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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第三章 「滅都編」

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episode2.7「共闘」

 白い都市を駆け回る影は高台の上を陣取り、まるで意志があるかのように混沌を見下ろしている。

 ただでさえこの都市に渦巻く力によって魔族は力を強化されているが、影に触れた者たちは更に力を増している。下級魔族は上級魔族に、上級魔族は大魔族並みに強化される。人間側にも影響があるようで、部下たちの体は膨れ上がり、筋肉が防具をはじき飛ばしそうになるほどだ。


 止める、とは言ってみたものの、隊長はその止め方を一つしか知らない。


「どうした人間。震えが伝わってくるぞ」


 背中を合わせた魔王が隊長の心を読むように言葉をかける。


「武者震いだ、気にするな。それよりお前は大丈夫か?魔族とはいえ、心が無いわけではないだろう?」


 しっかりと剣を握る隊長だが、その剣先は部下には向けられない。


「心か。無論我々にも感情はある。人類を支配したいという感情がな」

「ふっ、聞かなきゃよかったぜ」


 冷や汗が止まらない。

 部下たちと魔族たちはまだ動こうとはしない。まるで合図を待っているかのようだ。


「もう一つ聞きたい。お前ならオレを含めてここにいる全員を皆殺しにできるだろう。それをしないのはなぜだ?」


 そう質問せざるを得ないほど、背中から感じる魔王の迫力は凄まじい。

 自分たちの命は常に魔王の手のひらの上にあり、簡単に握りつぶされてしまう。だというのに魔王は共闘の道を選んだ。それが隊長にとっては解せない。

 魔王は「何だそんなことか」と言いたげに口元を緩ませる。


「愚問だな。我々は殺戮者ではない、支配者だ。支配する相手を意味もなく殺してどうする」

「勇者たちが居なくなってからもうすぐ十五年だ。お前が殺したのだろう」

「どんな小さな火の粉だろうと、降りかかれば払う」


 それ以上、二人は言葉を交わさなかった。



 魔族と人間のヨダレがポタポタと地面に吸収されていく。緊張の糸を一瞬でも緩めればたちまち襲いかかってきそうだ。



 

 きっかけは些細なことだった。

 隊長が額の汗を拭い、一瞬だけ剣を下ろした。その隙を待っていたかのように影が動く。

 突如隊長の目の前の戦士が突撃し、隊長に向かって斬りかかった。隊長は体が勝手に反応し、剣を合わせる。しかし戦士はそこで剣を引き、行き場を失った隊長の剣が戦士の体に突き刺さる。


「なっ!」


 戦士はビクッと震え、動かなくなる。剣を伝って生暖かい血液が隊長に届き、戦士の体は冷たくなっていく。


 隊長に絶望する隙を与えず、次々に戦士が突撃してくる。魔族もまた魔王を目掛けて爪や牙を突きだしていく。

 

 影は人型に変化し、ニタニタと笑うように体を上下させている。


「なめるなぁぁぁ!」


 雄叫びを上げ、隊長は突き刺さった剣を引き抜く。

 それと同時に戦士の体から血液が吹き出し、血の雨が降る。その雨を全身に浴びながら、隊長は向かってくる戦士たちの剣を受け止める。

 攻撃の対象を彼らの武器だけに絞り、武器をはたき落としていく。

 魔王もまた近づく魔族を一人づつ魔術で捕まえ、無力化していく。


 楽しげだった影の顔らしきものがだんだん歪んでいく。

 だが、影は次の楽しみを思いつく。


 戦士と魔族の動きがピタリと止まる。

 僅かな静寂のあと、彼らは自らの武器を自らに向け始めた。所々で血飛沫が上がり、魔王に無効化された魔族と、武器をはたき落とされた戦士以外は全て命を失う。


「おい……魔王。俺は誰を恨めばいい……誰を殺せばいいんだ?」

「熱くなるな。全てを失ったわけでもあるまい」


 魔王の言葉を受け流せるほど、隊長は冷静ではなかった。部下たちの死体から視線を逸らし、後ろにいる魔王の前に回り込む。


「やはり貴様ら魔族に心は無い!所詮は化け物、我々とは違……」


 そこで隊長は言葉を失った。

 魔王の見せた表情は、自分のものと全く変わらなかった。


「悲しみも、絶望も、怒りも、今は堪えるのだ。全て終わったあとに取っておけ」


 そういう魔王の顔には、それら全ての表情が含まれていた。

 隊長は人類最大の敵であるその男から視線を逸らせなかった。

 





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