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恋人と晩餐会に行った。

イーサン視点です。

 久しぶりにシンシアの邸に来た俺は懐かしさと同時に言葉で表現できない感情がこみあげてきた。幼少期はよくお互いの邸を行き来していたのを思い出す。

かくれんぼをしてケインズの侍女長に怒られたり、温室で眠ってしまったり。


 まさかシンシア以外の女性と共にここに来るとは


俺は表情を作りながらもケインズ夫妻以外に出迎えてくれていた家令や侍女長に目で挨拶する。彼らはまだ現役のようだった。

多分、お互い困惑しているのだろう。もちろん表情には出さないが。


俺はエスコートされているイヴを確認すると、彼女も口元だけ微笑みながら歓迎を受け入れていた。


 本当に無理させているよな。


貴族にあまりいい印象を持っていないイヴに一番苦手な社交みたいな事をさせてしまって。

でも、心の中ではその罪悪感とは裏腹に喜んでいる自分もいる。


 まるで本当の夫妻として公式の場に呼ばれているみたいじゃないか。


イヴと礼服を着てお揃いのアクセサリーを付けて貴族の挨拶をする。

もちろん、普段の生活もイヴといるのなら楽しいがこうゆう世界も悪くないと思うんだ。


シンシアはせっかくだから温室で夕食を食べようと思うの。

イヴさんは…。堅苦しいのは苦手でしょ?お仕事柄ね?


と早速イヴにマウントを取ってくる。シンシアは一体何がしたいのだろうか?

イヴはシンシアの言葉を素直に受け入れ


「お心遣いありがとうございます。」

とニコリと微笑みながら返していた。


そのやりとりにケネスは顔色を青ざめていた。


シンシアに案内されながら温室に入ると、ちょうど四人で食事をするにはぴったりの机と椅子がセッティングされていた。


それぞれの椅子の後ろに各侍女や従者が待機していた。

一人ずつ対応するみたいだった。


イヴは自分の担当の侍女を一瞬見ると目を見開いていたがすぐに微笑みながら座った。


楽しい晩餐を期待していなかったが、イヴに付いた侍女のミスが酷かった。

イヴだけ違う品を出されたり用意した水をこぼしそうになったり、もちろんイヴはそのまま水を被るようなヘマはしない。先にグラスをキャッチしながら「大丈夫ですよ」と奥歯を噛みしめながら伝えていた。


その侍女は「すみませぇ〜ん」と気の抜けた謝罪しかしない。

あのような侍女は以前はいなかったはず。

抗議をかねてケネスを見ると、考えている事が伝わったのか


「本来ならこのようなミスをする方ではないんですけどね。アメリア、他の人と交代して下がりなさい。」


その言葉にアメリアという名の侍女は頭を下げてそのまま退出した。

その後は侍女長がイヴの対応をしてくれた。

他の指示とか出さなければいけないのに申し訳なかった。


イヴもあの侍女が去って安心したらしい。小さく息をついていた。


シンシアの話は、ほとんど自分との昔話だった。


「恋人と言っても、昔の事は知らないでしょ?」

と嬉しそうにイヴに話しかけた。


普通そんな話を元婚約者(シンシア)から聞きたいとは思う恋人はいないと思うが。


せっかくの料理の味もほとんどしなかった。

料理長が変わったのか?


俺は無味なのをごまかす為にいつもより多めにワインを口にしてしまった。

となりでケネスが慌てていた。

「マーシャル様、それ以上飲むのは良くないですよ?」


ケネスの言葉を聞きながら、そういえばコイツはシンシアの担当医だった事を思い出した。


「いえ、アルコールは強い方なので」


コイツのフォローされるのはなんか嫌だったので、言い訳をする。

一体何に意地を張っているのだろうか。


イヴも心配そうに俺を見ていた。そういえば、イヴはあまり飲んでいないな。


「イヴ、このワインすごく美味しいよ。飲んでみる?」


俺は思わずイヴにそう問いかけると、イヴは一瞬「えっ」と言う表情をした後、


「では、少しだけ頂きます」


と言いながら俺の近くにいた従者から新しいグラスにワインを注いでもらっていた。

イヴはそのワインを飲む前に香りを楽しみ一口飲む。


「ん?う~ん?」


アルコールに好き嫌いがないイヴが珍しく難しい表情をする。

それを目ざとく見つけたシンシアは


「あ~。それはイーサンが昔から好きな種類のワインなの。遊びに来た時はいつも嗜んでいたわ。イヴさんには少し難しいのかもしれませんね。その…普段飲むことができないですから」


