表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第二章 「帝国編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/40

第十話 「帝国」

 朝日が昇り始めたころ、アインの前に二台の馬車が止まった。ジークの指示を受けて帝国から派遣されたようだ。

 アインとリヴは別々の馬車に乗せられ、帝都を目指して進み始める。アインの馬車にはジークが同行し、リヴの馬車には副官のおさげの女性が同行する。


 おさげの女性が少々乱暴に手錠をする様子を見て、アインは低く声を落とす。


「おい、あの女」

「安心してほしい。ルルは任務に私情を挟んだりはしない。君の連れはちゃんと帝都まで送り届けるさ」

 

 そんな彼に心配するなと、ジークは自信満々に答える。


「大佐!名前で呼ばないでください!少尉、もしくはシャルルー少尉とお呼びください!」

「わかったよルル」

「全然わかってない!」


 ルルはリヴを馬車に押し込みながらジークを怒鳴りつけているが、当の本人は一切気にせず手を振っている。

 

「さあ、僕たちも行こうか」


 まるで客人を案内するようにジークはアインを馬車にエスコートする。

 剣こそ没収されたが、リヴのように手錠を掛けられることもない。


「素手ではお前を倒せないと思っているのか?」

「思ってるさ。こっちには人質が居るんだからね」


 先に出発したリヴの乗る馬車に視線を移しながら告げるジーク。そのさわやかな表情の下には強かさが潜んでいる。

 アインに出来ることは舌打ちをすることくらいだった。




「まったく、大佐はいつもいつも、私の立場も少しは考えてほしいです」


 馬車が動き出してからもしばらくルルはジークに対する不満をつぶやいている。対面にリヴが座っているのに一切気にする様子がない。

 そんなルルの態度にリヴも少し緊張がほぐれていく。不安はあるが、ジークの言う通り自分に危害を加えるつもりは無いようだ。少なくともこの場では。


「あの、私たちはこの後どうなるのでしょうか?」


 恐る恐る質問するリヴ。するとルルは一瞬だけリヴを見据え、何かを思い出したように口元を歪める。


「しゃべれるんですね。なら口を利かないでください。私にその牙を見せないでください。わかりましたか?魔族」


 剣に手を掛けながら警告するルル。彼女から年相応の女性の表情が消え、軍人としての顔を見せている。

 リヴは口元を手で隠し、ルルの視線をさえぎるように深々とフードを被った。体の震えがルルにばれないように。





「さあ、もうすぐ帝国だ。そろそろ起きたらどうだい?」


 うたたねをしていたアインは、ジークの声を目覚まし代わりに目を覚ます。

 外の風景は荒野とは様変わりし、緑が生い茂っている。城門の外だというのにたくさんの行商人が商売をしており、この国が豊かだということが伝わってくる。


「あ、ジーク様の馬車だ」

「おかえりなさい」

「無事で何よりです」


 帝国の城門に差し掛かると人々がジークに向けて手を振りながら声をかけている。ジークはそんな人々一人一人に手を振り返すため、馬車はなかなか先に進めない。


「ほら、僕は有名なんだ」


 自信ありげにアインに告げるジーク。初対面の際のアインの反応をまだ気にしていたらしい。




「おそい!どこで油売ってたんですか!」


 帝国軍の本部に到着すると、カンカンになりながらルルが待っていた。相当前に到着したようで、ほかの部下もリヴの姿もそこには無い。


「はは。ルルは面白いな。僕は商人じゃないぞ?」

「もう訂正する気も起きないので早く仕事に戻ってください!」


 ルルは報告書をジークの胸に押し付け、わざと大きな足音を残して去っていく。


「茶番が終わったならさっさとあの女のところに案内しろ」


 付き合ってられないと足早に本部の奥へ進んでいくアインを、ジークは慌てて止める。


「あのねぇ、君。一応君は罪人として連れてきているんだよ。勝手なことをすれば僕の身も危ないんだ。君が向かうのはあの魔族のところじゃなくて牢屋なんだよ」

「いつ俺が罪を犯した」


 アインの肩にかけられたジークの手が強く握りしめられる。無理やり動こうとしても振りほどけない。


「まだわからないのかい?帝国は君ではなく僕の言葉を信じる。重い罪で裁かれたいのかい?」

「貴様……」


 膠着状態が続く。

 最悪一人で逃げることはできるだろうが、リヴはどうなるかわからない。

 


(待て、なぜ俺はあの魔族をそこまで気にしているんだ?)

 

 ふと疑問が浮かぶ。

 考えてみれば奴は仲間というわけではない。たまたま一緒に魔王城を脱出し、そのまま成り行きで行動を共にしているだけだ。ここで別れたとして特に困ることもない。


 アインは右手を握りしめる。


(いや、奴とて魔族だ。たかが人間を数人殺すことなどたやすいはず。俺が無理やり逃げれば奴もなりふり構わず脱出を図るだろう。ここはおとなしく捕まるのが最善)


 そう自分を無理やり納得させ、疑問を心の奥に封じ込める。


「わかった。手を放せ」

「よかった。僕も正義に反することをせずに済むよ」


 肩にかけた手を腰に回し、ジークはアインを地下牢に案内する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