表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ・ドラゴンズ  作者: 天彗
ドラゴン軍
2/21

竜の世

 辺り一面火の海だった。建物は崩れ、炎の中に沈んだ。人の声はどこからも聞こえて来なかった。ヒカルは走った。逃げていた。迫る炎から、迫る死から。


 ヒカルはチラッと後ろを見た。赤いタワーの頂上に、1頭の生物がいた。四足歩行で、背中に翼がある。前足は鎌になっており、触れた物全てを切り裂いた。頭には鋭いツノがあった。


 生物が咆哮を上げた。翼を広げる。そしてヒカルを見た。ヒカルは走った。とにかく走った。なんとか逃げようとした。しかし、生物は一瞬でヒカルの背後に飛んできた。鎌を振り上げる。ヒカルは叫んだ。

 自分の叫び声で目が覚めた。ヒカルは起こした。病室のような場所にいる。いくつもベッドが並び、そのうち1つに寝ていたようだ。壁も天井も白い。床はフローリングになっていた。


 全身に包帯が巻かれている。だが痛みは無い。


 助かったのだろうか。ヒカルはそう思った。


「気がついたか?」

 男の声が横からした。ヒカルが寝ているベッドの隣に誰か立っている。白衣を着ているし、二本足で立っているが……人間じゃない。体は銀色の鱗に包まれ、鋭い爪とツノがある。背中には翼があり、尻尾まである。


 ……夢でも見ているのだろうか?今目の前にいるのは間違いなくドラゴンだ。


「大丈夫かい?俺が分かるか?」

 ドラゴンが言った。


「……夢?」

 ヒカルが呟いた。


「現実だ」

 ドラゴンが言った。


「あ、そうですか。現実……」

 ヒカルはドラゴンを見た。


「現実⁉じゃあ、目の前にいるのは何⁉」

 ヒカルは起き上がって聞いた。


「……?俺か?何って、俺はこの医務室の先生、ウェインだ」


「そうじゃないです。え、何?ドラゴン?どうなってんの?」


「ドラゴン……まあ、そうだが……それがどうかしたか?」

 ドラゴンが不思議そうな顔をして聞いた。


(え、何?僕がおかしいの?なんでそんな不思議そうな顔してんの?)

 ヒカルは心の中で思った。


「まだ脳が混乱してるのかもな。もう少し休んでなさい」

 ドラゴンが言った。


(休めるわけ無いでしょ、明らかに肉食でしょこの見た目は!)

 ヒカルは思った。


「あの……」

 ヒカルが言った。


「僕は今どこにいるんですか?」


「今いる場所か?ここはドラゴン城。ドラゴン軍の本拠地だ」

 ドラゴンはそう言った。


「えっと……あなたは?」

 ヒカルはドラゴンに聞いた。


「俺はウェインだ」


「そうじゃなくて、その見た目は……?」


「……?医務室の先生だからな。白衣を着るのは当然だろう?」


 いや、そうだけど。

 確かにそうだけども。


「えっと、そうじゃなくて、えっと……」

 ヒカルは言葉に詰まった。さいわいにも、ウェインは察しが良かった。


「そうか、もしかしてお前、竜を見るのは初めてか」

 ウェインは少し驚いたように言った。


「え、あ、はい。そうです」

 ヒカルの返事にウェインは頷いた。


「なるほど、竜を知らないか……」

 ウェインはそう言って、少し考え込んだ。


「とりあえず……少し説明してやろう」

 ウェインはそう言った。


「ありがとうございます……?」

 ヒカルが言った。


「礼はいい。さて、竜っていうのは……俺を見れば分かると思うが、爬虫類の一種だ。トカゲの仲間から進化したと言われている。特徴としては、だいたいの種類に翼がある。ワームとかサーペントみたいなやつには無いがな。大抵はどっかに翼がある。それと、魔法が使える種類も多いな」


「魔法⁉」

 ヒカルは驚いた。魔法なんてお伽噺の中だけのものだと思っていた。


「ああ、そうだ。だいたいの竜は何かしら魔法を使える。こんなふうに」

 ウェインは手を開いた。緑色の魔方陣が現れ、小さな風が吹いた。ウェインは手を閉じ魔方陣を消した。


「とまあ、こんな感じにな」


「すごい……」

 ヒカルは呟いた。でも魔法まで出てきたなら、やっぱり夢じゃないだろうか?


「そういえば君、名前は?」

 ウェインが聞いた。


「僕は……ヒカルです」


「そうか、ヒカルか。もともと住んでいた所は分かるかな?」

 ヒカルは答えようとした。しかし、分からなかった。


「えっと……あれ?」

 ヒカルは思いだそうとした。風景は分かる。たくさんの家やマンション、ビルが並び、赤いタワーが立っている。遠くにはさらに高いタワーがあった。しかし地名が分からない。


「どんな場所に住んでいたかでもいい。周りにあるものとかが分かればいい」

 ウェインが言った。


「えっと……建物がたくさんありました。あと、赤いタワーがあって、少し離れた場所に違う色のやつが」

 ヒカルは思いだしながら答えた。


「建物がたくさんあって、タワーが2本?シティか?しかし、そんな場所あったかな……?」

 ウェインが言った。そのとき、病室の扉が開き、誰かが入ってきた。


「ウェイン、私の短剣知らない?どこかに置いてきちゃったみたいで……」

 黄色い髪の女の子だった。しかも人間だ。どうやらここにはちゃんと人間もいるらしい。少女はヒカルを見ると驚いた表情をした。


「意識が戻ったのね!」

 少女はヒカルを見て言った。


「え、あ、はい。えっと……どちら様で?」

 ヒカルは言った。


「私はヒカリ!あなたは?」


「僕は……ヒカルです」


「ヒカル君か、よろしくね!」

 ヒカリは笑顔で言った。

 三度目の正直という言葉があります。今度は成功させます。

 本当だな?

 必ずや、あの男を我らの軍に。

 ……仏の顔も三度までだ。次は無いと思え。

 承知、しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