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第九話:気になるあの子は吸血鬼

第九話

「このクラスに新しい仲間がやってきました」

 朝礼が始まり、四季先生がそんな事を言って笑った。しかし、クラスメートはもう飽きたと言わんばかりの表情で四季先生を見つめている。俺も転校生であったもののその一人だ。

「……何人目だよ」

「転校生ねぇ」

「えーっと、冬治君を含めるから……」

「あたしもそうね」

「波恵もそうですので六人目ですね」

 三学期が始まってすぐ……しかも、いきなりである。俺には何となく想像がついていたので覚悟していた。

「じゃあ埜崎百々さん入ってきてください」

「やっぱりそうか」

 金髪の髪を風に遊ばせながら百々が教室へと入ってくる。男子生徒達は美少女だったので歓喜し、女子生徒からもあの子綺麗という声が聞こえてきた。

 いくら転校生が飽きたと言ってもこのように話題性のある子ならウェルカムなのだろう。ああ、俺が転校してきた頃が懐かしいなぁ。

「はじめまして埜崎百々です。夢川冬治君の親戚で彼の家に住まわせてもらっています。ちょっと中途半端な時に転校してきましたけれど、皆さんと仲良くなれれば嬉しいです」

 どっかのアイドルとは違うような清楚感あふれる表情に、千鶴たんみたいな中途半端な金髪ではない。

「ひゅー」

 男子生徒は諸手をあげて彼女の転校を喜んでいるようだった。

 苦々しげな表情の俺と満面の笑みの百々は対照的ながら目を合わせていた。

「じゃあ、席はどうしようかな」

「一番後ろの席でいいです……あ、ちょうど冬治君の後ろが開いてますからそこでどうですか」

「そうですね、じゃあ、行ってください」

「はい」

 てっきり、隣に居る千鶴たんを押しのけて俺の隣へやってくると思っていただけに意外だった。

「はい、じゃあ朝のホームルームを終わりますね」

 そして、俺の考えがあまかったことをすぐに実感するのであった。

 休み時間は結構な人数に囲まれて矢継ぎ早に質問を受けていた。授業が始まると生徒達は当然、席に着くので静かになる。

「……」

 見られている、そう感じるのだ。

 授業中、俺の事をじっと眺めている人を感じる。それがいったい誰なのか、すぐさま想像がついた。

 だからといって後ろを振り返るわけにもいかないので一時間目は何とか耐える。

「ふーっ」

「………っ」

 耳元に息を拭きかけられても、我慢だっ。

 休み時間に入ると最大限怖い顔で振り返る。

「おい、百々……」

「埜崎ちゃん、ちょっと質問があるんだけどいいかな?」

「ああ、それなら私も。好きなアイドルはやっぱり私だよね」

「あたしはこのクラス一っていうか、青空グループのお嬢様なのよ」

「その付き人です―」

 こういった感じで邪魔され、俺の質問は全く聞こえていないようだった。二時間目も同じ感じでずっと監視されている気分だ。

「勘弁してくれ……」

「え、何がだ?」

「いんや、独り言……黒板の問題に対して思っただけだよ」

「だよなー、わからないよなー」

 結局、休み時間はおろか昼休みも話は出来なかった。

 ようやく話が出来そうになった放課後を俺は見逃さなかった。

「ねぇねぇ、埜崎ちゃんこれから……」

「おっと、悪いな。百々は俺と用事があるんだよ。ちょっと買いだしに行かないといけないんでな。質問とかはまた明日してやってくれ」

「あ、ちょっと待ちなさいよっ」

 クラスメートの言葉も無視して俺は百々を引っ張っていった。

 周りに人がいない事を確認し、俺は百々にため息をはいた。

「あのなぁ、一体どういうことだよ」

「どういう事とは?」

「なんでこの学園に通っているんだよ。お前さんは吸血鬼だろう?」

「吸血鬼でも学校には通いますよ。人間社会に溶け込んで生活していますからね」

 この事について論議する時間はない。さっさと本題に入ろう。

「……まぁ、それはいいとしてだ。何で俺をじっと見てるんだよ。授業中も気になって仕方がなかったぞ」

「あれ、気付いたんですか?」

「気付くわいっ。あんだけじっと見られてたらなっ」

「自意識過剰なのでは? 私はただ冬治さんの血が吸いたいなーと思っていただけです」

「さっき気付いたんですかって言っていたのに自意識過剰とか……」

「安心してください。一応、表面上は約束を守りますから」

 本当かよと思ったものの、ここは素直に頷いておいた方がいいだろう。どうせ、切りこんだところでまたごまかしたりするだけだ。

「……じゃあ、しょうがねぇ、これから買い物に行くぞ」

「え? 何故です?」

「百々に必要な物を買いに行くんだよ。ついでに、今日の晩御飯の分も買いに行かないとな」

「冬治さんは何が食べたいんですか」

「お前の料理はうまいから何でもいいぞ」

「私は冬治さんの血が吸いたいです」

 大仁さん……俺、この吸血鬼をいつか撃ってしまいそうです。

「今日はレバーにしましょうか。あ、マグロの赤身とかも美味しいですもんね。付け合わせはひじきのサラダにしましょう。吸い物はあさりでいきますね」

 こんな風に話しているときはただの普通の女の子なんだけどなぁ……。

「ん? どうかしたんですか?」

「いんや、何でもない」

 なに、まだこの吸血鬼の少女と出会って間もない。彼女の考えを俺が少しでも理解すれば……妥協点とかは見つかるのだろう。

 一緒に暮らしていけば我慢できるようになるはずだ。


さて、ここからが本番です。本番と言ってもつながっているようで繋がっていない話になるだけですがね。

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