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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第三章 「滅都編」

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第三十六話「仲間」

 店主のいない宿屋でアインたちは身を休めていた。


 ジークの怪我は思ったよりも重傷で、戦いの緊張から解放されるとまともに歩けなくなってしまった。

 ルルはほとんど戦闘に参加しなかったおかげで目立った外傷はないが、ジークの姿に心を痛めている。

 もっとも外傷が多かったオルドだが、リヴの治癒と持ち前の回復力によってほぼ全快しており、今は繋ぎっぱなしだった馬たちのもとに居る。


「はい。治療は終わりました。ジークさんならすぐに動けるようになると思います」

「助かるよリヴ」

「ありがとうございます」


 寝たきりのジークの代わりにルルが深々と頭を下げる。


「アインさんの傷は何ともないんですか?」

「はい……」


 ルルからアインの名前が出た途端、リヴは少し顔を赤らめた。


「なんだい、まだ気にしていたのかい?」

「そりゃあ気にしますよ。なんだって裸で……」

「わぁわぁー!」


 二人の会話を手で遮り、リヴは勢い余って転んでしまう。



 遡ること一時間前。

 カーターを退けてアインに抱きついてから数分が経過すると、さすがにアインもリヴに声をかける。


「そろそろどいてくれないか。それに……」

「あ、す、すいません!」


 リヴが慌ててアインから離れると、そこで初めてアインの衣服がすべて燃え尽きていることに気がつく。何度も体を焼かれたのだから当然だが、そんな事を気にしている余裕はリヴには無かった。


「わわわ私のローブを……!」

「ん、いやしかし」

「いいですから!」


 リヴは困惑するアインに無理やりローブを投げつける。そして一目散に宿屋へと飛び込んだ。




「大丈夫ですか?それにしてもローブの下はそんな格好してたんですね」

「おかしいですか?」


 転んだリヴに手を貸しながら、ルルが物珍しそうに見る。


 リヴのローブの下は黒のワンピース姿だった。普段は顔と手以外の素肌を極力見せないようにしていたリヴだったが、今は肩も足もその白い素肌が目立っている。


「とっても似合ってますよ。ねぇ、大佐」

「ああ、普段はミステリアスで素敵だが、今は健康的で魅力的だ」

「大佐……ちょっと気持ち悪いですよ」


 褒められたリヴは悪い気はしないが、あまりにもストレートにリヴを褒めるジークに少し苛立つルル。


「幸い少し食料がのこっていたので先に食べていてください」


 ルルが不機嫌なのを察知し、リヴは部屋から出ていこうとする。


「先にって、君はどうするんだい?」


 何もわかっていないジークが尋ねるが、リヴはそのまま出ていってしまう。


「オルド准将を呼びに行ったんじゃないですか?」

「そうか、そうだね。ところでなんで怒っているんだい?」


 


 宿屋を出るリヴ。

 オルドを呼びに行くのはもちろんだが、それよりも先にやることがあった。


 町の外れ。何もない場所にたどり着いたリヴは、そこでアインに出会う。


「こんなところに居たんですね。何をしているんですか?」

「……たぶん、お前と同じだ」


 アインは目を閉じ、黒いかたまりに手を合わせていた。

 リヴはそのかたまりではなく、両手に抱えた灰を地面に下ろし、それに手を合わせる。


「俺の精神をこいつが乗っ取った時、こいつの精神もまた俺に流れ込んできた」


 目を開けたアインが一人でに語り出す。


「誰も守れず、自分だけが生き残った。こいつはきっと俺と同じだったんだ」


 複雑な表情で、アインはカーターだった黒いかたまりを見下ろす。体を乗っ取られたこともジークたちを傷つけたことも許せることではないが、怒りよりも哀れさが上回っている。


「私はそうは思いません。彼は自分だけのために力を得ようとした。あなたとは違います」


 リヴはカーターを許す気は一切無かった。自分が襲われたのももちろんだが、大切な人たちを私利私欲で傷つけた事はカーターが死んだ今でも許せない。


「なんにせよ、死ねば終わりだ」


 そう言ってアインはカーターの亡骸を地面に埋め、再度手を合わせる。


「……そうですね」


 リヴもまた、灰になってしまったこの町の魔族たちに一握りの土をかぶせた。



 それから二人でオルドを呼びに行ったが、オルドは馬から離れようとしなかったので、仕方なく食べ物だけ届けることにした。


「リヴ!」


 立ち去ろうとするリヴの後ろ姿に声をかけるオルド。リヴはアインに先に行くように伝え、アインもそれを了承する。


「ありがとう。君がいなければ私たちは終わっていた」

「いえ、そんな……」


 リヴがオルドのもとにいくと、彼女は深々と頭を下げてそう言った。リヴは顔を上げてほしいと困惑するが、オルドはしばらくそのまま動かなかった。



「正直帝都で君の事をジークから聞いた時、半信半疑だった。またジークが大げさに騒いでいるだけだと」


 この町に着いた時のように二人で並んで座り込み、オルドが自分を恥じながら語る。


「だが彼の言葉は一言一句違わなかった。君とアインが帝都を救い、そして今度は私たちを救った」

「たまたまうまくいっただけですよ。それにいくら助けようと私は結局魔族です」


 それは謙遜でも何でもなかった。結果的にそうなっただけだ。

 帝都は崩壊し、この町でもみんなが傷つき、多くの命が失われた。リヴにとっては、とても手放しで喜べることではなかった。


 父は人類を脅かし、兄はそれを拡大しようとしている。今も何処かで魔族によって人が襲われている。

 魔族は恐怖の象徴、その事実は何も変わらない。


「確かに君は魔族かもしれない。だが、私たちの仲間だ」


 自分をまっすぐ見つめながらそう言うオルドの視線から、リヴは目が離せなくなる。


 お礼を言いたい。

 何か伝えたい。

 言葉は出てこないが、涙は止まらない。

 そんなリヴをオルドは優しくつつみ込み、落ち着くまで胸を貸した。



「やあ、お帰りリヴ。おっと失礼アインか」


 リヴのローブを着るアインを、ジークがいたずらな顔で出迎える。その隣でルルは笑いが堪えきらずクスクスと笑みを漏らしている。


「お前、わざと言ってるだろう」

「ごめんごめん。謝るからそんな怖い顔をしないでくれ」


 次の町に着いたらまず服を手に入れよう。もしくはジークから剥ぎ取ろう、そう決意するアインだった。


 



 


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