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来訪者

具合が良くなったようで、私は安心した。けど、まだ油断は禁物だ。


「まだ少し熱がありますから、今日1日はベッドで寝てて下さいね」


私がそう言うと、男の人は顔をしかめた。


「もう大丈夫だ」

「いやいやいやいや、ダメです!」

「これくらいなら、歩ける」

「無理は禁物!絶対にダメです!」

「…別に無理ではないが……」

「ダメです!良くなったと思って安心してたら、その後に一気に悪くなるって事もありますからね!」


私が腰に手を当てて『ダメだ』と言うと、男の人は『はぁっ』とため息をついた。


「どうしてもダメか?」

「ダメです!!」

「……どうしてだ?」

「はい?」

「どうして、そこまで頑なに反対するんだ?」


私はそう問われて、一瞬息を止めた。


ーどうしてって、それは……。


「2年前になるかな。この街に流行り病が流行したんですよ。知ってますか?」

「……聞いてはいる」

「そうですか。私が頑なに反対するのは、それが理由ですよ。あの時みたいな想いはしたくありませんからね……」

「…分かった。今日はこのまま休む事にする」

「良かった!」

「ただ…。仲間が心配してると思うから、連絡はしたいのだが」


私は男の人の言葉にびっくりしてしまった。


「そっか!連絡!!」


男の人の言葉に思い出した。私も連絡しなくては!


「それは心配してると思いますから、ぜひ仲間の方に連絡して下さい」

「私も友達に連絡して来ますね!」


私は急いで自分の部屋に入ると、風の魔石を使って友達のビビアナに連絡を入れた。風の魔石を変化させた鳥に声を吹き込む。


「今日、ちょっと咳が出るから、お休みするね。そんなにひどくはないんだけど、うつっちゃわないか心配だから念のため。お見舞いも大丈夫だからー」


吹き込み終えると、ビビアナの所に飛んで行かせる。学校にはこれで良し。あとは、伯父さんだ。伯父さんへは、手紙を書く事にする。

書く内容はビビアナへの伝言とそう変わらない。お店には行けないって事と、うつしたくないから家には来ないでねって事を書いていく。

手紙が書き終わったら、伯父さん・伯母さん用の魔石を変化させて伯父さんの所へ運んで貰う。


ーこれで大丈夫。


連絡をし終えると、私は男の人の所に戻った。

『コンコン』とノックをすると返事があったから、部屋に入った。


「連絡は出来ました?」

「ああ」

「良かったです。仲間の方も一安心ですね。それはそうと、お腹は空いてませんか?」

「…空いている」

「パン粥がありますが、食べられますかね?」

「食べられる」

「分かりました。じゃあ、温め直してきますね。あっ、お砂糖って入れますか?」

「入れなくて良い」

「分かりました。じゃあ、そこのお水を飲んで、そこに置いてあるタオルで身体を拭いて、そこに置いてある服に着替えておいて下さい。着替え、父さんのですみませんが…」

「大丈夫だ。………ありがとう……」

「!?いいえ!どう致しまして!」


お礼を言われたのが照れ臭くて、私は急いで台所へ向かった。


「ひえー、びっくりしたよぅ」


お礼を言われて、驚くなんて。でも、あの人は口数も少ない感じだし、ちょっと驚いちゃったよ。


「あっ、そういえば、まだ名前を聞いてなかった」


部屋に戻ったら、聞いてみようと心に決めた。

パン粥を温め直すと、私はまた部屋に戻った。


「あの〜、着替え終わりましたかー?」

「今、終わった」

「じゃあ、入っても良いですか?」

「大丈夫だ」

「それじゃ、失礼しまーす」


そろそろと開けると、父さんのパジャマを着た男の人が立っていた。そのパジャマ姿ときたら、つんつるてんだった。

私はサイドテーブルにパン粥が入ったお皿を置きながら、男の人に話しかけた。


「ああ、父さんのじゃ小さいですね。すみません。新しいのを買ってきましょうか?」

「いや、問題ない」

「そうですか?じゃあ、お言葉に甘えますね。それから、洗いますから、着ていた服を貸して下さいね」

「分かった」

「パン粥、熱かったら、ふうふうして食べて下さいねー」


服を渡して貰うと、私は洗濯しに向かった。

洗浄の魔石を使って、服をピカッときれいにすると、風の魔石を使って服を乾かす。あっという間に洗濯の終わり。

本当は洗濯物を干して乾かしても良いんだけど、今日は男の人がいるってバレたくないから、外には干せないんだー。だって、バレたら怒られちゃうもんね。

いけない事をしているようで、ちょっとドキドキするけど。


服をたたんで、また部屋に戻ると、パン粥は空っぽになっていた。良かった。食欲があるなら、ちょっと安心だ。


「お代わりを用意しますか?」

「大丈夫だ」

「分かりました」


私はお皿を下げようと手を伸ばした。その時、玄関のドアが大きく叩かれた。

ドンドンドンっ!!!


突然聞こえてきたその大きな音に、私の肩がはねた。もちろん、心臓も。


「何だろう?ちょっと行って来ますね。部屋からは出ないようにお願いします」


私はそう言い置くと、玄関に向かった。


「はーい。どちら様ですかー?」

「エミリア!オレだ!ロベルトだ!」

「ロベルト伯父さん?何で?」


ー来ないでって連絡したのに。何で来たの?

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