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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第二章 「帝国編」

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第十三話「盗賊団」

 帝都郊外の岩肌、そこに盗賊団は潜伏していた。ジークから渡された資料によると数はおよそ三十。常時二、三人が見張りをしているようだ。 

 アインとジークは岩の影から様子を伺う。

 何故か見張りは一人しか居ない。妙だが好都合だ。


「アジトまで割れているというのに軍は動かないのか?」


 食事をとっていないことがバレ、無理やり渡されたりんごをかじりながらジークに尋ねるアイン。それに対してジークは情けなさそうに答える。


「軍は常に敵国や凶悪犯の対応に追われている。彼らのような小者や野良魔族は、言ってしまえば効率が悪いんだそうだ」

「効率?」


 ジークの情けなさそうな顔に闘志が宿る。唇を噛みしめ、血がにじんでいる。血は彼の真っ白な制服に伝わり、そのまま地面に染み込んでいく。


「被害は大きくなってからまとめて処理する。それが軍の方針だ。おかげで僕の出世はだいぶ遅れてしまったよ」


 ジークの胸についたいくつもの勲章。

 それは彼にとっての誇りであり、それと同時に救えなかった者たちへの献花でもある。


「つまらない話をしてしまったね。君には関係のない話だ。さあ、早く仕事をこなしてしまおう」

「……そうだな」


 かつての自分。

 ジークのように、全てを救ってみせると旅立ったあの日。何でもできる、そう思っていた。

 そして全てを失ったあの日。 

 悔やみ続けた二百年。取り戻せない現実。


 それでもまだこの手の中にあるもの。

 


「俺も全力を尽くそう、ジーク」

「はは、やっと名前で呼んでくれたね」



 ニッコリ笑うと、ジークは岩陰から飛び出す。


 見張りは装備したサーベルを抜くことなく地面に倒れる。何があったかも理解していないだろう。


「あの時は本気じゃなかったのか?俺がついてくる必要はなかったんじゃないか?」


 やることがなくなったアインが岩陰から出ていく。


「そんなことはないさ。彼らを連行するのに一人では骨が折れるし、それにまだ任務は終わっちゃいない」


 そういいつつもジークはあまりの手応えのなさに少々拍子抜けする。盗賊はやせ細っており、気迫というものが感じられなかった。


 倒れている盗賊は気絶しているようだが致命傷は受けておらず、ジークの剣技の高さが伺える。


 二人は気絶した見張りの盗賊を拘束し、様子を伺うことにした。交代しに来た見張りを片付けていけば少しずつ数を減らせると考えたからだ。

 しかし、日が傾き始めても代わりのものは現れなかった。


「妙だな。作戦がバレたか?」

「これ以上日が落ちたら取り逃してしまうかもしれない。仕方ないね、突入しよう」


 ジークが先頭を行き、アインがあとに続く。

 入り組んだ岩肌を進んでいくと、そこら中に盗賊が盗んだと思われる金品が無造作に転がっており、中には血が付着したものもあった。それを見るたびにジークの表情は強張り、「済まない」と小さくつぶやく声が聞こえてくる。

 奥に進むにつれ、一人、また一人と盗賊が姿を現すが、ジークとアインの敵ではない。簡単に無力され、意識を失う。


(簡単すぎる)


 あまりにも上手く物事が運び、喜びよりも疑問が浮かぶジーク。

 これでは本当に一人でも何とかなったと思いながら先へ進んでいくと、その理由が明らかになる。



「アイン、どう考える?」

「……分からん。が、早くここから出たほうがいい」



 アジトの一番奥に踏み込むと、そこには盗賊の死体が山積みにされていた。


 死体の損傷具合からして昨日今日のものではない。身体に刻まれた切傷は彼らの手にしたサーベルのものと一致しており、同士討ちが考えられる。

 だが重要なのはその理由だ。


「とにかく一度帝都に戻ろう。何か良くないことが起きている気がする」

「ああ」


 二人は帰路につこうとするが、突如背中に悪寒が走る。

 反射的に剣を握りしめ振り返ると、そこには一匹の魔族が立っていた。



「あぁ?なんだお前ら。ここはアモール様の縄張りだぞ」



 アインたちの倍はありそうな巨体。

 知性のかけらもないよだれまみれの顔。

 牙に染み込んだ鮮血。

 漂う腐敗臭。

 その全てが二人に恐怖を植え付ける。だが、それをわずかに怒りが上回るジーク。


「なるほどね。お前が彼らのボスってわけか。その様子からして殺したのは一人や二人じゃ無いね」


 体勢を低くし、突撃の構えを取るジーク。

 魔族は膨らんだ腹を叩き、口から骨を吐き出す。


「一、二、三……あれ、指がたりねぇな」

「よくわかったよ!」


 指を一本ずつ折りながら殺した人間を数える魔族に斬りかかるジーク。その剣は魔族の腹に命中するが、薄皮を傷つけることしかできない。


「な!」

「お前、うまそうだな」


 魔族の血まみれの手が伸びる。アインがジークのマントを引っ張らなければその白い制服は真っ赤に染まっていただろう。


「落ち着け、怒りを静めろ。ヤツのペースに巻き込まれるな」

「わかっている、わかってはいるんだ!だが!」


 膨らんだ腹、隆起した筋肉、身体に巻いた人の皮膚のようなもの。目に映るすべての情報がジークの怒りを駆り立てる。


「やつはおそらく魔王軍の上等兵。昔、同系と戦ったことがあるが相当苦戦した。下級魔族とは比べものにならない。気を抜けば死ぬぞ」

「……アイン、君は一体」


 考え事をする暇を、上等兵魔族は与えてくれない。

 落ちている盗賊のサーベルを拾い上げると、使い方がわからないのか、ブーメランのように投げ始める。しかし、命中すれば致命傷なことにかわりはない。


「話は後だ。苦戦はするが、倒せない相手ではない。そのためにお前は俺を連れてきたんだろう?」

「……ああ。ああ!やろう!ここであいつを討伐しよう!」


 二人は剣先を交え、魔族に向ける。

 仲間がいる。

 それだけで人は強くなれる。







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