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アーカイブ:Y‘s-VOID-GRAVE

ACCESS_GRANTED: CLEARANCE_LEVEL_ [ERROR_BYPASS_A]

[STATUS]:ARCHIVED

[SOURCE]:TRASH_BIN_DATA_SEA

(何かが落ちている。)


(どうやら記録媒体らしい。)


(「名残」とメモがついている。)


(再生しますか?)


[YES]/ NO


(ジジ.......ジジジ.....)



帝都の隅、日の当たらない湿った区画。

そこには、純血種が見向きもしない、石を積み上げただけの「異端の庭」がある。

Yとその姪は、そこで並んで立っていた。


墓の中に眠っているのは、かつて甥Aを教え導いた妹。Yにとっては、共に不備(ハイブリッド)としてこの家門の泥を啜った同胞だ。


「……母様は、幸せだったのかしら。結局、純血の男爵に嫁ぎ、私という『純血回帰種(にんていひん)』を産んで、短命のまま消えて」


姪が、自嘲気味に笑う。


「幸せなどという不安定なデータは、我々には不要だ」


Yが、猛毒の延命剤で維持された冷たい指で、墓石に触れる。

中に入っているのは、彼女が密かに愛でていた人間の詩集か。

肉体は帝国の規定に従って魔力炉だ。


「彼女は、V家のシステムの一部として機能を完遂した。……Aを完成させ、お前という『性能の良い部品』を遺した。……それで十分だ」


「……冷たいわね、伯父様。貴方も、その延命剤で、最後の一滴までV家に搾り取られるつもり?」


「搾り取られるのではない。……私が、V家を『管理』し続けるために、この薬を啜っているのだよ」


二人の会話には、親族としての情愛など一滴も混じらない。

あるのは、純血たちが「資源」としてしか見ない自分たちの人生を、自分たちだけが「遺品」というゴミの中に閉じ込めて守ろうとする、執着にも似た呪いだ。


Yは手に持っていたオレンジ色の薔薇の花束を置く。


「伯父さんの趣味にしちゃ可愛いわね」


「......私じゃない」


「.....そ」


風が花の香りをさらっていった。


[SUBJECT_Y]

* VITAL: [ SYSTEM_SCAVENGER]

* DATA_INTEGRITY: [COLD_ASH/0.000000001%]

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