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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第三章 「滅都編」

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第二十五話「馬」

 滅都は帝都から北に位置しており、途中大きな川を渡らなければならない。距離は馬で五日ほどであり、川の手前までは馬で行くことになった。




「さあ、好きな馬を選んでくれ」


 そう言ってオルドは愛馬にまたがる。


「そう言われても違いが分からないね」

「はい、どれも同じに見えます」


 ジークとルルは一番近くにいた馬に手をかけると、馬が自ら屈んで二人を乗せる。


「お前たちは馬に気に入られたようだな……そこの二人とは違って」


 アインとリヴに冷ややかな視線を送るオルド。馬たちは二人に怯え、近づこうとしない。


「馬は気高く清廉な生き物だ。自分の意に反する者は乗せようとしない」


 愛馬を撫でながら、不機嫌な顔のアインに勝ち誇った顔で告げるオルド。ますますアインの顔が不機嫌になっていく。


「乗り物が主を選ぶのか?」

「何だと?」


 馬を侮辱したアインの発言に眉をつり上げるオルド。ジークは片手を頭に当てながらため息をつく。


「どうしたんですか大佐?」

「オルドは大の馬マニアなんだ」


 馬から降りるジークに尋ねるルル。ルルも馬を降りると、リヴと三人でアインとオルドから距離をとる。


「いいか?まず馬は乗り物ではない。そもそも我々は乗っているのではない、乗せていただいているのだ。彼らは脆弱な我々の代わりにその身を削り、我々の足になってくれているのだ。何の見返りも求めずにだ。そのお馬様に対して乗り物だと?主だと?勘違いも甚だしい。いくらお前が無知で無作法だとしても滑稽を通り越して怒りすら覚える。詫びろ、詫びてお前がお馬様を乗せて走れ!」


 信じられないほど早口でまくし立てるオルドにアインはあっけにとられ、口を開けてただ聞いているしかなかった。


「はぁはぁ、わかったら敬意を表し、馬に手を当てろ」

「あ、ああ」


 心を無にし、アインが馬に手を当てると馬もアインに応えてくれる。

 だが、馬はリヴの近くには一切近寄らない。リヴがいくら歩み寄ろうとしても、その分だけ馬は遠ざかる。


「すみません……」

「お前は魔族だったな、無理もない。仕方がない、私の後ろにまたがれ」


 オルドは自分の後ろにリヴを乗せる。愛馬はリヴが触れた途端体を震わせるが、オルドが首を撫でると何とか落ち着きを取り戻す。


「ご迷惑をおかけします」

「構わん。お前は貴重な情報源だ」


 リヴはオルドの冷たい甲冑に顔を寄せる。ひんやりとした気持ちよさがリヴの頬に伝わり、ほんのり心が温かくなる。


 ようやく帝都を出発できた五人は川の手前の村を目指す。




 冷たい風が頬を撫で、新鮮な空気がアインの心を落ち着かせる。前方を走るオルドの馬では、リヴが必死にオルドにしがみついている。それを見たアインの脳裏に懐かしい思い出が蘇る。


(そう言えばヨミも馬が苦手だったな)




「きゃあ!アイン、もっとゆっくり走ってよ!」

「急がないと夜になるだろ。今夜は宿に泊まりたいと言ったのはヨミじゃないか」


 乱暴なアインの馬の扱いを、後ろに乗るヨミが悲鳴を上げながら非難する。日はだいぶ傾いており、三日連続の野宿が現実味を帯びている。


「だから馬車を用意しようって言ったんだ。誰だよ無駄金を使ったのは」

「ザック、あんたの食費でしょ」


 その後ろを走る馬にはザックとニーナが乗っており、ニーナもザックの雑な手綱さばきに辟易している。


「宿には絶対泊まりたい!いい加減お風呂に入りたいもの。ゆっくり急いでアイン!」

「無茶言うなよ」


 ガッチリとアインの腰を掴み、目をつぶるヨミ。アインはその窮屈さに少し落ち着き、沈む夕日を追いかけ続ける。





「何かいいことでもあったのかい?」


 横を走るジークがアインの表情をのぞき込んで声をかける。その隣を走るルルも気になって身を乗り出してくるが、アインはすぐに表情を引き締める。


「……別に」

「そうかい?不謹慎かもしれないけど、僕は少し楽しいんだ」


 そう言うジークは、本当に楽しそうに無邪気に笑う。


「覚えてるかい?初めて会ったときは僕たちは殺し合っていたんだよ?」

「それはお前だけだ。それに俺は死なない」


 アインの返答を受けてジークは声を出して笑い出す。それにつられて隣のルルも自然に笑みがこぼれている。


「まったく、何を笑っている。緊張感のかけらもない連中だ」


 背中から聞こえてくる楽しそうな声に顔をしかめるオルドだが、腰にしがみつくリヴの必死な顔が目に入ると、少しだけ口が緩む。


「……まあ、笑えるならそれにこしたことはないか」


 風の消えるように呟くオルドの声。誰に届くわけではなく、誰かに伝えたかったわけでもない。ただ、自然に出たその言葉は間違いなく彼女の本心だった。


 



 


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