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ザ・ドラゴンズ  作者: 天彗
ドラゴン軍
4/21

ボルト

 数週間後、ヒカルの容態はかなり安定してきていた。傷もほとんど治り、普通に歩いたり出来るようになっていた。


「ここまで回復すれば、治療は必要ないだろう」

 ウェインが言った。


「本当ですか?ありがとうございます」

 ヒカルがお礼を言った。


「しかし、別の問題がある」

 ウェインが言った。


「問題?」

 ヒカリが聞いた。


「そうだ。分かるだろ?」

 ウェインが言った。


「えっと……あ、家……」

 ヒカルが言うとウェインが頷いた。


「そうだ、家が分からない。帰そうにも帰せないんだよ」

 ウェインが頭を掻きながら言った。


「家が分からないなら、親元に返すことも出来ないし、かといってこの城に置いておくことも出来ない。だが追い出すのは可哀想だし……さて、どうしたものか……」

 ウェインは考え込んだ。ヒカルはそんなウェインを見て言った。


「あの、手掛かりになるか分からないんですけど……」

 ヒカルは夢で見た光景をウェインに話した。火の海に沈んだ町。赤いタワーの上で吼える竜。話しているうちにヒカルの目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。


「そんな被害が……」

 ウェインは言った。ヒカルは頷いた。


「前足が鎌のような竜……聞いたことは無いな……だが、被害は分かった。それを基にすれば、家が分かるかもしれない。少し待っていてくれ」

 そう言うとウェインは医務室から出ていった。


 しばらくして、ウェインがタブレットを見ながら戻ってきた。……そう、タブレットだ。


「うーん、それっぽい情報は無いな……」

 ウェインがタブレットをいじる。

 ヒカルは近くの窓から外を見た。入院中、何度か外を見た。その時と変わらない、中世の西洋のような町並みだ。とてもタブレットがある時代とは思えない町並みだった。


「駄目だ、分からん」

 ウェインがタブレットを閉じた。


「そうですか……」

 ヒカルは残念そうな顔で言った。


「家には帰せそうにないな……どうするか……」

 ウェインは考えた。その時、医務室の扉が開いた。


「話は聞かせてもらった」

 医務室に黄色い竜が入ってきた。


「ボルト?」

 ウェインが言った。


「ああ、そうだ」

 黄色い竜は頷いた。


「この男をこの城の兵士にすればいい」

 ボルトはヒカルを指さして言った。


「そうすればこの男の問題は解決する。さらに、人手も増える。どちらにも得があるのではないか?」

 ボルトはそう言った。


「……マジで言ってんの?」

 ウェインは驚いた表情で言った。


「僕が……ここの、兵士に?」

 ヒカルも驚いた。


「ああ、そうだ」

 ボルトが頷く。


「えっと……僕は……」

 ヒカルは戸惑いながら言った。


「今度の入隊試験に間に合わせればいい。俺が面倒を見てやる。どうと言うことはない」

 ボルトが聞いた。


「今ヒカル君が何か言おうとしてたじゃん……」

 ウェインが呆れたように言った。


「何か問題があるのか?」

 ボルトが言った。


 ヒカルは断ろうとした。自分なんかが兵士になれるわけが無い。それに、危ないことをするつもりは無かった。


 ……しかし、もし兵士になったら、あの竜について何か分かるかもしれない。自分の故郷についても何か分かるかもしれない。もし、兵士になれるなら……


「あの、僕なんかでも、兵士になれますか?」

 ヒカルはボルトに聞いた。ボルトが頷く。


「当然だ。俺の指導を受けて、兵士になれなかったやつはいない。ヒカリだってそうだ」

 ボルトはそう言った。


「あー、やめといた方がいいと思うんだが……」

 ウェインが言った。


「後悔はさせない」

 ボルトが答えた。


「あの、じゃあ、お願いします!」

 ヒカルは頭を下げた。


「ああ、言っちゃった。しーらね」

 ウェインは呟いた。


「よし、じゃあお前は今日から俺の弟子だ。明日から訓練を始めるぞ」

 ボルトが言った。


「は、はい!」

 ヒカルはそう答えた。


「じゃあ、ボルトに任せた」

 ウェインが言った。


「ああ」

 ボルトが頷いた。


 かくして、ヒカルの城での生活が始まった。ボルトが城のボスなるものに話し、部屋を用意してくれた。


 夕食の時、ボルトが兵士たちにヒカルを紹介した。城の兵士たちは、ヒカルを歓迎した。


「兵士じゃないのに城に置いておくのはどうなんだ……」

 左腕に大きな盾のような鱗がある、銀色の竜が言った。彼はバス。ドラゴン軍の刀剣隊の隊長らしい。


「まあ、職場体験みたいなもんだろ。仲良くしようぜ」

 バスの隣にいる銀色の竜が言った。彼はテノール。ドラゴン軍槍隊の隊長らしい。


「よろしくお願いします!」

 ヒカルは頭を下げた。

「ここがお前の部屋だ」

 ボルトはヒカルを部屋に連れてきた。部屋はベッドと小さな机があるだけの簡素な部屋だった。


「ありがとうございます」

 ヒカルは言った。


「明日から訓練を始める。今日はよく寝ておけ。俺は容赦しないからな?」

 ボルトはニヤリとして言った。


「はい!」

 ヒカルは頷いた。


 こうして、ドラゴン軍の兵士になるべく、ヒカルの訓練の日々が始まった。

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