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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第二章 「帝国編」

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第十九話「帝都攻防戦」

 黒焦げになった腕を見つめるバートン。感覚はなく、もう自分の腕ではなくなってしまったようだ。


「次期魔王である我の腕を焼くか。この代償は大きいぞ」


 わざとらしく見せつけられた腕を見て、リヴは一瞬うつむくが、唇を噛みしめて右腕を前に出す。


「兄様、お引き取りください。次は全身を焼きます」

「やってみよ。炎と雷、どちらの方が速いか試すまでもあるまい」


 バートンは一歩も引かず、左腕を天にかざす。


 ルクスはここに付いてきたことを今更ながら後悔していた。

 自分の前任であるリヴを倒し、自分の力を他の四天王に認めて欲しかった。だが、それは些か以上に自惚れた考えだったことを思い知らされる。絶対的な強者だと思っていたバートンの腕も再起不能にされ、今すぐにでもこの場から逃げ出したかった。


「バートンさん!ここは引きましょう!スパーダさんやアモールさんも連れてくれば……」

「黙っていろルクス。我が引くということは愚妹に我が劣っていると認めるのと同義だ」

「だからそれは……!」


 ルクスの言葉を遮るように彼の目の前に雷が落ちる。地面に穴が空き、ルクスはそれ以上何も口を挟めなくなる。


「兄様、私はあなたより優れているなど考えておりません。あなたは昔から私より遥かに強かった」

「……当然だ」


 リヴの言葉の真意がつかめない。バートンはリヴの上空に雷雲を待機させ、いつでも雷の雨を降らせる準備をする。


「ですが、私もここでやられるわけにはいきません。この方々を傷つけたのも許せません」

「なぜそこまで人類に肩入れする?半血とはいえ貴様は魔族だ。それもただの魔族ではない、魔を統べるべき存在だ」

「確かに半分は魔族です。ですが、もう半分は人間なのです。私は魔族も人間も傷つけたくありません」


 ジリジリと肌が焼ける。

 リヴの体力は限界に近づいていた。だが倒れることはできない。帝都を守るため、なにより母との約束を守るため、限界を超えて立ち続ける。


「笑止。やはり人間の血など混ぜるべきではなかった。父の過ちは息子である我が正すとしよう」

「私は母の娘であることを誇りに思っております。それを証明してみせます」


 二人の視線がぶつかり、帝都の喧騒が遠のく。


 指を鳴らすバートン。それが合図となり、雷がリヴに振り注ぐ。リヴは体の周りに炎をまとわせ、雷を逸らす。


「いつまでもつか見ものだな」


 雷は絶え間なくリヴを襲い、リヴは永遠にも感じるほど攻撃を逸らし続ける。その間常に炎をまとわせているため、呼吸すら困難になっていく。


「はぁぁぁ!」


 リヴは勝負を決めるべく、最大火力でバートンに攻撃を仕掛ける。バートンはそれを待っていたかのように、にやりと笑う。いつの間にかバートンの手には気絶したルルが握られており、それを盾にするように目の前に突き出す。


「そんなっ!間に合わない!」


 必死で炎を弱めようとするリヴだったが、もはや制御できなくなるほど膨れ上がったそれは彼女の意志とは関係なくルルに向かっていく。


(私は、また守れないの?)


 死んだ時の母の姿と目の前のルルの姿が重なる。





「ずいぶんと好き放題暴れてくれたようだね」

「何があったかは分からんが、あとは俺たちに任せろ」


 聞き覚えのある二つの声。

 今一番聞きたかった声。


 一つの声はバートンの腕からルルを奪取し、そのままバートンを斬りつける。

 そしてもう一つの声はリヴに背中を向けて立ち、バートンを睨みつける。


「ぐっ!」


 バートンは腕を斬りつけられながらも急いで退避する。リヴの爆炎はそのまま彼の後方の建物に直撃し、一瞬で燃やし尽くす。


「アイ……いえ、どうして」


 霞んでいく視線の先に映るアイン。彼の姿をとらえるとリヴの炎は消え去り、意識も途切れる。

 アインは振り向き、リヴの体をささえる。気を失ったリヴの全身は所々にやけどがあり、とても痛々しい。

 二百年前のあの日、救えなかった大切な仲間の姿と重なり、アインはリヴを優しく地面に下ろす。



「勇者か、今更貴様に用はない。愚妹を差し出してどこへでもいけばいい」


 両手がほとんど使えなくなったバートンは追い詰められていた。最大の脅威であるリヴは無効化されたものの、無駄な戦闘は避けたいと考えていた。

 だがアインもジークも引き下がる理由はどこにも無い。


「俺はこの国にもお前が殺した人間にも何の思い入れもない。が、俺はお前を殺す。俺は俺のためにお前を殺す」

「僕はお前を殺す理由はたくさんあるよ」


 アインとジークに挟まれる形でバートンは、片膝をつかされる。ルクスもまだ体が動かず、二人の大魔族は死の淵に立たされる。

 


(あの目だ)


 アインの冷たい瞳。殺意のこもった瞳。

 走馬灯のようにルクスの記憶が呼び起こされる。

 二百年以上も前、まだ生まれたばかりのころの記憶。草陰に隠れ、震えていた記憶。親を殺され、一人ぼっちになったあの日の記憶。



「お前か」


 心臓の鼓動が速くなり、ルクスの体が小刻みに震え始める。体温が上がり、傷ついた体に力が戻ってくる。


「ルクス、ようやく覚醒したか」


 じりじりと退避しながらバートンはルクスの体に触れる。力強さが伝わってくる。



「勇者、家族の仇……ここでとらせてもらう!」



 四天王ルクス。

 彼の内なる力が解放される。

 



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