アーカイブ:Va-FAMILY-FEUD
ACCESS_GRANTED: CLEARANCE_LEVEL_ [ERROR_BYPASS_A]
[STATUS]:ARCHIVED
[SOURCE]:TRASH_BIN_DATA_SEA
(何かが落ちている。)
(どうやら記録媒体らしい。)
(「保留案件」とメモがついている。)
(再生しますか?)
[YES]/ NO
(ジジ.......ジジジ.....)
帝国・ヴァランタン侯爵邸、深夜の執務室。
そこには、主不在のまま積み上げられた決裁書類と、それを処理し続ける二人の影があった。
「……伯父上。これで今週分の、侯爵領の税制改正案は完了です」
次男が、騎士団の軍装のまま、疲れも見せずにペンを置く。彼は代理として私設騎士団を回し、帝国の武の一部を支えている。
その隣で、侯爵代理として領地経営のすべてを背負う彼の伯父が、眉間を揉みながら 溜息をついた。
「助かるよ。……だが、本来ならこの署名欄には、GWの名があるべきなんだがな」
「父上は、今日も軍事省ですか」
「ああ。閣下の『筆頭秘書官』として、職務に没頭してるだろうよ。……中将まで上り詰めた男が、戦場ではなくデスクで、あのお方の『情動資材』として神経を削られているのは、兄としても見るに堪えんが...」
伯父は、本来弟に返還すべき『侯爵位』の重みを感じながら、 無気力な絶望を瞳に宿した。
GW本人は、もう爵位も名誉もいらないから、ただあの『金眼の魔王』の隣からログアウトしたいと願っている。けれど、その退職届が受理されることは、行政的にあり得ない。
「AWはどうした。あいつがちょっとでも『世継ぎ』としての自覚を持ち、嫁でも娶れば、GWも『引退』という名のカードを切れるはずなんだが」
「……兄上ですか、無駄です。あいつは『筋肉』しか見ていない。筋トレの流行には敏感ですが、家系の存続に関しては 1bit のメモリも積んでいませんから」
次男の淡々とした言葉に、執務室に乾いた沈黙が流れる。
GWという名の優秀なシステムは、A・K・Vという巨大なサーバーを維持するためだけに、その人生を一滴残らず搾取されている。
「GWは言っていたよ。『秘書さえやめられるなら、引退して隠居してもいい』と」
「……父上らしい。ですが、閣下がそれを許すはずがない」
次男は、冷徹な瞳で夜の窓の外を見つめた。
そこには、光り輝く帝都の夜景――GWがその身を削って維持している秩序があった。
「父上があのお方の秘書としてミスなく機能し、伯父上が領地を守り、僕が剣を振るう。……そしてAWが閣下の盾になる。……あぁ、完璧じゃないですか。ヴァランタン侯爵家の全リソースが、 無駄なく帝国にパッキングされている」
伯父は、手元の書類に最後の一行を現像した。
それは、GWが望む自由とは 1bit も関係のない、完璧な行政報告書だった。
「……そうだな。個人の意志など、この帝国の歯車の中ではノイズに過ぎない。あいつがどれほど疲れ果て、ログアウトを望んでいたとしても……」
二人の視線が重なり、同じ答えがログインされる。
「「帝国のためには、仕方ない」」
[SUBJECT_Va]
• VITAL: [ ERROR: EXHAUSTED_BUT_ACTIVE ]
• DATA_INTEGRITY: [ LOCKED: FAMILY_EXPLOITATION ]




