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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第三章 「滅都編」

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episode2.4「リヴ」

 私は望まれて生まれてきた。それはとても素晴らしいことだという人もいるだろう。

 だけど、私はそれを望んでいない。


 生まれてから初めての思い出は、どうしてこの人はこんなにつらそうな顔をしているの? だった。その人が自分の母親だと気がついたのはそれからしばらくしてからだった。


 どうやら母はこの場所では異質な存在らしい。


 角も、牙も、鋭い爪もない。私にはあった。

 それでも母は私にとって必要なものをたくさん持っていた。

 温かさ、優しさ、愛。

 すべて母から教わった。


 私の父は王らしい。なら母は女王のはずだ。母が読んでくれた絵本にはそう描いてあった。

 でも父も、この城の人たちも、何より母がそれを否定していた。

 だけど私のことは姫と呼ぶ。それは絵本と同じだった。それを喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、私には分からなかった。


 

 どうやら私には生まれながらにして強い魔力を有しているらしい。そのせいで数年前に生まれた兄に嫌われている。私は仲良くしたいのだが、兄はほとんど口を利いてくれない。私の母とも顔を合わせようとしない。

 こんなことなら力なんて要らなかった。私が望んだわけでもないのに。


 母が死んだ日も、父も兄も姿を現さなかった。私は一人で母を埋葬した。でもそれでよかった。母との思い出と約束は私だけのものだ。


 魔王軍四天王。

 父が久しぶりに私に告げた言葉。心底どうでもいい。

 でもそんな態度が兄をさらに傷つけてしまったらしい。また嫌われてしまった。



 母が死んでからは私は「アイン」という人物のことばかり考えていた。

 この城に幽閉されているらしいが、父の魔力によって私は近づけない。うすうす私が何をしようとしているのか感づいているのだろう。

 せっかくスパーダが旅立って警備が手薄になったというのに、あの父が居ては意味がない。


 兄とはあの日から口を利いていない。それどころか姿も見せてくれない。どうやら一人で魔術の鍛錬に励んでいるらしい。

 次に会えたときは一緒にご飯を食べたいな。



 私の力は私の思いに反してどんどん強くなった。強くなりすぎて自分でも制御できず、たびたび自室が火事になる。そのたびに教育係は私を叱り、私は一人で枕を濡らした。

 叱られたのが悲しかったわけではない。

 その後に慰めてくれる母はもう居ない。


 この城に私の敵は居ない。だけど味方も居ない。


 私はこの広い城でたった一人になってしまった。




「無様な顔を見せるな、愚妹が」


 通路の隅でうずくまる私に、久しぶりに顔を見せた兄が声をかけてきた。その言葉には優しさのかけらもなく、その視線も呪いをかけるかのような憎悪に満ちたものだった。

 だけど、その瞬間だけは私は一人ではなくなった。

 無様でいい、愚かでいい、だけど一人は嫌だ。 



 それから一年ほどで兄が魔王軍四天王に任命された。

 兄は顔を手で覆いながら喜んでいた。泣いた姿も微笑む姿も私には見せたくないのだろう。

 私も一緒に喜びたかったが、こういう時に声をかけると睨まれることはもう分かっていた。それでもよかったが、今日は心の中で祝おう。


 声をかけなくても兄は私を睨んできた。勝ち誇った顔を私に向けてくれた。


 兄が四天王になったのなら同じ四天王の私が無様な姿を見せれば兄の格も落ちてしまう。だから私は強くなろうと決意した。

 私の決意を満足そうに見てくる父にはいい気持ちがしない。かりに私の決意を促すために兄を四天王に選んだのだとすれば、私は一生父を許さない。


 兄も私も順調に力を付けた。

 空を操作し、天候を操るほどの魔力を手に入れた兄。私も制御できる火力が大きくなってきた。


 

 そんなある日、父がたくさんの魔族と一緒に城を出た。私は父が城を出るのを初めて見たが、他の魔族もほとんど記憶にないらしい。


「バートン、リヴ。留守を頼む」


 言葉が少し震えている気がした。

 あんなに動揺した姿の父も見たことがなかった。

 それは兄も感じていたようで、久しぶりに同じ方向を向けた気がして少しだけ嬉しかった。



 


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