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ザ・ドラゴンズ  作者: 天彗
ドラゴン軍
6/21

試験開始

 襲撃受域に何十人もの人が集まっていた。皆、入隊試験を受けに来た、受験者たちだ。全員で40人ほどだろうか。城壁の前に並んでいる。


 ヒカルは一番左の列の一番後ろにいた。周りの人たちはヒカルよりも体格が良く、強そうな人たちばかりである。


 彼らの前には今回の試験官の兵士たちが並んでいた。先頭にいるのはボルトだった。試験を受けに来た人たちを鋭い眼光で睨みつけている。まあ、もとから目付きが怖いのでそう見えるだけかもしれないが。試験官の中にはヒカリの姿もあった。


「おい、見ろよゴウ。ガキがいるぜ?」

 ヒカルの隣にいた茶髪の男が言った。


「うわ、ほんとだ。バカじゃねえのあいつ?よくそんな体で試験受けられるな?」

 茶髪の後ろにいるゴウと呼ばれた金髪の男が言った。2人とも筋骨隆々で、いかにも強そうだ。


「え?」

 ヒカルは2人を見た。


「ここはお前みたいな坊やが来るところじゃないぜ?なあリキ?」

 ゴウが言った。


「そうそう。ガキは帰った帰った!」

 リキと呼ばれた茶髪の男が言った。


「え?いや……その……」

 2人の言葉にヒカルがたじろぐ。そのとき、受験者たちの上を1羽の鷲が飛んでいった。黄色い鷲だった。鷲は上空で旋回するとボルトに向かって行った。


 ボルトが片腕を上げた。鷲はその腕に向かっていき、ボルトの腕に止まった。


「これより、ドラゴン軍入隊試験の説明を始める」

 鷲が言った。


(しゃべったー!)

 ヒカルは驚いた。竜の存在だけで驚きだったのに、まさか喋る鷲が現れるとは。


「試験はいくつかのグループに分けて行う」

 鷲が説明を始めた。


「各グループの人数は、大体3か4だ。1グループにつき、試験官が1人ずつつく。試験は実戦形式で行い、武器は自分が持ってきたものを使う。さて、戦う相手だが……」

鷲がボルトを見た。ボルトが鷲が止まっていない方の手を開くと、金色の槍が現れた。ボルトはその槍の石突で地面を2回叩いた。


 するとボルトの前に蒼い魔方陣が出現した。そして、その魔方陣から赤い竜が這い出してきた。


「相手はコイツだ」

 鷲が言った。

「まあ見ての通り、本物の竜じゃない。これは訓練用、試験用に我々が作った、【模擬戦竜】だ」


 模擬戦竜は背中の翼を広げ、全身から蒸気を噴き出している。どうやら、金属でできたロボットのようだ。


「そして、これを倒した者を合格とする」

 鷲が言った。


「質問はそれぞれの試験官に言ってくれ。では……」

 鷲がボルトを見た。ボルトは頷き、槍の石突を地面に叩き付けた。その瞬間、落雷のような音と閃光が辺りを覆った。そしてあっという間に受験者たちは襲撃受域のあちこちに散らされた。


 ヒカルはゴウとリキと同じ場所に飛ばされた。試験官はボルトだった。


「あん?このガキと同じグループかよ?」

 ゴウが言った。


「まあ生きて帰れるように、頑張れよ?」

 リキが笑いながら言った。


「静粛に!」

 ボルトが石突で地面を2回叩いた。魔方陣が出現する。


「これより試験を始める」

 ボルトが言った。魔方陣から赤い模擬戦竜が這い出してきた。


「1人ずつ順番に戦ってもらう。最初はゴウ、お前からだ」

 ボルトが言った。ゴウは不服そうに舌打ちした。


「なんだよ、2人でやっちゃ駄目なのか?」

「そうだ!俺たちは2人で剛力ブラザーズだ!」

 リキが叫んだ。


「1人ずつだ。リキとヒカルは後ろで見てろ」

 ヒカルは後ろへ下がった。リキはボルトを睨み、下がった。


「では武器を構えろ」

 ボルトが言った。しかしゴウは無視して模擬戦竜に向かって突進していった。


「おい、話を……」

 ボルトが言いかける。


「うっせえ!!」

 ゴウが右腕を振りかぶり、模擬戦竜の右頬をぶん殴った。


(素手!?)

 ヒカルは驚いた。ボルトもまさか素手で戦うとは思っていなかったらしく、驚いた様子だった。ゴウの拳が模擬戦竜の顔に食い込み、模擬戦竜の顔が歪んだ。火花が散り、模擬戦竜がゴウを見る。口を開け、噛み付こうとした。しかしゴウは模擬戦竜の口内に左の拳をぶち込んだ。模擬戦竜の口がとんでもない音を立てて折れた。


「ハッ!ボロボロにしてやる」

 ゴウはその後も何度も模擬戦竜を殴り、蹴り、さらには投げ飛ばした。そして模擬戦竜の左腕をもぎ取った。模擬戦竜は倒れ、動かなくなった。


「そこまで!」

 ボルトが言った。


「あ?もう終わりかよ」

 ゴウがつまらなそうに言った。ゴウは模擬戦竜の左腕を投げ捨てた。


「……まあ、合格でいいだろう。次、リキだ。準備しろ」

 ボルトが言った。リキは模擬戦竜を睨みながら前に出た。


「あのボロいのをさらにボコボコにしろってんのか?」

 リキは模擬戦竜を指差しながら言った。


「少し待て」

 ボルトが制止する。リキは舌打ちし、模擬戦竜を見た。


 突然、模擬戦竜の体から微細な金属の粒子が噴き出した。粒子は模擬戦竜の体中の傷を塞ぎ、左腕と口を完全に修復した。


「へー、おもしれー仕掛けになってんじゃん」

 リキがおもしろそうに言い、模擬戦竜に突進していった。そして拳を振りかぶり、そのまま模擬戦竜に殴りかかった。


「コイツもかよ……」

 ボルトが呆れたように言った。リキの拳が模擬戦竜の腹にめり込む。模擬戦竜は呻きながらよろめいたが、すぐに体勢を立て直し、リキに体当たりした。


 リキは両手で模擬戦竜を受け止め、腹を蹴り上げた。模擬戦竜の腹にリキの足先がめり込み、模擬戦竜が一瞬、宙に浮く。その隙にリキは右足を後ろに引き、力を込めた。


「オラァ!!」

 リキの蹴りが模擬戦竜に突き刺さった。模擬戦竜の体が吹き飛ぶ。模擬戦竜は宙を飛び、数メートル離れた所に落ち、動かなくなった。


「はい、合格」

 ボルトが言った。


「あ?もう終わりか?つまんねー」

 リキが不満そうな声を上げる。


「まあいいじゃねえか。これからが見どころだろ?」

 ゴウが戻ってきたリキに言う。ゴウはニヤニヤ笑いながらヒカルを見た。


「次、ヒカル」

 ボルトが言った。


「はい!」

 ヒカルが前に出る。


「武器は?」

 ボルトが言った。ヒカルは剣を持った。


「よかった、お前まで持ってなかったらおかしくなるところだった」

 ボルトが呟いた。


「よし、構えろ」

ボルトが言った。ヒカルは剣を構えた。模擬戦竜の修復が始まった。そして立ち上がり、ヒカルを見た。


「始め!」

 ボルトが言った。模擬戦竜が吼え突進してきた。

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