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第11話 「動く石像」

昨夜はさんざんだった、せっかく作ったバンガローは二日目で焼け落ちて、結局一晩しか寝なかったことになる。それはいいとしてミントが拾ってきたこの青年、VPS(仮想空間内での戦闘体験)というゲームをしていたという。ゲーム空間から平行宇宙の別世界に転移なんてことが起こり得るのだろうか?。非現実的とはおもわない、かくいう自分も転生を繰り返しているらしいし、最初は同じ世界かかなり近い世界に住んでいた記憶がある。


転移した人間と転生してる人間、大きな違いはないと思う。

どちらも地球からきたという点において同じだろう、些細な点は前者は戻る可能性があることで、後者にはその選択はないというか戻った世界で生きていけるかが問題だろう。

ここはおそらく剣と魔法のファンタジーな世界、なんでもありだから周りも受け入れてくれるだろうが、私の記憶にある地球ではそんな人間は受け入れられない無理だろう。


私が転生を繰り返す理由は覚えてないが、今回の転生ではおそらく彼を元の世界に戻すことが使命なのかもしれない。転生して二日目に出会うなんて偶然ではありえない展開なのだから、しかも繰り返し失敗?しているためか分かり易いように、この世界とはかけ離れた服装に装備に断片的に思い出す数々の記憶。


これで間違えるわけにはいかない・・・ということは


ここまで考えを整理したあと、平らな岩の床で寝苦しそうに寝返りをうつ彼のために敷き布団と掛け布団を用意して、ボーラの手を借りて布団にくるんでやる。


死なれたら、またやり直しかな?、そう思うと自分の力の再確認をする。

体力ー年齢並か?地球年齢で10歳程度の女子だから、とても一人では魔物に立ち向かえない。

精神力ー過去の人生分あると思いたい。

装備ーさいしょの服ってところ、防御力なんてないし、当然武器になる物もない。

持ち物ー四次元ポシェット、召喚に関する本(入門編)。


本・・これが唯一にして今のところ最大の武器兼道具だな、ここから得る力を最大限に使うしかないだろう。

そのためには・・・私は布団のなくなったベットから降りて、外に向かい出口までにカカオとボーンを召喚する。


「ミントついておいで、カカオはここで彼を守る。」


そう命じるとミントは入り口を覆うのを辞めて、カカオが代わりに入り口を覆い周りと同化して隠蔽する。

さて、今から目指すは私を襲ってきた奴らの巣窟、でも距離があるから着くまでは少し本でも読んでおきましょうかね。

ミントの上で召喚した光の精霊を使って、途中だった本を読み進めることにした。


 [目が悪くなりますよ?。]


「がんばって、光ってくれ。」


 [無理です、○indleじゃありませんから。]


「なんでおまえ、それを知ってる?。」


 [気にしたら負けですよ。]


あいかわらず、変わった本である。なんで読み手と会話しようとするかね?。


ミントにライオネルを見つけたところまで道案内をさせる、途中でボーンがゴブリン達の集落を見つけたので、様子を伺わせると誰もいないらしい。

さっきので全員かな?いないものはしかたないからとスルーして先に進む。途中ミントが岩の隙間に入ろうとするのを叱り、人が通れるところを進ませる。

山肌の一角に神殿のような建物が組み込まれている、入り口には普通に武装したオークが歩哨としている。


「まさか、あそこから出入りしてないよね?。」


そう聞くとミントは不満げにブルッと震えて脇道にそれていく、行く気だったなこいつ・・・木々の間をすり抜け生い茂る草をものともせず、からまる蔦を溶かして進み、山肌に空いた人がかろうじて通れる隙間に入っていく。


そこから進むこと30分程で、恐らく神殿の裏側部分にあたるのであろう場所に出た。


「よし、ミントは索敵に出て敵の種別と配置を探って、ボーンとボーラは現状待機。」


そういってミントから降りて近くの階段状になってるところに腰掛ける。

あと少しで読み終わるのだこの章が終われば新たな召喚が可能になるはずだから、頑張って読んでしまいたい。

文章からわかるのは新たな戦士系のようなのだが、どうも何かが欠けてるような気がする。


ミントから報告が聞こえる、召還主である私と召喚体とは思念接続といえる状態にある。つまり声に出さなくても指令をだせるし報告も聞けるわけだ。


[・・・階層が15、各階に違う種族が住み最下層に恐らくボス?]


