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兄夫婦に夕食を誘われちゃいました(前編)

 イーサンと二人でグレッグ夫婦のお食事会へ向かう。

念のために確認すると「いいよ~。」と二つ返事で了承をもらった。

仕事とかの調整もしてくれたようだった。


出かける前にイーサンが軍の礼服を着ようとしていたので


「ちょっと!なに着てんの!普通の夕食だから!」


とイヴに注意されていた。


「えっ?お兄さんに結婚のご挨拶に行くんじゃないの?」


意外と真面目な表情で答えるので


「イイエ、チガイマスヨ。なんだったらお留守番にしますか?」


とイヴが無表情で言うとそそくさと普段着に着替えた。

冗談であって欲しい。


二人は戸締りを確認すると、いつものようにイーサンによって差し出された手を繋ぎ手土産を探すためにお店が並んでいる場所に行った。


「お兄さんと奥方は何を送ると喜ぶかな?」


イーサンがお店を色々見ながらイヴに確認する。


「グレッグは甘いものが好きかな?ケリーさんは紅茶だよ。でも二人ともお酒も好きだからワインでも買っていこうと思う」


「なるほどね~」


イーサンはイヴの言葉を聞いた後、少し高級そうな一件のお店に入った。

お店の中には色々なお酒が並んでいた。お酒に関連したおしゃれなグラスやデカンタなど小物も取り揃えているようだった。ちなみにイヴがいつも飲んでいる銘柄もあったので少し安心した。


「いらっしゃいませ。マーシャル様お久しぶりですね」


上品な女性がイーサンを見て挨拶をする。


「店主、おすすめのワインを用意してくれないか?」

イーサンの言葉に「かしこまりました。」といいながらワインセラーからいくつかのワインを取り出す。そして、簡単な説明をした後


「では、これを包んで欲しい」


というと店主はお辞儀をした後目の前でラッピングをし始めた。

魔法のような手さばきで素敵なラッピングを終えるとそのままイーサンに手渡す。

イーサンは店主が差し出した機械にサインを書くと文字がフッと消えた。


「これでお手続きは終了です。またのご利用をお待ちしております」


その言葉にイーサンは頷くと二人で店を出た。


「ん?あっ私もそのワイン代出しますよ!いくらでしたか?」


「イヴにそんな事はさせられないよ」


と軽くイーサンに拒否されたので、仕方なくグレッグが好きそうなお菓子を買って持っていくことにした。


 必要なものも購入できたのでそのままグレッグの家に行くことにした。

といってもイヴの家からそんなに距離があるわけでもないのですぐに着く事ができた。


ドアベルを鳴らすとドアの向こうから「は~い」とグレッグの声が聞こえる。


「こんばんは!」 「おじゃまします」


イヴとイーサンがそれぞれ挨拶をしながら家に入った。


「ようこそ!さあさあ、準備はできてるから早速たべよう!」


とグレッグに促されたので二人で手を洗ってから席に着いた。


「イヴちゃんお久しぶり〜。元気そうでなによりだよ」


「はい、完全復活とまではいきませんがかなり元に戻ったと思います」


イヴの言葉に嬉しそうに頷いた後、ケリーはイーサンの方をみて


「上司さんもお久しぶりですね。イヴちゃんがいつもお世話になっています?」


グレッグの妻のケリーはイヴの上司として対応していたが


「あっ、もう!この前話したでしょ?イヴとイーサン君はお付き合いを始めたって!んで、今は一緒に住んでいるんだよ」

グレッグの言葉にケリーは何かを思い出したように目を大きく開くと


「そっか、そういえばグレッグが寝る前に教えてくれていたわ!」


寝ぼけてて忘れていました。とケリーが笑いながら誤魔化していた。


「いいえ、私もきちんとご挨拶をしていなくて申し訳なかったです。改めてですが、イヴさんとお付き合いさせていただいている。イーサン・マーシャルと言います。今は、イヴの上官ではなく近衛で勤務しています」


