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ザ・ドラゴンズ  作者: 天彗
ドラゴン軍
8/21

合格者

 試験終了後、合格した受験者たちは兵士たちの案内で城に入っていった。


 城に入ってすぐのところは大広間になっている。壁も床もレンガでできており、床には赤いカーペットが敷かれており、いくつものテーブルと椅子が並んでいる。奥には階段があり、2階に上がることが出来る。


 2階は二手に分かれた通路があり、左側は医務室に繋がっている。右側は兵士たちが住んでいる部屋に繋がっている。階段の両脇にはドアがあるが、中に何があるのか、ヒカルは知らなかった。


 兵士は大広間に入ってすぐ、右に曲がった。向かう先には大きな扉があった。金色のドラゴンの装飾がされた豪華な扉だ。その扉の前に着くと兵士は受験者たちに座るよう言った。


「合格者を連れてきました」

 バスが言った。すると、扉の内側から大きな足音が近付いてきて、扉の前で止まった。


「受験者諸君、ご苦労だった。我はこの城の王だ。『ボス』と呼んでくれ」

 扉の奥から低い男の声が聞こえた。


「さて、早速だが、この城で働くなら、少し覚悟してもらう」


「覚悟?」

 リキが言った。


「何の覚悟だよ。死ぬかもしんねーから気を付けろってか?」

 ゴウが言った。


「それもある。だがもっと大きな覚悟だ」

「は?」


 ボスが咳払いをした。

「いいか?ここは仕事がキツくて、給料が安くて、休みは無い!」


 受験者たちにどよめきが起きる。


「家に帰れると思うなよ?お前たちの家は今日からこの城だ!帰りたくても帰れない、アットホームな職場、それがドラゴン城だ!」


「マジかよ」

 リキが言った。他の受験者にも動揺が走っているようだ。しかしボスは続ける。


「労災だのなんだのあるが、そんなもんは知らん!残業万歳!サービス残業万歳!」


「コイツ正気か!?」

 1人の受験者が叫んだ。他の受験者たちにも動揺が走る。


「それでも」

 ボスが続ける。


「それでもこの城で働きたいと言うのなら、我は止めん。働きたくないのであれば帰ってよろしい。さあ、どうする?働きたい者だけ残れ」

 沈黙が辺りを包む。


(皆どうするんだろう)

 ヒカルは周りの様子を窺った。……合格者ってこれしかいなかったっけ?


「お前たちは残るんだな?」

 ボスは確認した。そこにいたのはヒカル、ゴウ、リキの3人だけだった。


「今回の新人は3人か。いつもよりは多いな、いいことだ!」

 ボスが笑いながら言った。


「新人ども!歓迎する。今日は部屋で休むといい。明日からバリバリ働いてもらうぞ!アーッハッハッハ!」

 ボスは笑い声を上げながら、部屋の奥に去っていった。


「なんだ今の」

 ゴウが言った。


「あんなヤツの下につくのか、俺たちは」

 リキが不満そうに言う。


「立て、付いてこい。部屋に案内する」

 ボルトが言った。ゴウとリキは立ち上がった。


「ヒカルは今までと同じ所だ。明日から、また訓練だからな?」

 ボルトがヒカルに言った。


「はい、分かりました」

 ヒカルは頷いた。


「あん?どういうことだ?このガキ、新人じゃないのか?」

 ゴウが問う。


「ん?ああ、そうか。コイツは城で保護してたからな。まあ、案内しながら話してやる」

 ボルトが言った。ゴウとリキはボルトに付いて、2階に去っていった。


 ヒカルは1人で大広間を出た。階段を上り、2階に行く。そして、自分の部屋に向かい、部屋に入った。ヒカルは窓から外を眺めた。


「明日から、ここの兵士なんだ」

 ヒカルは呟いた。そして、窓から見える景色をしばらく眺めていた。始めて来たときと同じ、西洋の街並みが広がっている。その街を、雲を貫くほど高い壁が囲んでいる。なんでこんなに高いのかは知らない。こんな街に住んでいた覚えもない。


 ただひとつ、覚えているのはあの竜のことだけ。


「絶対に見付ける」

 ヒカルは窓から空を見上げた。

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