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怪しい音

父さんを乗せた船が出港してから、1週間が過ぎた。何事もなく平和である。

いつもの時間に起きて、ご飯を食べて、家を出る。学校に行き、お昼に帰宅した後にご飯を食べて、伯父さんのお店にお手伝いに行く。その後、家に帰って、晩ご飯を食べて、お風呂に入って寝る。毎日はこんな感じに過ぎ去っていく。


本当は、いつもより遅く起きても平気なんだけど、習慣っていうのは恐ろしい。目覚ましを遅い時間にセットしても、結局目覚ましが鳴る前にいつもの時間に起きてしまう。

別に2度寝しても良いんだけど、いつもパッチリと目が覚めちゃうから、結局起きちゃうんだよね。


「はぁ〜、父さんは今、どこにいるんだろう」


1人で淋しく晩ご飯を食べながら、ため息をつく。父さんに『留守は任せて』って言ったものの、もう淋しくなっちゃった。

あ〜、早く帰って来ないかなぁ。


私がそんな事を考えていると、外からドサっという何かが落ちたような音が聞こえてきた。

ドキーーン!!

心臓がバクバクしているし、びっくりして身体がビクっとなった。


「な、何っ?」


何か分からないけど、怖い。怖いから、音の正体を確かめたい。けど、怖いから、確かめたくない。

ああ、このジレンマ。

私はちょっと考え込んだ後、意を決して音の正体を確かめる事にした。

玄関を開けるのは怖いから、玄関近くにある窓を開けて、確かめる事にする。念の為、火の魔石とフライパンを用意して。もし怪しい人がいたら、フライパンで叩いたり、火をおこしたりして撃退すれば良いもんね。


それでも、私はビクビクしながら、窓に近付いた。まずは耳を澄まして何か音が聞こえないか確かめる。

うん、何も聞こえない。


次にカーテンを開けてみる。そおっと、慎重に少しずつ開けていく。そして、窓の下から顔をのぞかせる。けど、何も見えない。

まあ、外は暗いし、あんまり見えないよね。


仕方がないから、窓を開けて外を見てみた。もちろんその手には、火の魔石とフライパンを持っている。これがあれば、少しは安心。

外は暗いから、よくよく目を凝らして見てみる。

すると、何かが落ちているのが見えた。


「何だろう?」


結構大きいものだ。そこまでは分かったけど、それ以上はよく分からない。

怪しい人はいなさそうだし、危険もなさそうだから、私は一旦引っ込んで光の魔石を持って来る事にした。

光の魔石を懐中電灯代わりにして、使うのである。これがあれば、落ちている物の正体が分かるからね。


私は火の魔石を置いて、代わって光の魔石を手に取ると、再び窓に向かった。

一旦閉めた窓を再び開ける。そして、光を灯して辺りを照らしてみると…。

そこには、1人の人が落ちていた。ああ、いや、倒れていた。


「ひぃっ!!」


まさか人だとは思ってなかった私は、悲鳴を上げた。

だ、誰?けど、それは知らない人だった。


ー酔っ払いかな?


まったく、こんな所で寝ちゃうなんて、しょうがない人である。困ったものだ。けど、このまま寝かせて風邪でもひかれたら困る。


私は外に出て、その人に布団を掛けてあげる事にした。流石に家の中に寝かせてあげる訳にはいかない。ごめんなさいね。


私は布団を持って、外に出た。光の魔石を窓辺に置いてきたから、辺りがよく見える。もちろん、寝ているその人もはっきり見えた。

だから、分かったのだ。何だか様子がおかしいと。何となく呼吸が苦しそうである。


ーどうしたのかな?


「大丈夫ですか?」


私は、思わずその人の肩を揺すった。


「熱い?」


ーもしかして…。


と思い、私はその人のおでこに手を当てた。


「うん、やっぱり熱い。熱があるんだ。これは大変!」


私は頑張って、横向きに倒れていたその人を仰向けにさせた後、その人の両脇の下に手を入れた。そして思いっきり引っ張る。


「お、重いぃ〜〜」


これは大変だ。私は風の魔石を取ってきて、それを使った。風の力で持ち上げる力を補助するのだ。もっと魔術の力のある人なら、風の力だけで運べるだろうけど、私じゃ無理。補助だけで精一杯。これだけで疲れちゃう。

でも、風のおかげで今度は楽々運ぶ事が出来た。家の中に運び込む。


一瞬、伯父さん・伯母さんにこの人をお願いしようかとも考えたんだけど、伯父さんの家はここから少し距離があるから、お願いするのは諦めた。

それに、私が見つけたんだから、私が何とかしないと!という気持ちがあったから。

さらに言うなら、母さんを思い出したから。母さんが寝込んでいた時の事を思い出したら、この人の看病をしなくちゃという気持ちがムクムクと湧き上がってきたのだ。


ウチにはお客様用のベッドなんてないから、この人には申し訳ないけど、父さんのベッドに寝て貰うことにした。


「ふ〜、何とか運べた」


私はその人に布団を掛けると、急いでタオルを取りに行った。冷んやり濡らしたタオルを額に乗せる。心なしか、さっきより表情が穏やかになった気がする。


「良かった」


取りあえずは、今夜は様子見だ。明日の朝も熱が高いようなら、お医者様を呼んで診てもらおう。


ー早く熱が下がると良いな。


私は看病と徹夜の為に本を用意して、ベッドの横に置いたイスに座った。

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