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ココアは僕には甘すぎる  作者: Aのために。
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ココアの誘惑

こんにちは、Aのために。です。


今回はBLを投稿してみました。

年上受けが好みなAです(笑)

需要高めだと有難いですね(笑)

「おはよ〜」


そう甘ったるい声が聞こえて目を開けると、甘い匂いが漂ってきそうな東雲{しののめ}がいた。柔らかそうな目はキラキラと輝いていて、俺が目を開けると嬉しそうに笑っておはようという言葉が返ってくるのを待っている。


「…」


動揺する自分を抑えながら目線をそらしてベランダの方をみると風でカーテンが揺れていた。まるでそこからこいつが入ってきたのだと物語っているようだった。


「なぁ今日朝礼じゃねーの?」


そう言って首をかしげる東雲の顔は嬉しそうな子犬のようだったが、俺は容赦なく掴んで揺さぶった。


「お前また勝手にベランダから入ってきたな…」


怒りながらもベッドから飛び起きて制服に着替える間、東雲はニコニコしながら俺を見つめていた。相変わらず変な奴だ。

ドアノブに手をかけると東雲は嬉しそうに「いってらっしゃい」と言ってきた。


「…いってきます。」


聞こえるか聞こえないかの声で言って俺は階段を降りていった。


あいつのせいで今週もまた波乱万丈になりそうだ。


そうして俺の新しい1週間が始まった。




----------✂︎------------✂︎------------✂︎------------✂︎------------


無事に朝礼に間に合い生徒会長としての挨拶を終えると俺は生徒会室に向かって書類を運んでいた。


「木島会長!」


そう呼ばれて振り返ると簿記の柴田拓哉{しばた たくや}が走り寄ってきた。平均より背が低く栗色の髪の毛をしてるため皆から柴ちゃんという愛称で呼ばれている。本人も嬉しそうに返事をするのでまるで本当の犬のようだと思っている。


「この書類作成できたので、最後に確認とサインお願いできますか?」

「ああ、わかった。ありがとうな。」


礼を言って受け取ると、柴ちゃんは小さくぺこりとお辞儀をすると、今来た道を戻っていった。


そう、俺は木島璉{きしま れん}、生徒会長をしている3年生だ。小中と生徒会長やリーダーをやってきたので、高校の生徒会戦でも難なく勝利を勝ち取った。生徒会のメンバーも俺を慕っていてくれているようで嬉しい限りであり、俺の人生は優等生として真っ直ぐ伸びていそうだった。


今もらった書類を落とさないようにしながら資料を運び始めると、媚びたような甘い声が遠くから聞こえたきた。


「東雲くん〜今日もさ、カラオケ行かな〜い?」


頬が引き攣るのを感じながら聞こえた方を向くと、ココア色の髪をした美青年が女子3人に囲まれていた。3人とも長い茶髪や金髪をコテで巻いたようにぐるぐるとした髪の毛でゴテゴテしていて、遠くにいるはずなのに香水のきつい匂いがするようだった。


ココア頭が東雲乙貴{しののめ いつき}で、俺の幼馴染なのだが、学校内でもトップクラスの問題児でいつも合コンやらナンパやらを繰り返し補導対象になっている。しかし、本人の優しそうでチャラ男にはない可愛らしさを兼ね備えた容姿は、女子からの支持と人気が絶大で、学校であいつを知らない奴はいない。影ではファンクラブもできており会員数は卒業生も含めて莫大な数になっているらしい。


「ごめんね、今日は先客がいてさ〜また誘ってよ〜」

「え〜東雲のためにずっと我慢してたのに〜」

「じゃあもう1週間我慢してくれたら…眠れない程激しい夜にしちゃおうかな?」


そう言うと女子達から黄色い悲鳴が発せられる。


俺はまたやっているとため息をついて、東雲と女子達の前を素通りする。

だが、奴の素行は今に始まったことではないし、問題はそこではない。俺は東雲が幼馴染であることを隠しておきたいのだ。生徒会長とトップクラスの不良が仲がいいなんて知られたら、生徒会長としての威厳や風紀が損なわれてしまうし、あいつが退学にならないのが俺の口利きだと思われてしまうからだ。


だが、そんな俺の心配をもよそに、俺の肩に手が置かれる。


「会長ーーー!書類運び手伝ってやろうかー?」


甘ったるいのに泡のように軽い声に俺は嫌そうな顔で振り返る。


「俺に構うな。」


冷たく言い放っても生徒会室までついてくる東雲を追い払えずにいる自分に苛立ちながらも、それは書類をのせいだと言い訳を並べながら廊下を歩く。


「なぁ会長ー?」

「なんだよ。」

「今日も…お願いしてもいい?」


ふざけるな、と言おうと顔を向けると、まるで捨てられた子犬のような目で見つめてきている東雲を無下に払えず書類のせいだと思い込みながら俺はまた顔を背ける。


「…ったく、しょうがないな」

「本当!よかった!」


そう言って嬉しそうに喜ぶ東雲を横目に俺はまたこいつを甘やかしてしまったと後悔する。


「わかったならとっとと教室に戻れよ。」


そう冷たくあしらっても「はーい」と快く返事をして教室に戻っていく東雲の背中を見つめながら、今日も素直になれない俺は優等生としてどう対応すればよかったのだろうかと思いながら俺は生徒会室の扉を開けた。

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