イーサンが綺麗な礼をすると立ったまま話し始めたので


「とっとりあえず、二人とも座ってゆっくりご飯を食べながらお話ししよう」


と言ってグレッグは二人を座らせた。


「あっ、これこっちがイーサンでこれが私からの手土産です!」


「うわ〜。ありがとうここのお店有名だよね!!」


イーサンが持ってきたワインの包装紙を見ながらケリーが興奮気味に受け取った。


「このお菓子もありがとう。僕が昔から好きなやつだよ」


イヴが持っていったお菓子をグレッグは嬉しそうに受け取った。


机には既に料理が用意されていたのでイーサンに貰ったワインを早速開けて乾杯をした。

ティーンとグラスが重なる音を合図に楽しいひと時が始まる。


ケリーはイーサンの先ほどの話が気になったらしく


「じゃあ、イーサン君は今はイヴちゃんと別の職場なのね?寂しいわね」


「…。そうですね。でも、朝は一緒に職場に行きますし、帰宅するとイヴが待ってくれているのでそれはそれで幸せですね」


美味しい食事とワインは皆の口を軽くしていく。


「イヴそのピアス、イーサン君とお揃いだったんだね」


グレッグがワイングラスを持っている手で二人の耳を指さした。


「はい、私がお付き合いの記念に(勝手に)送らせてもらいました」


イーサンは嬉しそうにイヴの耳を触りながら報告する。


「へ~。ふぅ~ん。そうなんだぁ~」


ケリーは嬉しそうにそんな二人を眺める。

イヴはとても恥ずかしくなりそっとイーサンの手を遮った。


「そんなに照れなくても大丈夫よ~」


ケリーは二人の行動が微笑ましいのかウフフと笑いながらからかった。


イヴに邪険にされたイーサンは少し悲しい表情を作りながら


「やはり、人前で仲良くするのは苦手みたいです。中々私の気持ちを受け取ってもらえませんね。いっそのことこのまま婚約とかしてしまいたいです」


とイーサンがグレッグとケリーの前で話し出したのでイヴは焦りながら


「えっ?でもイーサンって貴族だよね?恋人とかは大丈夫だけどそれ以上の関係は色々と難しくない?」


イヴもほろ酔いなのか少し本音を漏らしてしまう。

イーサンは驚きながらイヴの方を見る


「えっ、イヴは恋人の先は考えてなかった?身分は得るときは大変だけど捨てるのはそう難しくないよ。…。両親にはそれとなく伝えているし。」


という言葉に今度はイーサン以外の三人が驚いていた。

イーサンは話ながら少し考え込む


「実は、私もイヴと同じことを思ったので少し調べたのですが…。」


と言いながら少し口が重くなる。


「イヴ…。あんたって子は…。」


イーサンが何かを言いあぐねていると今度はグレッグがイヴに声をかけた。


「ん?グレッグどうしたの?」


「いつかはきちんと話をしないといけないとは思っていたけど…。」


ケリーは笑いを堪えているのか下を向いて肩を震わせていた。


「貴方は立派な貴族だよ」


グレッグはイヴの目を見ながら伝えた。


「ふ~ん、そうなんだ~」


イヴはグレッグを見ながらワインを飲む。


そして、目の前のおつまみを一口食べた後

両手で机を叩きながら立ち上がり


「えっ?グレッグ何言ってるの?」


そのタイミングで椅子がバタンと倒れた。

イーサンはその倒れた椅子をそっとイヴの足元に寄せて座る様に促す。

イヴは無意識に座りなおすと


「えっ?グレッグ何言ってるの?」


もう一度同じ事を言った。


グレッグはイヴに話しかける前にケリーとイーサンに話が長くなるけどごめんねと一言謝った後


「僕は、カーウェル子爵家長男のグレッグ・カーウェルだよ。イヴは四番目だけど二女のイヴ・カーウェルです。イヴが入った軍学校は王立だから貴族も平民も同じ扱いだからあまり分からなかったのかな、家名が無い子もいるから基本的には名前呼びだったと思う。でも、貴族籍でイヴは入学しているから学費は少し高かったと思う。それらはもちろん両親が出してくれていたのは知ってるよね?学校を出てからの家の手配もカーウェル家の者がこっそり手伝ってくれたりしたんだよ」


「えっ?えっ?だったらグレッグは家を継がないといけないんじゃないの?」


「うん。そうだね~。本来ならそうなんだけど、ほらうちの両親って自由だったでしょ?だから必ず長男が継ぐ必要はないって言ってたんだ。で、イアン(次男)が継ぐことになったんだ」


「イアン兄さんが…。」


イヴが家を出てからグレッグ以外の家族とは没交渉だったので久しぶりに聞いた名前だった。グレッグは少し声を震わせながら


「イアンの方が僕よりも色々優秀でね。僕は下の子達(キミタチ)を見ることで自分の存在意義を確かめ続けていたのかもしれない。そんな時にイヴに声をかけられて、本当に救われたんだよ」


最後の方は自分でも納得したのか声が明るくなったような気がした。

そして、グレッグが何かを思い出したように


「イヴは警邏の中でも事務作業が得意でしょ?やっぱり幼少期に少しでも学んでいた事が良かったんじゃないかな?後、隊長の補佐って低くても貴族階級の方が良かったんじゃない?」


グレッグはイーサンの方を向きながら確認すると


「私が隊員のプロフィールを見て決めたわけではありませんが、タッカー隊長は平民出身なのでもしかするとそうゆう意図があったのかもしれませんね」

と返していた。


「ということで、イヴさんは不安にならずにイーサン君と婚約できます。少し釣り合わないと言われるかもしれませんが、そこはイーサン君の愛の力でどうにかなるんじゃない?」


「はい!なんとかします!」


イーサンは嬉しそうに頷いた。


「それに、うちがカーウェル家の寄親だったりします…ね」


「よりおやってなんですか?」


イヴはイーサンに尋ねると、グレッグがもう少しお勉強しようねと言いながら


「実は、マーシャル家とカーウェル家は同じ領地にあるんだよ。そして、マーシャル家はその領主の家でうちは、その傘下ってやつだね」


え~。実家もイーサンの部下なんだ~。と少し引き気味でイーサンを見ていると


「でも、私は長男ではないから!家は兄が継いでるから!何を心配しているのか分からないけど大丈夫!」


と首を振りながら必死でイヴに言い募ってきた。


「はぁ~。」


と思わず気のない返事をしたイヴにイーサンは涙目になり始める。


「じゃ、じゃあこのタイミングで二人で平民になる?私は全然大丈夫だよ」


「平民が宰相様の警備とかってできるんですか?世間知らずの私でも厳しいのは分かります」


「そこは、宰相殿の上司に直談判で!」


「へぇ~。イーサン君って上司(王様)に直談判できるんだぁ~」


「できませんよ!それは宰相殿と話し合いですかね!」


焦るイーサンをやっぱりからかうケリーだった。


《補足》

 グレッグ・カーウェル  長男(1番目)

 イアン・カーウェル   次男(2番目)

 アメリア・カーウェル  長女(3番目)

 イヴ・カーウェル    二女(4番目)

 マシュー・カーウェル  三男(5番目)

 ご参考程度に


最後までお読みいただきありがとうございました。

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