懐かしい夢を見ちゃいました。ついでに現実も見ちゃいました。
『お父様!お母様!』
『イヴ、今お母様は体が大変だから騒いではいけないよ』
『でも、久しぶりにお二人に会えたの。イヴはお話したい事が沢山あるの』
『大丈夫よ。さぁ、お母様とお話しましょ』
あれ?お母様はどうしてお腹を守っているの?
どうしてお父様はお母様をイヴから庇うように支えているの?
二人ともイヴの事嫌いになっちゃったの?
『グレッグ!グレッグ!早くイヴを部屋に連れていきなさい』
お父様はどうして何時もグレッグお兄様に怒っているの?
『すみません。すぐに連れていきます。』
グレッグお兄様はお父様とお母様が怖いの?
どうして私の肩を持つ手が震えているの?
『ごめんなさい。グレッグお兄様、イヴはお部屋に戻ります。』
イヴの言葉に安心したのかな?グレッグお兄様は優しくイヴの頭を撫でてくれる。
嬉しいな。お胸のあたりが暖かくなるな。
でも、お父様とお母様にも抱きしめて欲しかったな。
「ぎゅ〜と…ね…。」
「いいよ。ほら、こっちにおいで」
イヴは、その声の胸元にすり寄って抱きしめて素直に抱きしめて貰うのを待っていると
「うわっ。マジでかわいんだけど。どうすればいいいの?」
と動揺が隠しきれず本音を漏らしてしまう。
しかし、彼女のおねだりを聞かないなんて選択肢がないイーサンは優しく包み込むように抱きしめた。
イーサンはあまりの嬉しさに感情が抑えきれず獣人化して、尻尾をイヴの腰に巻き付ける。
「嫌なことは一緒に一つずつ潰して行こうな。俺が傍にいるからな」
再び深く眠ったイヴには聞こえなかったが、イーサンはこの大切な恋人を守ろうと決意した。
「イヴ、朝だよ?起きれる?」
後ろから優しく抱きしめられ起きるように促される。
「う〜ん。あと五分…。」
「今日は、一緒にお仕事休むのも捨てがたいな」
それもいいかも。と誘惑に負けそうになるイヴ。
真剣に悩み始めるがケモ耳を撫でるように触られていることに気づく
背中がゾクゾクとしてくる。
「その代わり、朝から二度寝はさせないけどね」
と言いながらイーサンは自分の体をイヴに押し付ける。
朝から体を押し付けられると気になるところが…。
「起きます!おはようございます!」
イヴは勢いよく起き上がるとイーサンの方を向きながら
「さっ朝ごはんを食べよう!おぅ!」
ベッドから飛び起きそのままダイニングへ向かった。
その姿をベッドの上で肘を付きながら眺めていたイーサンは
「おかしいな~?俺たち恋人だよな?」
と笑いをこらえながらつぶやいた。
イヴがささっと、朝食の準備を終えるとイーサンがダイニングにやってきた。
「ほら!冷めないうちに食べよう!」
「うん。美味しそうだね。ありがとう」
イヴとイーサンは朝食を食べ始めた。しばらくすると
「そうそう、昨日ごめんね。突然倒れて驚いたでしょ?なんか、久しぶりだったよあの感覚」
イヴは昨日の発作でイーサンに迷惑をかけたことを謝罪した。
「いいや、俺もイヴの症状は落ち着いていると思っていたから油断していたよ。気を付けないとね」
「そうだよね〜。やっぱりお酒が駄目なのかな~。紅茶も少しずつ飲めるようになったのにお酒までセーブするのは辛すぎるぅ」
イヴが悔しそうに温めたパンをかじりながら唸っていた。
「ん~。でも昨日は状況が異様だったってケリーさんが言ってたよ。あっ後、今日はグレッグさんが夜イヴの様子を見に来るみたいだから仕事が終わったらすぐに帰って来た方がいいかも」
「そうだよね。グレッグ達にかなり迷惑かけたよ…。ちゃんと謝っとくね」
「それがいいね」
それから二人は昨日の楽しかった夕食会の事だけ話した。
それから身支度をし二人で職場に向かった。
イヴが隊長室に入ると、既にタッカーが座っており「おはよ〜」と声をかけられた。
ダニエルはまだ席にいなかったのでジーンとゆっくり向かっているのかなと思いながら
「おはようございます」とタッカーに挨拶をした。
「イヴ~。ちょっとこっちこい~」