[わかった、帰っといで。]


そんなやり取りに別の意識が割り込む、


[まず、見つかったオークが来ます。byボーン]


こんな風に私には聞こえている、うん見つかったか・・・えっ?。


「ミント急いで戻る、ボーンは別方向に誘導、ボーラは援護して時間を稼ぐ。」


そう指示してから、手元の本を見ると召喚呪文が浮き出ている。

試してみるか、どれか一体を解除することになるが?。

立ち上がり詠唱を始める・・・・何も出ない。

もう一度本に目を戻すと前のページの文章の中で光ってる文字がある。


「・・・媒介に触れ・・??。」


[素材といってもいいです。]


すかさず、別の文字が浮かび上がるーなるほどね。ちょっと素直になってきたねこの本。


周りを見ると壁も足下も粗削りだが石でできている、迷わず右手を壁に当てて、再び詠唱をすると壁の一部から人の形が抜け出してきたと同時にボーンとのリンクが切れるのがわかるーヘイトがこちらに向くが、ただちに今出現したストーンゴーレムに切り替わった。


[上位互換になります。]


呪文が書いてあったページに説明文が浮かび上がっていく、能力や特徴、欠点などが羅列されてある。ざっと目を通したが大きさに関する項目がない。戦場を奥に移動していくゴーレムは体高が5メートル以上ある、ほぼこの神殿?内の通路の高さに近いってか天井ひきずってるし。


ボーラのリンクが切れた、たぶん巻き込まれたんだろうな、凄まじい勢いでオークが挽き肉と化している。

動きが半端ない、石像がもっそりと動いてる感じではなくまるで暴風だ、凄まじいスピードで腕が振り回され足が繰り出される。

剣や矛、槍や弓矢が有効とは思えない、相手は石でできている石像だ。その質量も武器と化す為振り回した腕に当たれば盾ごと吹っ飛ぶ、踏まれると押しつぶされる。通路は文字通り血の海だ、そこに肉塊と金属らしきものや木片や布切れが浮かんでいる。


傍らにミントが戻ってきた、床の石材の間から湧き出てきた感じだが少し小さくなってないか?。

ーまきこまれたかー


[マスター、あれは何です?]


「あれは、うんゴーレムというものだけどな。」


答えながら、本のページに目を落とすと新たな文章が浮かび上がっていた。


[あの、イメージした大きさはどのくらいですか?。]


「うん?ああ大きさか、説明文にゴーレムとあったから思わず思い浮かべたのが牛久大仏くらいかな?。」


[うしくだいぶつ?それはなんです、どれくらいの大きさなんですか?。]


「おっ流石に知らないか、私も知らない・・・何となく頭に浮かんだだけだが、120メートルくらいか?。」


[それで・・・。]


「どうした?。」


[魔力が凄まじい勢いでゴーレムに流れ込んでます、周りの同一素材を取り込んで恐らくそのサイズまで大きくなると思われます。]


「まじか・・・まぁいいそのまま、最下層のボスと戦わせよう。」


動く石像じゃなくて仏像だったか・・・。


通路はどこも悲惨な状態だった、生存者はいないと同時に私の体内で急速に何かが積み重なっていく、それは私だけではなくミントもそうらしくいつの間にか、普通に会話ができるようにレベルアップしている、おまけにあの本まで喋り出したーまぁその方が便利だからいいんだけれどね。


でも本が喋るってどうよ?

