黒猫獣人の少女
あまりの眩しさに目をぎゅっと瞑る。それでも閉じた瞼からまだ光が溢れかえってるのが分かった。
どのくらい時間が経ったんだろうか。しばらくかかったような気もするし、一瞬だったような気もする。それは全く分からなかったけど、光がだんだん消えていくのは分かった。
ちらっと目を開けたら、もう全く眩しくなかった。
「良かった」
いきなり眩しくなったから、何が起きたのかと怯えてたんだ。もう大丈夫な事に安心したよ。
ほ〜と安堵のため息をつく。
そして、ここが自分の部屋である事に気がついた。ベッドに寝てたみたい。
横を見ると、父さんがベッドサイドでイスに座りながら、ベッドに倒れ込むようにして寝てた。
「あれ?父さん?どうしてここに?」
何で父さんが私の部屋にいるんだろう?しかも、父さんは何か少しやつれたようだった。
大丈夫かな?父さん。心配。
話を聞きたいけど、父さんには睡眠が必要そう。
私は、このまま父さんを寝かせておいてあげようと思って、布団を肩から掛けてあげた。
「うん。これで良し!」
私は1つ頷くと、ベッドからそぉっと降りた。父さんを起こしてしまわないように、抜き足差し足忍び足。そぉっと移動する。
その際、部屋にある小さい丸テーブルの上に水差しが置いてあるのが見えた。
『そういえば、喉が渇いてるな』と思い、水差しからコップに水を注いで飲んだ。
「ああ、美味しい」
渇いた喉が渇いに染み込んだ。もう1杯飲む。
「ふぅ〜」
満足の息を吐き出して、コップを丸テーブルに置く。そして、顔を上げた。
「えっ?」
顔を上げたら、窓に私の顔が映っていた。その顔を見て、私は驚きの声を上げた。いや、顔の上にある頭を見て。その頭にある耳を見て。
「えっえええええ!?みみみみみみ耳があるっ!?三角の耳!?」
私はまだ夢を見てるんだろうか。疑問に思って、頬をつねった。
「痛い」
次に耳を引っ張った。
「痛い」
現実なんだ。他におかしいところはないかな?
手を見る。普通。
胸とお腹を見て、ペタペタ触る。普通。ちょっと胸がささやかな気もしないでもないけど…。
脚と足。普通。
お尻。
「んっ?」
何か変な物がある!
私は首をグリンと回してお尻を見た。
「しししし尻尾がある」
尻尾を掴んで持ち上げる。そして引っ張る。
「痛っ!!」
しまった。引っ張りすぎた。ううう、痛い。
私は少し涙目になりながら、尻尾をさすった。おお、よしよし。ごめんごめん。
どうやら耳も尻尾も間違いなく正真正銘私のものらしい。
どうしてこうなった?
首を傾げて考える。思いつかない。
あれ?父さんは?耳どうだったっけ?静かに歩いて父さんに近づく。
見ると、父さんにも頭に耳があった。猫耳だ。黒髪に黒猫耳の上に、寝てて髪に埋もれるようにペタンってなってるから、気がつかなかった。
そっかぁ、父さんも猫耳なんだね。
それにしても、おかしいな?何で父さんは分かったのに、耳と尻尾は覚えてなかったんだろう。
もしかして、さっきの夢のせい?光のせい?あの女の子のせい?
私は、女の子の事を思い浮かべて、「あっ!!」と声を上げた。
あの女の子、私じゃん!!
どおりで見覚えがあると思ったよ!!
でも。えー?あれー?何で、私が夢に出てきたの?じゃあ、この私は誰?
窓まで歩いて、姿を映す。
チョコレート色のふわふわの髪に、海色の瞳。顔立ちは可愛らしい。
「それで、貴女は誰?名前はなーに?」
窓に映る自分に問いかける。もちろん返事はない。
はぁー。これは父さんに聞くしかないかな。
私が諦めのため息をついた時、父さんの声が聞こえた。
「ん、ううん…。うーん」
父さんが起きるかな?
後ろを振り返って、父さんを見る。
もぞもぞ動いてると思ったら、ガバッと勢いよく上半身を起き上がらせた。
「エミリア!」
あっ!エミリア!そう。それが私の名前だった。