羽のない背中
ちょっとグダグダしてますが…どうぞw
大好きだったあの人。
臆病だけど背中に大きな羽があるあの人。
笑った顔が大好きだったあの人。
泣かないで。
笑った顔が一番、かわいいんだから。
だから泣かないで。
愛してくれて。
ありがとう。
「わぁ〜♪わんこだぁ〜」
ボクが初めてギュッと抱き締められたときに聞いたことばだった。
痛いっていったんだよ?
“わんっ”って。
春に生まれて、ほっぺが真っ赤だったからモモちゃん。
ホントに楽しい子だったな。
でもモモちゃんはまた強く抱いたっけ。
モモちゃんの目は真ん丸で、真っ赤なほっぺたでかわいかったな。
ボクはいつもキミと一緒だったね。
寝るときも遊ぶときも笑うときも泣くときも。
ずっとずっと一緒だったね。
ボクはモモちゃんが笑ったときが一番好きだったな。
でもモモちゃんがだんだん遠くなっていくのがわかったんだよ?
“ガクセイ”だもん。しょうがないよね。
ボクはいつも通りにモモちゃんに朝と夜のあいさつ。
モモちゃんは朝も夜もボクをなでてくれたね。
でも朝は走っていっちゃうんだ。
夜もボクをみるだけ。
なんだかちょっぴり悲しいな。
でも忙しんだもん。しょうがないよね。
ふぁぁ〜…なんだか眠いなぁ。
おさんぽもいきたくない。
いつもたくさんのごはんもなんだかいらない。
お母さん、ごめんね。
心配かけて。
体がおもいなぁ…まぁいいや、ねちゃえ。
モモちゃんが帰るぐらいに起きるだろう。
私とプチはいつも一緒だったんだよ。
ちっちゃくてコロコロしててまんまるで。
しっぽの先だけ黒いわんこだよ。
とぉ〜ってもかわいいんだよ!
私が泣いてるときも笑ってるときもプチがいた。
でも今はなんだかプチが見えなくなってる。
私は今高校生。
いつも朝練と学校。
プチ。ごめんね。
ホントはもっともっとなでたかった。
もっともっと走りたかった。
プチ。
私が大人になったら一緒にまた遊ぼうね。
私が大人になる姿をみてよね?
あの日、ボクは笑っていただろうか?
あの日、私はどんな顔だったのかな?
なんで?モモちゃんが泣いてるの?
なんで?プチ、こんなに冷たいの?
モモちゃん。やっとボクを抱きしめてくれたね。
プチ。ゴメンね…一緒にいられなくて。
大好きだよ。モモちゃん。
キミの笑顔が一番のやさしさだったよ。
だから泣かないで。
ほらっ笑って!
そしてボクを抱きしめてよ。
大好きだよ。プチ。
プチと一緒にいられる時間が一番楽しかった。
ゴメンね。ホントにゴメンね。
プチ。笑ってるの?
私…今、泣いてるのかな?
あの日。
ボクはちょっとした病気を持ってた。
でも大して死ぬような病気じゃなかった。
そんなボクを見てくれたのがモモちゃん。キミだよ。
ガラス越しにボクを瞬きせずに大きい目をして笑ってたっけ。
お母さんに引っ張られてもガラスから離れようとしない。
ボクはキミをずっと見ていたよ。
毎日、毎日。
雨の日だって、風が強い日だって。
キミはいつもボクを見てくれた。
お店の人がボクを引っ張りだした。
そしてちょこんと、小さな首輪をもらった。
真っ赤な首輪。
地面におかれた。
そして目の前には、モモちゃん。
ボクを笑って抱きしめてくれた。
その日はボクを離さなかったっけ。
お母さんから怒られたんだよね。
“プチが嫌がってるでしょ?”
それでもキミは離さなかった。
でもボクはとても嬉しかった。
それからキミとの一緒の生活だった。
それがもう…終わろうとしてる。
楽しかった日々。悲しかった日々。
どんな思い出も楽しいね。
でもとくに楽しい思い出はキミと笑っていたとき、かな。
大好き、だよ。
モモちゃん。
ほらっ。泣かないで。
ボクはモモちゃんの頬を舐めた。
しょっぱかった。
「…プチ。私、ひどいこと…」
違うよ?
モモちゃんは何も悪くないんだって。
ほらぁ。笑ってよ。
「プチ…?笑ってるの?」
うん。
モモちゃんが抱きしめてくれてるからだよ。
「こんな悲しい顔でプチと話しても、プチが悲しむよね。」
あ、モモちゃん。
やっと笑ってくれたね。
「大好きだよ。プチ。」
ボクもだよ、モモちゃん。
「お空にいっても私が向かいにいくよ。」
「ちっちゃな羽だけどきっとプチのところまで飛べるよ。」
「だから安心して。ほらっ!こんなに大きな羽があるんだからっ!」
そういったモモちゃんの背中にはなにもなかった。
だけど、ボクは見えるよ。
とても、とっても大きくてきれいな羽が。
だから会いにきてくれるよね?
ボクに会いにきてくれるよね?
ボクをまたギュッてしてくれるよね。
ボクと笑ってくれるよね。
大好きだよ。
モモちゃん。
もしかしたらボクが会いにくるかも。
そのときでもボクを抱きしめてね。
モモちゃん。
―――きっと。きっとだよ?
ウチの犬をみて書きました。何れは遠くなる存在。だけど今は近くにいてあげたい。そんな感じな物語です。これ書いて、ウチの犬を抱きしめました。…んが、嫌がって噛まれました。現実ってこういうもんですよね。