俺なりのショートショート10
健文が仕事から帰り、家のドアを開けた途端奥から子供たちが駆け寄ってくる。四歳の息子と、三歳の娘。おかえりなさい、おかえりなさい、二人ともそろって満面の笑みで健文の顔を見上げて言う。健文は二人の頭をそっと撫でて、ただいま、と返す。
すると、後ろのドアが開いた。健文が振り返ると、ちょうど二人と同じ歳に見える見知らぬ子供が入ってくるなり、健文の足元を通り過ぎるなり、おかえり…、といって勝手に家に上がりこんできた。
ちょっと何を…、訳が分からないまま入ってきた子供を追いかける健文。寝室の戸を開けて、中に入った見知らぬ子。健文が寝室に入ると、その子の姿は消えていた。ベッドの下の隙間も箪笥も開けてみたがどこにもいない。疲れているのか、それとも…。
二人の子供の元に戻ると、息子と娘の間に入って見知らぬ子が健文に向かって手を振っている。ちょっと…、健文が近づこうとするとその子はドアを開けて出て行ってしまった。
なんだ、あれは…?何が起きたのか全く理解が出来ない。二人の子の様子から、全く知らない子供なのはわかる。そうだ…、健文は冷蔵庫から卓上塩を手にして子供たちの前に戻ってきた。二人に向かって、これがあれば大丈夫だから…、そういって息子にドアを押さえさせて自分は塩の小瓶丸々一本をまいた。
大丈夫だから…、繰り返し言って健文はドアを閉めたのだった。視界の端に、何かをとらえながら。