タッカーの執務机の前まで行くと
「お前、一体何したんだ?今朝上層部から呼び出しくらったぞ~」
タッカーの言葉に思い当たることはなかった
「何もしていませんが?」
そうだよな。とタッカーは言いながら一枚の紙をイヴに渡すと
「イヴ、3日後マーシャル領へ出張だ。と言うのは表向きで本当は実家へ戻る様にとの事だ。イヴって実家と仲が悪かったよな?大丈夫か?誰か隊員を付けようか?」
タッカーの言葉に一瞬イーサンを思い出したイヴだったが、相手は宰相付きの護衛だから無理かなとすぐにその考えを止めた。
「いえ、家の事なので一人で大丈夫です」
心配してくれているタッカーには申し訳ないが実家のゴタゴタを見られたくないというのが本音だった。
「それにしても、もっと普通に呼び出せないもんかね」
タッカーはイヴあての書類を再度確認した後、それを渡した。
「本当にそうですよね…。」
本当は直接両親に言われたけど即拒否したのが原因かもしれないですとは言えなかった。
その書類を受け取った後、自分の席に戻り自分の作業をし始めた。
その後すぐにダニエルも席についた。朝礼の時間になったのでタッカーとダニエルは隊員達が待機している場所へ向かった。
一人になったイヴは先ほどタッカーに手渡された書類を再度確認した。
「うわぁ~これ、うちのサインいるんだ…。」
書類にカーウェル家当主のサインを貰ってくるようにと記載されていた。
「はぁ~。本当にこれどうしようかな」
イヴはその書類をピラピラと揺らしながら途方にくれた。
仕事が終わったのでイヴは早めに家路についた。
あまりに早く帰ろうとするのでジーンに「そんなに慌てなくてもイーサン隊長は逃げないわよ!」とからかわれたが、グレッグが家に来るかもしれないのと伝えると「すぐに帰れ~」と掌を返すように追い出された。
家の中に入るとちょうどドアベルがなったので制服のままだったがすぐにドアを開けた。
イーサンが言っていたようにグレッグが両手にお土産を持って様子を見に来てくれた。
「いらっしゃい!さあさあ入って!」
「昨日と逆だね。お邪魔します」
そうして、ダイニングの椅子に座って貰うとイヴはお茶の準備をする。
「もうすぐ帰るから大丈夫だよ」と言われたが昨日の事をきちんと謝りたかったので少し待ってもらうことにした。
イヴはコーヒーを二人分用意するとグレッグにありがとうと言われる。
「グレッグ、昨日は本当にごめんね。ケリーさんにも迷惑をかけちゃって」
グレッグは首を横に振りながら
「謝るのは僕の方だよ。前もって両親の事を伝えなきゃって思ってはいたんだけどなかなかタイミングが合わないし、イヴにどうやって話をすればいいのか悩んでいるうちに待ちきれなくなったみたい」
「相変わらず自分勝手だよね」
イヴは眉を顰めながらぼやいた。
そして、今朝タッカーから渡された書類を見せると
「これ本当は機密なんだけど…」と言いながらグレッグに渡す
グレッグは読み進める内に顔色が悪くなった
「えっ僕たちの両親って権力者なの?」
「えっそうなの?」
「そういえば、両親の働いている姿を見たことがないよね?」
イヴの疑問にグレッグは少し悩みながら小さくうなずいた
「多分、イアンは知っていると思うけど。僕たちは知る必要がないからね」
グレッグの言葉に当主の仕事は次期当主しか教えてもらえないものかと一人で納得した。
「で、イヴは実家に一人で行くの?」
「うん。上司は隊員を貸し出してくれるって言われたけどあまり内部を知られるのも嫌かなって思ったから断ったんだ」
イヴの話を聞きながらグレッグはそうだねと相槌を打った後
「じゃあ、僕も一緒に行くよ。ケリーには僕から話をしておくし、イーサン君も僕だったら安心しょ?」
いつもなら断るイヴだったが、この件に関してはグレッグに甘える事にした。
「よろしくお願いします!!!!」
それから3日後イヴとグレッグは実家があるマーシャル領へと向かっていった。
最後までお読みいただきありがとうございました。