表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/23

平和な日々を送っちゃっています

 フーフーとまだ熱いコーヒーを人肌に冷ます。視線を感じ前を向くと幸せそうに肘をつきながらこちらを見つめてる人がいる。

仕事場では綺麗にヒト化しているが、プライベートでは自分に合わせて獣人化している。

前は瞳の色が見えないぐらいの厚みのある眼鏡をかけ髪もお手入れはしているが髪型は無頓着に伸ばしっぱなし。それが、子育てに追われていた自分の兄と雰囲気が似ていてどうしても苦々しく思う時もあったが…。


イヴはもう一度目の前にいる男性を見る。

あの眼鏡は伊達だったのか!今は裸眼で髪も襟足までさっぱりと切り揃えられている。

前髪が少し長いのか時々かきあげると遠くの方で「キャー」と黄色い声援が聞こえてくる。

多分本人にも聞こえていると思う。わざとか?


イヴの視線はそのまま男性の耳元へ

自分と同じピアスを片方だけゆらしている。男前はそれだけでも絵になるんだな~と感心していると。


「早く飲まないと遅刻するぞ?」


肘をついている男前ことイーサンが優しくイヴに声をかける。


「…。ウン」


イヴがコーヒーを飲もうと下を向くと自分の耳元でシャリっとピアスが揺れる音がした。

まだ慣れていないから気になる。


「大丈夫、イヴのピアスも似合っているから」


一体何が大丈夫なのだろうか。イヴは小さく溜息をつくと自分好みのぬるさになったコーヒーを飲み干した。


 身支度を終え玄関のドアの鍵を締めるとイーサンは当たり前のようにイヴの前に手を出す。イヴもイーサンの手を取るとそのまま二人で歩き出した。


「マーシャル隊長は今日も宰相様の護衛ですか?」


イヴは無言になるのも気まずいのでイーサンの今日の仕事の予定を聞いた。

イーサンは今日の予定を思い出しているのか斜め上を向きながら少し考え込む


「そうだね。午前は俺が付いて午後はグラントが宰相殿に付くかな」


さすがに外では甘すぎる雰囲気を出さないイーサンだった。


「午後は、ディーが担当なんですね~」


イヴは何気にイーサンの同僚を愛称で呼ぶ。

隣を歩いていたイーサンが突然立ち止まった。

イヴは手をつないでいるのでクイっと前のめりになる。


「うわっ急に止まると危ないじゃないですか!」


イヴはイーサンに抗議するが

「えっ?イヴはグラントの事ディーって呼んでるの?なんで?」


そりゃ~あなたが乗り込んでくる前まで二人で飲んでいたからでしょう。と正確に伝えたかったが多分それを言うと一日拗ねてしまいそうなのでイヴは言葉を言いあぐねる


自分だけだったらいいんだけど多分職場に持ち込むだろうな


イヴはグイっとイーサンとつないでいる手を引きながら


「確かにイーサンと同僚なのだとしたら私よりも階級が高い可能性がありますね。でも残念ながら彼にはデイビットとしか言われてないので他に呼び方がないんですよ」


だからさっさと職場に向かいましょうとイーサンに歩き出すように伝える。

イーサンは納得しかねぬのかプイっと横を向きながら


「彼は、私が宰相殿付きの護衛になるまえから担当だった、デイビット・グラント隊長だよ。私のイーサン・マーシャル隊と交代制で警備をしているんだ」


「二組ってローテーション大変そうですね?」


なんとなくイヴがイーサンに尋ねてみると


「ん?イヴもカーウェル隊長になって一緒にシフトを組むかい?」


嬉しそうにイーサンが尋ねるとイヴは首を横に振って


「いいえ、大丈夫です。王城の仕事って色々お約束が大変じゃないですか?常にヒト化しているのもなんだか堅苦しく感じたので、警邏の方の募集に応募したんですよ?あと、平民ですしね。ストレスで即退職してたかも」