フフフとシンシアは勝ち誇ったようにイヴに話しかけた。

イヴは、その言葉を聞きながらナプキンを口元に抑えた。

味が合わなかったのか?


「私も久しぶりに飲もうかしら、私にもそのワインを頂戴!」

シンシアはイーサン付きの従者に伝えたが


「シンシア、君は飲むのを止めた方がいい。今日はホストとして2人をもてなさないといけないだろ?僕だけだと不安だよ」


といいながらシンシアが持とうとしたグラスをケネスがとりあげ


「代わりに僕が頂くよ」


と言いながらそのワインを飲んだ。

ケネスも頭をかしげながら


「確かに、このワインは不思議な味がするね?」


と不思議そうに感想を言っていた。

食事を終えて後談話室でお茶を頂く流れになったので立ち上がると


「うわっ」


足がよろけてしまう。

イヴがすぐに駆け寄ってきて俺を立ち上がらせようとするがさすがに成人男性を一人で支えるのは無理(しかもドレスを着ているしヒールも履いていた)俺の担当の従者が手伝ってくれた。


「少し休んだ方がいいね。君、このまま客室にお連れして」


ケネスの言葉に「かしこまりました」と従者が伝えるとイヴも付いて来ようとしたが


「イヴさんは一緒にお茶をしましょ?さあ、こっちこっち」

とシンシアが手を引いて強引に連れていく。


イヴは困った表情で俺を見たが

「すぐにそちらに戻るから待っていて欲しい」

と伝えると、真剣な表情で頷いた。

すごく心配しているみたいで、少し嬉しかった。



 イヴと別れ客室に連れていかれると、従者がベッドまで案内してくれる


「こちらで少しお休みください。後でお水をお持ちいたします」

と伝えるとお辞儀をして部屋を出ていった。


いつもならこんな状態にならないのに今日は体調が良くなかったのだろうか

俺は首元を少し緩めさせてもらいベッドで目をつぶることにした。

10分ぐらいでイヴの所に向かわなければ、針にむしろになってなければいいが。


浅い眠りのつもりが人の気配が分からなくなるまで気を失っていたらしい。

髪をやさしく撫でられシャツのボタンが外されている感覚があった。


 イブはこんなに積極的だったかな?


俺は止めろよ。と言うつもりで目を開けると


「ん?どうして?私達婚約しているじゃない?」


自分の上に乗っていたのはさっきまで自分達をもてなしていた

シンシアだった。


俺は焦ってシンシアの手首を押さえ脱がそうとするのを阻止した。


「あの時を思い出すわね。イーサン」


と嬉しそうに、牙を見せながら俺の首元に噛みつこうとした。


「やめろ!お前、何考えてるんだ!」


俺は、声を上げて抵抗するがシンシアも獣人、さっきの手首はわざと捕まる様に仕向けたものだった。


 マジかよ。


俺が必死で抵抗していると


「イーサン!」


と叫びながらイヴが部屋に駆け込んできた。

そして、俺とシンシアの状況を把握すると


「この、ドロボー狼!」


と言いながらイヴがベッドに飛び乗りシンシアの肩をぐっと掴みそのままわき腹に一発入れようとした時


「カーウェルさん、止めてください!」


息を上げながらケネスも部屋に入ってきた。


「シンシアは」


「お腹に赤ちゃんがいるんです!!!」


ケネス以外の三人が声を合わせて


「「「えっ」」」と言った。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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