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恋人って何だろうって考えちゃいました

 イーサンと再び同棲し始めて少し経った頃、イヴの一番上の兄グレッグに呼び出され近くのカフェでお茶をしていると今度一緒に夕食でも食べないかと話を持ちかけてきた。

イヴは二つ返事で了承したが


「イーサン君にも都合を聞いておいてね」


と最後に念を押された。


「えっイーサンも呼ぶの?」


イヴは驚きながら確認するとグレッグが溜息を付きながら


「それ、イーサン君が聞いたら悲しむよ?」


と困った表情をしながらイヴを窘める。


「ごめん、家族でご飯だと思って少し驚いただけ」


「…。イーサン君もほぼ家族だよね?」


グレッグの言葉にイヴは少し間を置いてから


「家族?ではないでしょ?恋人?なのかな?」


またイヴを注意しようとするので少しビビりながら上目遣いで許しを請う

グレッグは小さく溜息をついた後、肘を付きながらこちらを見ている。

以前は腰まであった長い髪は今は肩から少し出ているのを一つにまとめていた。グレッグの奥さんが髪を伸ばしたままがいいと言っているらしい。


奥さん(ケリー)大好きなグレッグは少し面倒だけどその言葉通りに髪を伸ばしている。

以前はもっと儚いイメージだったが、奥さんの愛情に包まれているのか幸せオーラが溢れている。


その儚いイメージが以前のイーサンと重なっていたのだが、今は両方とも違うイメージになったなとイヴは思った。


グレッグは幸せオーラ満開男に、イーサンはなんかギラギラと幸せそうな感じかな?

まぁ、幸せなのはいいことだよね。


「イヴは、今幸せなの?」


イヴはグレッグの言葉に驚くそして言葉を選んでいると


「ほら、色々あっただろ?つらい時期は一応乗り越えられたみたいだけどイーサン君という彼氏がいるのにほら…。その…。」


もちろんグレッグもイヴが一夜の恋を楽しんでいる事を知っていた。

いい大人だし兄としては何も言わないスタンスでいたらしい。


「どうしてイヴはそんなしんどそうなんだ?」


そっか、私はグレッグの前でそんな表情をしているのか。


「イーサン君の存在がイヴを不自由にしているのかい?だったら一緒に住む必要なんてないんじゃないかな?」


グレッグの指摘は適切だった。

イヴは返す言葉が見つからない。

甘いカフェオレを一口飲むと


「昔は、人肌恋しいときに適当に相手を見つけたりしてたけど、今は当たり前のように朝起きると隣にそういう存在がいるのよ。それだけで幸せだと思わなきゃね」


イヴの言葉にグレッグは眉をひそめる。あまり良い回答ではなかったみたいだ。


「でも、あいつら(両親)の様に周囲が見えなくなるほど相手に落ちるタイプではない事にどこか安堵している自分もいるの」


イヴはカフェオレを再び飲むと


「あんなのにだけはなりたくない」


イヴの両親に対する感情はどこまでも拗らせていたのだった。

すると、グレッグは気まずそうにコーヒーを飲むと


「でも、僕は両親の気持ちが少しだけ本当に少しだけ分かるような気もするんだよ」


「えっ?」


イヴは思わず厳しい口調で相づちをした。


「ケリーに出会って、恋人になって家族になれて今は彼女しか目に入らないよ」


「でも、グレッグは私が大変な時に傍で支えてくれたし。あいつらと一緒じゃ無いと思う」


「イヴ、ありがとう。そうだね、さすがに両親みたいにならないように反面教師にしているよ。あんな連鎖(育児放棄)は続いてはいけないからね。そして、ケリーも僕が暴走しないように制御してくれているところもあるのかもしれないしね」


奥さんを思い出して幸せそうに微笑むグレッグを見てそんなものなのかなとイヴは思う。

しかし、グレッグと自分はまた別物だとも思った。


「それは、グレッグ自身もしっかりしてるしね。私の場合はグレッグと同じように誰かを一途に好きになってしまったらケリーさんみたいに止めてくれそうな相手じゃないし」


イヴの言葉にグレッグは笑う


「そうだね。確かにイーサン君なら一緒に隣の国まで爆走しそうだよ。」


グレッグは爆走しているイーサンを思い描いたのかずっと笑っていた。


それから、二人でカフェを出るとそれぞれの家へと戻った。


 イヴは家に帰りながらぼんやりと考えていた。

イーサンと同棲はしているが、いわゆる大人の関係にはまだなってなかった。

ただ一緒に眠るだけ。


寝ている間にピアスを付けられたことに根を持っていたこともあるし、深い愛情を誰かに注ぐという勇気がまだ持てなかった。

これ以上気持ちを持っていかれたくなかったのだった。


考えてみれば酷い事をしているのかもと思ったりもするが、イーサン本人はあまり気にしていないようだった。元々人に興味をもつ気力もなかった為一気に進めるのも良くないと考えているらしい。


 ただし、イヴが自分以外の誰かと親しくなる(大人の関係)のは絶対許さなかった。

恋人同士の関係なのだから当然といえばそうなのだが、イーサンもたまには息抜きとか欲しくないのかな?とイヴは思ってしまう。ほら、男性だしね?


悶々と考えているうちに自宅に着いた。

鍵を開けて部屋着に着替えてとりあえずソファーに体を預けながら


「この状況って自分が学生の時の恋人同士よりも幼い関係だよね~」


と伸びをしながら呟いていると


「ただいま~。ん?イヴどうしたの?すっごく縦長になってるぞ?」

とソファーで体を伸ばしている場面をイーサンに思いっきり見られイヴは慌てて元の姿勢に戻ろうとしたが急に戻ったので少し筋をピキーン!と痛めてしまった。


「いった~い」


変に伸びた筋の場所を自分で撫でながら少し涙目になっているイヴに駆け寄ったイーサンは

「えっ?大丈夫?ここ?明日仕事行ける?」


「う〜大丈夫。こんないかにも運動不足ですって言う理由で休まないよ。隊長に訓練増やされるもん!」

イヴの言葉にイーサンもそうだね~。僕も鍛錬不足かもって思うわ~って笑いながら答えた。


そして、イーサンに優しく撫でてもらった場所は自分がするよりも早く痛みが消えた気がした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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