰かいる気配はない。良かったー。
「とりあえず穴を広げて降りてみましょうか」
「はい」
「そうしましょー」
ミレイアさんの提案に、私とアリシアさんは賛成した。そうと決まれば…。
私は誰か近づいて来ないか耳をすませ、アリシアさんは手を部分形態変化させ、ミレイアさんはと言うと。
「私も手伝いましょうか?」
そうアリシアさんに聞いていた。そう言えば、ミレイアさんは何の獣人なんだろうか。『手伝いましょうか?』って聞けるくらいだから、きっと穴を広げるのを手伝える力や技術を持ってる獣人なんだと思うんだけど。無事逃げられたら聞いてみようかな。
「大丈夫ー。待っててー」
アリシアさんは手を高く上げると、勢いをつけて爪で引っ掻き始めた。すると穴がみるみるうちに広がっていくではないか。流石、獅子だね。
「このくらいで良いかなー?」
「良いわよ」
「じゃあ、私が様子を見てきますね」
私はすかさず言うと、穴に首を突っ込んだ。そして、猫目で薄暗い部屋を調べてみる。
さっきと同じで誰もいない様だ。良かった。それにしても、この部屋には物がたくさん置いてあるみたい。物置部屋かな?
私は穴から首を戻すと、2人の顔を見た。
「どう?」
「人は誰もいませんでした。物がたくさん置いてあるので、物置部屋かもしれません」
「そうー。なら、大丈夫だねー」
「そうね」
「じゃあ、私が先に行ってみますね」
私がそう言うと、ミレイアさんが心配してくれた。
「大丈夫?」
「はい。私は猫獣人ですから、暗い所でも見えますし、獅子みたいな力はありませんけど、その代わりすばしっこいですし、高い所からも上手く着地出来ますから」
「それなら、大丈夫だねー」
「ええ。でも、くれぐれも気をつけてね」
「はい!あっ、お2人は高い所からも着地出来ますか?下に何か置きましょうか?」
「私は大丈夫ー」
「私も」
「分かりました」
私は2人に向かって1つ大きく頷くと、脚から穴に入って行った。手は穴の縁を掴んでいるから、すぐに宙吊り状態になった。そして、手を放して下に降りた。
幸い、穴の真下に布が置いてあったから、私は靴を履いたままでも足音を立てる事なく、降り立つ事が出来た。でも、この布が衝撃を和らげられるくらいに厚みがあるか、大量にあったら良かったのに。
仕方がないから、私は物置部屋の中を探して、他に布を集めると、穴の真下にある布に重ねていった。
これで、お2人の足音も吸収してくれるはず。
私がアリシアさんとミレイアさんに『降りてきても大丈夫』と合図をすると、すぐにアリシアさんが降りてきた。流石、猫科。全く問題なかった。
アリシアさんが穴の真下から移動すると、ミレイアさんが穴から出てきた。そして、ふわりと降り立った。ミレイアさんも見事な着地でした。お見事!
無事、全員が下に降りられたけど、問題はここからだ。こっそり甲板を目指せれば良いけど、そうは問屋が卸さないだろう。はあ〜、私、戦いだと上手く役に立てる自信がないよ。
私が考えている間に、ミレイアさんが部屋の外の様子を探ってくれていた。壁に耳を押し当てて、音を聞いている。耳が良い獣人なのかな?
「大丈夫。この階に人はいないみたい」
「良かったー」
「でも、上の階、つまり私達がいた階には人がいる。私達が逃げ出した事に気付かれる前に急いで逃げましょう」
「分かったー」
「分かりました」
私達はアリシアさんを先頭にして進んだ。真ん中が私で、後ろがミレイアさんだ。ちなみに私は今、ミレイアさんの手を握っている。
何でも、ミレイアさんは夜目が利かないんだって。だから、私が手を繋いでるんだー。
ーいざという時には、夜目が利かないミレイアさんを私が守らねば!
私は心の中で気合いを入れた。




