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第一話:稀な遭遇

第一話

 一月四日。羽津学園の年明けは早い。

「今日はこれで終わりです。気をつけて帰ってくださいね」

 見た目がロ……幼い四季小春先生の話が終わり、ようやく解放される。

「あー辛かった……よもやこんなに早く学園が始まるとは」

「半ドンだからいーだろ別に」

 俺の愚痴をさらりと流して千鶴たんは帰ってしまった。普段は一緒に帰っているが、今日は何やら家の用事があるらしくこれまで断る事のなかった放課後遊ぶという予定もなくなっちまった。

 隣のクラスにもう一人普段一緒に帰っている生徒がいるものの、今日は風邪をひいてお休みのため一緒に帰ることも出来ない。

「暇だし、お見舞いにでも行ってみようかな」

 一月四日に行くのはどうなんだろうな。うーん、ま、風邪をひいているんなら別に問題ないよなぁ。

 ちょっと顔を出す程度にしようと決め、鞄を掴み教室を後にする。

 校門前までやってくると金髪でシャツを着たボインな女の子が男子生徒に話しかけていた。

「えーと、貴方の名前は夢川冬治さんですか?」

「いや、違いますけど」

「それなら、夢川冬治さんを知っていますか」

「ああ、それなら知っていますよ。確か二年B組じゃなかったかな。さっき終わってたから行けばまだいるかもしれないよ」

 どうやら俺を探しているようである。しかし、見た事がない少女だ。金髪も地毛とは思えないな……何せ、眉毛が黒いし。

 ありがとうございますと男子生徒にお礼を言った少女は自身のお尻を他の生徒にぶつけそっちにも謝っていた。結構短いスカートを履いているので頭を下げるとついついお尻に視線を向けてしまう。

 他の男子生徒もそのようで彼女がその視線に気づきお尻を隠そうとするとあらぬ方向へ視線を向けていた。

「えっと、二のビー、二のビー……」

「……」

 俺の名前を知っているからと言って、こっちが相手の事を知っているわけでもない。何やら面倒事に巻き込まれそうだったのでそのまますれ違う。

「ん?」

 少女が途中でこっちを振り返ったようで走り去ろうとしていた足音が止まる。気付けば俺は小走りで角を曲がり、そこからは一生懸命足を動かして走り去ろうとしていた。

「ここまでくれば大丈夫だろ」

 民家の屋根の上だ。猫がたむろしているものの、蹴飛ばして居座る気もない。

 正月にあった父ちゃんからの着信を思い出し、ため息をつく。

「まさかな」

「ごめんなさい。伝説の血をおもちなんですよね」

「え?」

 信じられない事が起こっていた。

 ひとつ、柔らかい二つのふくらみが背中に当たっていた。

 ふたつ、なんと、空を飛んでいた……とは言っても、数メートル程度だ。

 みっつ、耳元でさっきの女の子の声が聞こえていた

「ごめんなさい、私、血の事になるともう駄目なんですよ。じゃあ、遠慮なく頂きますね」

「あがっ」

 歯が首筋に突き刺さった。日中、まさか美少女に血を吸い取られるなんて誰が想像しただろうか。

 このまま血を飲み干されて死んじまうんだろうか。そんな考えが一瞬だけ頭をよぎる。身体を動かそうとしても信じられない力で抑えつけられてしまってどうしようもないのだ。

「うっ……」

 しかし、そんな状況は長く続かなかった。女の子と俺はそのまま落下し、民家の屋根に身体をぶつけたのである。

 幸い、俺は少女の上に落下したのでそこまで酷い傷を負ってはいない。女の子を見捨てるのは如何なものかと思ったが、相手が敵対心をもっているようなら助ける必要はなさそうだ。

「逃げるか」

 この場で女の子が目を覚ますのを待っているよりも逃げたほうがよさそうだ。幼いころに自動車事故に遭ったことはあるものの、久しぶりに感じた死ぬ感触……未だ流れる自分の血を気にしながら俺はその場から逃げだした。

 ついでに言うなら少女のパンツは水色と白という最近では見ない珍しいものだった。


プロローグのあとがきでいい忘れていました。基本的に投稿は朝の七時を予定しております。今回の話に限ったものではないのですが、吸血鬼で連想するものって人によって違うんですよねぇ。解釈も違うし、絶対に納得いかない設定もあるんだとか……。そんな人たちの地雷を踏まないように気をつけていきたいと思います。

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