「そっか〜。んじゃ、裏を返せば近衛でも入ることはできたんだ?」


いつの間にか横並びであるいていたイーサンを見上げながら


「さぁ〜どうなんでしょうね?私自身では分からないですね」


その言葉にそれもそうだよなとイーサンも同意した。


それから二人はお互いの定時の確認をした後通用門で別れた。



イヴは手を振ってイーサンを見送った後そのまま警邏の棟に向かう。

もうすぐ朝礼なので先に隊長室に向かおうかと足を向けた時


「おはよぉ~イヴぅぅ~」


元気な同僚がこちらに向かって歩いてくる。その隣には先日副隊長になった同僚の旦那が恥ずかしかったのか周囲をキョロキョロ確認しながら付いてきた。


「ジーン、おはよ~。ホープ副隊長おはようございます」


イヴは、同僚のジーン・ホープと上司のダニエル・ホープに挨拶をした。


「どうどう?晴れてお付き合いを始めたイーサン副隊長は?」


「ん?特に何も変わらないよ。後、マーシャル隊長だから気を付けた方がいいよ。公の場所で間違えたら面倒だよ」


イヴはジーンに軽く注意をすると


「そうだぞジーン、近衛に変に目をつけられると面倒だぞ」


ダニエルもイヴと同じことを言った。


「えへへ、大丈夫その時はイヴにお願いすれば一瞬で黙殺よ!」


「ジーンの開き直り方が怖いよ」


イヴは苦笑いをしながら言った。

(そして、イーサンに何かお仕置きをされるのは私なんだろうな…。)

と遠い目をした。


「ジーン、元上司をそういう風に使わない方がいいと思うぞ」


ダニエルも苦笑いをしながら言った。

(そして、マーシャル隊長にカーウェル関連で無理難題を言われるのは自分なんだろうな...。)と遠い目をした。


イヴとダニエルが二人とも遠い所に行ってしまったのでジーンはがんばって呼び戻した。


「えー二人とも朝から意識がどこかにいっちゃってるよ!さあさあ、今日もがんばって一日お仕事をしようね!」

ジーンは今日も朝から絶好調だった。


皆で朝礼を受けてから、イヴとダニエルは隊長室に向かった。

基本的に二人になると仕事の話しかしない。仲が悪い訳ではないがダニエルも会話は得意ではないタイプに見える。でも、ジーンと毎日会話とかしてるのかな?とイヴは疑問に思う。


 ダニエルの少し後ろを歩いているイヴの視線が気になったのか前を向いたまま


「…。イーサン隊長とは上手くやっているのか?」


珍しく話しかけてきた。


「う〜ん。どうなんでしょ?普通ですかね?」

「そうなのか。カーウェルを見ているとこうなんて言うんだ付き合い始めの情熱みたいな熱を持っている感じがあまり見受けられない?な?」


「そうですね。基本的に決まった相手とお付き合いするのが初めてに近いかもしれませんね」


イヴの言葉にダニエルは驚き、思わず立ち止まって振り向いた。


「えっ?そうなの?」


「えっそうですよ?」


イヴも一緒に止まり目を見て肯定した。


「ホープ副隊長こそずっとジーン一筋なんですか?」


ジーンはイヴの事を聞いてくるがあまり自分のことは話さない。

イヴの質問にダニエルは一瞬後ずさり再び前を向きながら


「まぁそんなところだな」


へぇ〜一途なんだな〜とイヴが感心しているとそのまま隊長室に着いた。


「ホープ副隊長の恋バナをまた機会があれば聞かせてくださいよ!もちろんジーンも一緒に!」


イヴはドアを開けてダニエルに先に入室してもらいながら尋ねると


「うっうん。まぁ考えとく…。」


と言うと自分の席についた。


「ダニエル、イヴおはよう!って朝から恋愛の話なんてうらやましいな!隊長も一緒にキキタイ!」


イヴ達の上官であるタッカー隊長は書類を片手にペンを片手にイヤイヤしながら会話に入ってきた。ちょっとキモ…。グロテスクであった。


「イヴ、朝から上官を汚物を見るような目で見ないでくれ。変な癖を発症しそうだ」


「タッカー隊長、それ法務課に聞こえたら口頭注意と減給もんですよ」

ダニエルは呆れながらイヴをかばった。


「え~。もう、副隊長とイヴの絡みはお腹いっぱいだから辞めろなぁ~」


「…。イーサン隊長はもう近衛ですし。私には、かわいい妻がいるので大丈夫です」

ハッキリと言い切るダニエルにイヴは賞賛の視線を送った。

心のなかでパチパチと拍手を送る。


「え~、なんか仲間外れ感満載なんだけど」

タッカーは拗ねながら書類作業を再開した。


イヴは、そんなタッカーと今日のスケジュールを確認するダニエルを見るとタッカー隊は今日も平和で良かったとちょっと嬉しくなった。


最後までお読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