第16話 「気が抜けない」
王都が燃えている、隣国のラボールの急襲に国境警備隊はなすすべもなく
一気に街道を制圧されて、敵軍の騎馬が王都外周の城壁に達したのが明け方だった。
周辺国との不可侵条約が結ばれて100猶予年、互いに低い関税と簡易な通行証で行き来をし交易によって富を分かち合い、王族間のみならず民間まで婚姻関係が結ばれて、すでに国を分けていてもお互いが争うとは誰も考えなくなった今日の出来事であった。
海に面した我がインサニア、東にシャルバ、西のノアボそして北のラボール、そして中央にバルエワの五カ国で先の条約を結ぶ前は戦争と政略で常にどこかの国と争い領土を取り合っていた。
「・・・ランドレ~。」
「・・ランドレ~~。」
声を限りに叫ぶ、どこにいったのだ。
煙や業火、我先に逃げまどう人々、時々聞こえる爆発音、馬の嘶きやその他の動物の鳴き声が耳を奪う。
剣戟の音の中一騎の馬が近づいてくる。
「ここでしたか隊長、連隊長が探しておられます。」
馬から下りてきたのは、副官のシムサであった。
「む、何用だろうか?私の参謀が見あたらずに探しているのだが。」
「第一の門が破られて、城下町に敵兵がなだれ込んでおります。中の門まで下がり、体制をたてなおすものかと。」
「この状況でか?気持ちは分からないではないが、民はどうするのだ?。」
「できうる限り逃がせ、としか聞いておりません。」
「わかった、して連隊長はいずこに?。」
「未だ、初の門にて戦線を維持しております、中隊長殿には別命があるとのこと。この馬を使い至急お戻りください。」
「・・・わかった。貴殿はどうするのだ。」
「ここで、民の誘導をいたします、折を見て合流します。」
その声を聞きながら、馬を走らせるだが現場にはいけなかった。
場面が暗転して、私は王宮の回廊に居た。
「王妃様大丈夫ですか?、ランドレこれは一体どういうことだ。」
私の目の前には、王妃カタリーナ様の背後に周りその喉元にナイフを当てて脅している、私の幼馴染にして参謀長を務めるランドレがいた。
「どういうことだランドレ、自分が何をしてるかわかっているのか?。」
周りのは、近衛兵や侍女に侍従長らがいて見守っているー王はどこだ?。
ランドレがなにか言っているが聞こえない、王妃も何か喋っているが段々その声が遠くなっていく。
ただその目前でランドレは王妃の喉をナイフで掻き切った。
溢れ出る鮮やかな血が回廊を染める、反射的に腰の剣を引き抜きランドレに斬りかかるが何故かその剣先が届くことはなく、逆に私の胸からは剣先が突き出していた振り返った先には・・・。
再び暗転した時に、私の眼前に見えたのは・・・。
「パイア?戻ったのね。」
岩窟の束の間の居室のベッドの上で、目覚めた私を覗き込んでいたのはパイアだった。
どうやら、本を読んでるうちに眠っていたようだ。誰がベットまで運んでくれたのか?
足元にはゴーレムのダイちゃんがいて無言で佇んでいる。
「ダイちゃん、ありがとう運んでくれたのね。」
どうやら、夢を見ていたようだ。しかし生々しい夢というよりも過去の記憶かもしれない
だとすると失敗したわけだ、まぁ殺されてたもんな。
でもいまなぜそれを見る?もしかしたら今回も失敗しかけてるのか?。
「「ダーク、ライオネルは何をしている?石の山に登ってる?」」
「パイア、石の山ってあれか、大ちゃんの残骸か、片付けてなかったのか?。」
「残骸というか檻作った残り、危険はない。」
いや、何かあるかもしれないじゃん。たぶん今そいつに何かあったら、また転生するはめになりそうじゃん。
「「ダークはライオネルを拘束して、こっちに連れてくるーああ運べないか・・・。」」
そら、そうだなゴーストだもんな・・・。
「私、行こうか?。」
パイアは行く気満々だが、多分行ったら戦争になると思うぞ?ここは・・・ミントだな。
すぐさまミントを再召喚してライオネルの確保を命じた、そしてダークにはミントが到着するまで、ライオネルが余計なことをしないように命じた。