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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第三章 「滅都編」

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第三十三話「呪い」

「オルド、俺がアイツに突っ込む。捕らえたら俺ごとでいい、斬り捨てろ」

「……非人道的な作戦だな。お前の加護はどれほど持つんだ?」


 完全に捨て身のアインの作戦に、オルドは素直にはいとは言えない。


「俺のは呪いだ。際限はない」


 それだけ言い残してアインはカーターに突撃していく。

 カーターは相変わらずリヴに夢中で、アインがその体に触れるまで気が付かない。


「多趣味な私だが、男色の気は無いのだがね」


 両手で体をがっちり取り押さえるアインに、カーターはつまらなそうな声で告げる。


「今だ!貫け!」


 後ろで剣を握りしめるオルドに叫ぶアイン。オルドは一瞬躊躇するが、アインの言葉を信じて覚悟を決める。


「なるほど、君らしい作戦だな。だが悲願を前に死ぬわけにはいかない」


 カーターの両手から影が溢れ出し、二人を覆う。それだけではもの足りず彼を中心に影が広がっていき、オルドの視界を奪う。


「く、小癪な真似を!」


 暗闇の中で感覚だけで剣を振るい、確かな感触が腕に伝わる。だが、影が晴れるとそこに膝をついていたのはアインだけだった。


「す、すまん!」

「いい、それより構えを解くな」


 オルドは一瞬カーターから視線を外してアインに駆け寄る。傷はそう深くなく、既に塞がり始めている。


「ククク、君はセカンドプランだ。大人しく待っていたまえ」


 カーターの肩と腕の関節がおかしな方向に曲がっている。無理やり関節を外してアインの拘束から抜け出たようだ。

 体を軽く振りながら関節を戻し、カーターはリヴを目指して走り出す。


「行かせるか……く!」

「大佐、その体では無茶です!」


 カーターを追いかけようとするジークだったが、折れた肋骨が彼の歩みを邪魔する。ルルがなんとか支えてはいるものの、彼の体は限界に近い。


「オルド、行ってくれ!すぐ俺も追いつく」

「わかった!」


 アインは自分の体に触れているオルドを突き放し、オルドも切り替えてカーターを追う。



 リヴがカーターの接近に気がつくよりも早く、周りの魔族たちが反応しだす。

 もう誰もリヴを観ておらず、全員の視線が迫りくる狂気に向いている。


「リヴ!気をつけろ!」


 オルドの叫び声でようやくカーターに気がついたリヴは、思わずまとわせた炎でカーターを攻撃してしまう。

 手加減する余裕も無かったその炎は一瞬でカーターを飲み込み、絶叫が恐怖の町にこだまする。


 リヴが炎を解くと、髪も服も皮膚も黒焦げになったカーターが煙とともに現れる。

 攻撃したリヴ自身も思わず目を覆いたくなるような姿だったが、カーターの猫のような目は変わらずリヴを捉えている。


「耐え難い苦痛だ。全身の細胞が死滅していくのがわかる」


 皮膚がポロポロと地面に落ちていき、抜けた髪が風に飛ばされていく。それでも足はゆっくりとリヴに近づいていく。


「こ、来ないで!」


 恐怖のあまり尻もちをつき、リヴは迫りくるカーターに砂をかけて抵抗する。

 もちろんそんな事でカーターは止まらず、リヴの細い腕をがっちりと掴む。


「君には私の母体になってもらう。安心したまえ妻になる必要はない。子供さえ孕んでもらえばそれでいい」

「いやぁぁぁあ!」


 焦点の定まらない目に全身を突き刺され、リヴは体を震わせながら絶叫する。体のいたるところから種火が現れだし、今にも暴走寸前だ。



「妄想は地獄でやってろ」


 アインの一閃が、リヴを掴むカーターの腕を切断する。


「いや、いやぁぁ!」

「私だ。落ち着け」


 オルドが暴れるリヴの体を抱きかかえ、カーターから遠ざける。リヴの炎で全身が焼けそうだが、歯を食いしばって必死に耐える。


「悔しいがアイン、後はお前に任せる」


 カーターとアインを横目で見ながら、オルドはジークたちと合流する。




「……そんなにお前はファーストになりたいのか?」


 切り落とされた腕を拾い上げながら、カーターは静かにアインに問いかける。


「そんなに俺の力が欲しければ魔王にでも頼むんだな」


 剣を構え、アインはとどめの一撃を繰り出そうとする。

 が、アインの“魔王”という発言を聞いた途端、カーターは今まで見せたことがないほど驚愕した表情を見せる。


「魔王……だと?なるほど確かにそれは加護ではなく呪いと言うべきだな」

「何を……」


 カーターの切り落とされた断面から大量の影が溢れ出し、アインの視界を奪う。


「またそれか。芸が無いな」


 アインは目をつぶり、精神を集中させる。そしてカーターの接近を感知して剣を振るが、命中したのは先ほど自分で切り落としたカーターの右腕だった。


「私の力は少々特殊でね」


 カーターは左手でアインに触れながら耳元で呟く。その瞬間アインの意識が混濁し始め、影が晴れても視界が暗くなっていく。


「他人を乗っ取る力があるのだが、その対象は魔族でなければならない」

「な……」


 もう言葉を発することさえ困難になるアインに、カーターは研究成果を発表するように話を続ける。


「私の力も呪いなんだよ。同じ呪いなら通じると思ったが、うまくいきそうだ」


 その言葉がアインの耳に届くことはなかった。それよりも早く彼の精神はカーターに乗っ取られてしまった。

 



 


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