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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第二章 「帝国編」

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第二十一話「帝都攻防戦その三」

 一体何度目だろう。

 ルクスの動きを依然としてアインは捉えられない。体に手刀が突き刺さる感覚で辛うじてルクスの方向を感知する。不死でなければ何度命を落としているのか、アインすら把握できていない。

 それでもアインは剣を離さず、倒れることなく、瞳も前を向いている。


「いい加減倒れろ!」


 一方ルクスは徐々に攻撃が大雑把になっていく。

 攻撃は間違いなく命中し、耐え難い苦痛を与えているはずだというのに、何の手応えもない。目の前の男は何らかの手段によりダメージを無効化しているのではないか、そんな錯覚にすら陥ってしまう。


我慢比べといこうか。そういいたげな表情でルクスに不敵な笑みを浮かべるアイン。徐々に、それでも確かにルクスの中に憎悪以外の感情が芽生え始めていた。



 バートンに対するリヴら三人は数的有利にはあるものの攻めあぐねていた。

 その原因はリヴにある。

 バートンの雷撃を受け流すためにはリヴの力がいる。だがリヴの炎は諸刃の剣だ。リヴの炎が展開している限りジークとルルも前に出られず、かといってリヴの前に出てしまえばバートンの雷撃が直撃してしまう。

 リヴ自身もまだ戦いのダメージが回復しきってはおらず、一人の力ではバートンに決定打を与えられない。

 その間にもバートンはどんどん傷を回復させていく。


「不様だな愚妹よ。その人間どもを盾にすれば我に勝つチャンスが僅かに生まれるというものを」


 焼かれた右腕を後ろにしながら左腕を前に出すバートン。ジークに斬られた左腕はほぼ完治したが、リヴに焼かれた右腕は未だにピクリとも動かない。


(認めたくはないが、火力は奴の方が上。下手に動き人間どもを再起不能にすれば愚妹もなりふり構わず我を攻撃するだろう。それは避けるのが賢明)


 バートンはリヴたちに腕を向けながら、ルクスの方をちらりと見る。

 戦況は一方的に見えるが、追い詰められた表情をしているのはルクスの方だ。


(覚醒は果たしたが、まだ経験が足りぬ。このままでは先に限界に達するのはルクスの方だな)


 最善策が何かを考え抜いた結果、バートンが選択したのは撤退だった。



 鳴らす指。降り注ぐ雷撃。

 しかしそれはリヴたちを狙ったものではない。わざと回避しやすいように放たれた雷撃はバートンとルクスの間に道を作り、バートンは一気に駆け抜ける。そして未だに一心不乱にアインに攻撃し続けるルクスを左腕に抱えると、身軽な動きで建物を駆け上がる。


「離してくださいバートンさん!僕はまだ勇者を殺してない!」

「見極めよルクス。どうせ奴は死なん。殺す機会はまた作ればよい」


 全ての視線がバートンに集まっていく。ルクスを降ろすとバートンはその全てを見下ろし、左腕を天に掲げる。


「愚妹、そして人間どもよ。勝負は一時預けるとする。これは褒美だ、心して受け止めよ」


 バートンの言葉とともに上空の雷雲が一箇所に集まっていく。


「な、何ですかあの威圧感!」

「いけない!みなさん私の後ろに!」

「了解!アインは僕が連れてくるよ!」


 慌てるルルを後ろに下がらせ、リヴは自分たちの頭上に炎の壁を形成する。動けなくなったアインを引きずってきたジークが炎の下に入ったとほぼ同時に無数の雷が空を裂きながら帝都に降り注ぐ。雷だけではない。雷によって砕かれた建物が瓦礫となって四人を襲う。


「くっ!」


 炎の威力を調整するリヴ。瓦礫を燃やし尽くすほどの火力は出せず、マグマの雨となってリヴに襲いかかる。


「瓦礫は僕たちで何とかする。君は雷に集中してくれ!やるよルル!」

「はい大佐!」


 ジークとルルは最後の力を振り絞り、瓦礫を斬り捨てリヴを守る。


「やるな人間ども。ならばこれもくれてやろう」


 突如雷が空中で停止し、一つにまとまっていく。巨大な槍とかした雷はバートンの合図とともに一直線にリヴに襲いかかる。


 あれは防げない。

 殺意の塊のような雷に、リヴは一瞬で敗北を悟る。ジークとルルも辛うじて剣を握りしめているものの、立ち向かうという考えがわかなくなるほどの力の差を感じてしまう。

 圧倒的な力の前になすすべも無く、ただ立ち尽くす。たった一人を除いて。


「ぐあぁぁぁぁ!」


 リヴの前に覆いかぶさったアインの胸を雷の槍が貫く。全身が悲鳴を上げ、細胞の一つ一つが焼かれていく。だが、勇者は倒れない。


 リヴは涙が止まらなくなる。母の語っていた勇者が今目の前にいる。

 ジークもアインから目が離せない。書物の中でしか知らない勇者という存在、そんな存在が本当に居るのだとしたら……


「アイン!」


 アインの意識が完全に途切れ、ついには倒れかける。この男をここで倒してはいけないと、ジークはアインを受け止める。



「あの男……バートンさんの奥義を受けても死なないのか」 


 黒焦げになりながらも息があるアインに驚きが隠せないルクス。自らがいくら攻撃しても倒しきれなかった理由を思い知らされる。

 驚愕していたのはルクスだけではない。


「どういうことですか?丈夫とか、そういう次元じゃないです」


 ある種の恐怖のようなものを感じるルルだが、次第にその感情は恐怖ではないことに気が付く。


 死んだ母親が寝る前に聞かせてくれたおとぎ話。眠ったあとも夢のなかで続きを見るほど夢中になった物語。

 

 そんな夢から現実に戻るようにルルは首を振る。まだ戦いは終わってない。



 依然として全てを見下ろすバートン。

 しかし大技を出したせいで魔力が著しく低下しており、雷を振らすことはしばらくできない。だがそれをリヴたちに悟られることは敗北を意味する。


「さすがは勇者と言っておこうか。だが、次の槍はどうする?」


 強気な態度を崩さないバートンに対して、ジークとルルは再び体を強張らせる。だがリヴだけは別の事に気を取られていた。


(聞こえる……十、二十、いやもっと)


「バートンさん」

「うむ」


 同じ魔族であるルクスとバートンも同じ音に耳を傾ける。


「愚妹よ、一度だけ問う。貴様は魔族の敵か?」

「私は……」


 とっさに答えが返ってこないとわかると、バートンはそれ以上は聞こうとしない。


 ルクスに肩を支えられながら二人の大魔族は姿を消した。まるで初めからここに居なかったかのように。


 だが確かに二人はここに居た。消えない傷跡を帝都に残した。


 死者百数名、重傷者数百名。


 建国以来最大規模の損害を出した攻防戦は、帝都側の勝利で幕を閉じた。


今回の話で第二章完結となります。

次回の更新から舞台を変えてまた物語が始まります。

今後もよろしくお願いします。

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