任務
翌日。朝食を終え、訓練の支度をする。ヒカルは部屋を出て、城の裏手にある訓練場に向かおうとした。
ドラゴン軍の兵士は、実はこれといった仕事はない。任務を受け、竜を討伐するか、訓練するかのどちらかだ。その日任務を受けるか、訓練するかは本人の自由だ。一応、訓練も仕事の1つなので、訓練をおろそかにすると評価が下がることもある。評価を上げるには任務を受ける必要がある。
ヒカルは階段を下り、大広間に入った。
「あと一人……お、ヒカル。今、時間はあるか?」
ボルトが階段の右側に立っていた。後ろにゴウとリキがいる。
「はい?」
ヒカルはボルトの方に向かった。
「これからコイツらと任務に行くんだが、1人足りなくてな。悪いが一緒に来てくれないか?」
「はい、行きます!」
ヒカルは元気良く返事した。
「よし、それじゃ任務に行く前に、任務の受け方を教えておこう」
「受け方ですか?」
「そうだ。こっちにこい」
ボルトは階段の右側の壁に向かった。1つのドアがあり、その右側に掲示板があった。掲示板にはたくさんの紙が貼られており、内容はどれも竜を討伐してくれ、というものだった。
ボルトはその中から一枚の紙を剥がした。
「こいつに任務の内容が書いてある」
ボルトはヒカルたち3人に紙を見せた。
対象 火竜ドラゴン
場所 草原
任務内容 対象の討伐
被害 商人が襲われた
「今回俺たちが行く任務だ」
ボルトが言った。
「火竜ドラゴン?こんなザコより、もっと強いヤツがいいんだが」
ゴウが口をはさんだ。
「ワガママ言うな。新人はまず、火竜を討伐することから始めることになっている。火竜が討伐出来れば、少し難しい任務も受けられる」
ボルトがゴウを注意した。ゴウは舌打ちして黙った。
「さて、この紙をどうするのかだが、コイツに渡す」
ボルトはドアをノックをした。
「入っていいぞ」
中から男の声がした。ボルトはドアを開けた。中にはたくさんのパソコンやタブレットが並んでいた。その奥に、大きなモニターがあった。その前に1人の銀色の竜がいた。
「任務か?」
「ああ、そうだ」
ボルトは銀色の竜に紙を渡した。
「火竜の討伐ね、了解。ちゃんと4人いるな?」
竜はボルトに聞いた。
「いるぞ。ただ、俺以外は全員新人だ」
ボルトはゴウたち3人を見た。
「そうか、じゃあ少し説明しておくか」
竜はそう言ってモニターの電源を点けた。
「まず俺の名前だが、イメリオと呼んでくれ」
イメリオは手元のタブレットをいじり、モニターに何枚か写真を出した。掲示板とこの部屋の写真、あと街の写真だ。
「ボルトから聞いたとは思うが、この部屋のドアの横に掲示板があっただろ?あそこに貼ってあるのが依頼書だ。街のヤツとかが持ってきた依頼が書いてある。その依頼書をこの部屋にいる俺に渡す。そのときに4人以上いないとならない。ここでは、討伐任務には4人以上で行くという決まりがあるからな」
「なんで4人いないとダメなんだ?」
リキが聞いた。イメリオはモニターに図を表示した。
「それぞれ役割が与えられるんだ。主に指示役、攻撃役、防御役、回復役の4つだ。この組み合わせで討伐任務に向かう。まあ最近は、ほとんどのやつがそういうの無視して、全員で突っ込んだりしてるがな」
イメリオが苦笑いした。
「まあとにかく、ここでは4人で任務に行くのがルールだ。覚えておけよ?」
「はい」
ヒカルは頷いた。
「よし、じゃあ行ってこい。帰ってきたら指示役のヤツは連絡しろよ」
イメリオが言った。4人は部屋を出た。
「早速向かおう。火竜はここから1時間くらいの草原にいる」
ボルトは外に向かって歩き始めた。
「火竜程度、すぐにボコボコにしてやる!」
ゴウが笑いながら言った。
「そうだな!」
リキも同意した。ヒカルはその様子を後ろから見ていた。
場所 襲撃受域
「ゴウとリキは火竜を倒したことがあるのか?」
ボルトが歩きながら2人に聞いた。
「あの程度のザコ、ガキのころから何回もぶちのめしてるぜ?」
ゴウが笑った。
「そうか、頼もしいな」
2人の会話を聞きながら、ヒカルは歩いていた。しばらくして一番外側の城壁にたどり着いた。
城壁には大きな門があり、その前に門番が2人立っていた。
「ん?任務か?」
門番の1人が聞いた。
「ああ、そうだ」
ボルトが答えた。門番は大きく重い扉をゆっくり開いた。外には広大な草原が広がっていた。
「ご武運を」
2人の門番が言った。4人は門をくぐり、城壁の外へと出た。