ゴーレムが戦って大殺戮を繰り返している結果の経験値の分配によるものだとしれる。


「マスターこのあたりもちゃんと綺麗な壁があった。」


そうだろうなぁ無理矢理剥がしたような感じにみえるし、今は綺麗に岩肌になってるけど。

足下はとてもじゃないが目視に耐えない状態が続くので、今はミントの上に乗って移動している。(頭蓋骨から何かがはみ出してたり、胴体と思われるものから極太のソーセージのようなものがそこら中に散らばったり、腕と思しきものから骨が飛び出し眼窩に突き刺さていたりする中を赤い靴で歩きたいとわ思わないよ。)


このミントだが戻ってきたときはその体積が通常の1/2にまで減っていたが、今は元に戻っている。あのときミントは「もってかれた」と言っていた、それほどゴーレムの魔力の収集力が強かったらしい。かろうじて全部じゃなかったのは奇しくも体内に刻んだ魔力の再供給の術式のおかげらしい。ではボーラは?彼女は文字通り巻き込まれたようだ、再召喚を試みたが魔力が不安定で成功しなかった。


「この先はどうなってるの?。」


「・・・確か吹き抜けがあったはずです。」


「その底にボスが居る?。」


二人の会話に第三の声が加わる、お喋りな本が話しかけてくる。


「何か聞こえません?。」


それは、低く重い声で威厳に満ちていた、恐らく自分の力や能力に自信もある強者の声だった。


「「小賢しい、石塊の木偶人形風情で割れに挑むとは、100万年早いわ!。」」


「・・・・・・。」


ゴーレムは答えない、答えてるかもしれないが聞こえない。

凄い熱気が湧き上がってくる、ドラゴンのブレスだろう結構な距離があるのにこれ以上近づきたくない感じなんだが、


「「ほう?これぐらいでは溶けぬか、ならば更に温度を上げてやろう。」」


まずいー


「ミント停止、私を収容して体表面を固形化して防御―あっ。」


「あっ、なんですか?」


「リンクが切れたーというか召喚時間が切れたかも。」


「「のわっ~~。」」


凄まじい音が響き渡る中ドラゴンの悲鳴のような声が聞こえた気がする。

体高が120メートルの石の塊(ほんのりと暖かい)がどれぐらいの質量かわからないが崩れたようだ、降り注ぐ先にもし生物がいたなら押し潰されたかもしれない。


ミントを急かしてその場所に向かう。

竪穴を上から見下ろすと見事に大量の石材が積み重なっている。


「生きてるかな?。」


「だとしたら、バァ~ンと押しのけて飛び出してきませんか?。」


確かに映画とかだとそうやって出てくるなって、もう今更だけどなぜそう思った本よ。


「マスター再召喚したら見えるのでは?。」


おっ流石ミントよく気がついた、ついでに名前もつけてやろう。


再詠唱すると石たちが組み上がっていく、瞬く間に石像になった足元に打ちひしがれたドラゴンが潰れていたがピクピクしてる。


「お前の名前は・・・ゴレいや大仏をイメージしたから「ダイちゃん」とする。」


「「グッ・・・おのれ石塊の分際で今度こそ溶かしてくれる・・・」」


床で潰れていたドラゴンが起き上がりブレスを放とうとする。ここでそんなもの出されたら私が焦げちゃうーそう思ったのでダイちゃんの召喚を解除する。

再び120メートルに組み上がってた石塊が怒涛の勢いで崩れ落ちるー床に這いつくばるドラゴンの上に、ドラゴンも小さくはないと思う20~25メートルはあるようだが・・・


「「うぎゃ~。」」


轟音とともに粉塵が巻き上がる。今度こそ死んだかも・・・と思いながら再召喚する。

三度組み上がるダイちゃん、その足元にはさっきよりぼろぼろになったドラゴンが・・・


「「・・・お・おのれもう許さん!地獄の業火に焼かれて・・」」


ズゴゴゴ~んという轟音とともに粉塵が再び巻き上がる、三度崩れ落ちるダイちゃん。

何かもう痛々しいんだけどね。中々死なないなぁドラゴンって、流石ファンタジーのラスボスだわ。


四度組み上がるダイちゃんの足元のドラゴンは息も絶え絶えのように見える。


「「・・・・・・・殺せ・・・・。」」


ついに諦めたかな、一応念のためにボーラを再召喚して近づけてみると、動かないとおもわれた腕を動かして、その鉤爪で近づくボーラをなぎ払ったので

ダイちゃんまたまた解除―振りかかる石塊。


「「あぎゃ~ごめんなさい・・・調子のってました~もう許し・・。」」


悲鳴の最後の方は轟音にかき消されて聞こえなかった。




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