表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/23

職場に復帰しちゃいました。

「おはようございま~す」


イヴは任務と言いつつも一週間タッカーの元を離れていた為書類関係がどうなっているのか不安だった。

皆が大好きなお酒を多めに持っていった。

さすがにお酒は重いのでイーサンにも警邏に一緒に持っていってもらった。

近衛の姿になってイメージが替わっていたのですれ違う何人かの警邏に敬礼で挨拶されると苦笑いしながら声をかけていった。皆一様に驚いた顔をするのでイヴは面白いのを少し我慢していたが肩が揺れていたらしくイーサンに「そんなに俺って変わったかな?」と落ち込んでいたので


「かっこよくなったという事じゃない?」


とフォローするとデレだしたのでちょっと面倒だなと思った。


隊長室にノックし入ると、既にタッカーとダニエルは席に付いていた。

イヴは早いなと思いながら自分の席を見ると


「イヴぅ~。うぇ~ん」


と朝から泣きべそを書きながら書類を整理していたジーンが座っていた。


「おはよ。ってどうしたの?」


「え〜ん。隊長とダニエルだけじゃ書類の仕事が回らなくて毎回隊員達でくじ引きを引いてハズレを出した人がイヴの身代わりになってるのぉ~」


イヴは身代わりって…。思いながらもジーンの背中を見ると


『ただいまくじ引き5連敗中』というメッセージと共に書類の指示はコチラ


と書かれている紙を背中に張っていた。


「私の仕事って罰ゲームだったの?」

イヴはショックだったのか立ち尽くしていると、後ろから笑い声が聞こえる


ジトっとした目で振り返るとイーサンがお腹を抱えて笑っていた。


「どうして、書類作業でこんな事になってんの?」


「すみません、マーシャル隊長にはきちんと引き継いでもらっているのですが」


ジーンの夫で副隊長のダニエルが申し訳なさそうにイーサンに謝る。

イーサンは手を横に振って


「いいのいいの、ダニエルを責めているわけではないから。ただ」


タッカーの白けた視線、ジーンの泣きそうな表情、ダニエルの困惑した顔

をみたイーサンは


「タッカー隊は今日も平和で良かったね」


としみじみ言った。


「イーサン、そんなこと言う余裕があるんだったらこっちも手伝うか?」


タッカーが呆れながら言うと


「だったら、宰相殿の許可をもらってきてよ。俺はイヴの近くにいられるなら喜んでお手伝いするよ」


喜々として答えるイーサンにイヴが


「大丈夫ですから、今日から私も復帰しますしね。ほらっ、ジーン軽く引継ぎしたら通常業務に戻っていいから」


いいですよね?と念のためタッカーにも確認すると「いいぞ」と返ってきたのでジーンに再度促した。


「私は、書類を仕分けるぐらいしかしなかったよ。逆にこの状態でいいのかイヴが確かめて欲しい」


ジーンの言葉に頷いたイヴは軽く書類を確認すると


「うん、これでいいよ。それとこの背中のやつ外すね」


と言って身代わりのメモを外した。


「あと、これお土産。返ってダニエル副隊長と一緒に飲んでね」


ワインを渡すとジーンはそれを抱きしめながら


「ありがと~。また感想言うわ。じゃあ、私は午前の見回りに早速復帰します!パートナーがいなかったら鍛錬場で体を鍛えるぞ〜。おお!」


失礼しますと言ったと同時に隊長室を出ていった。


一瞬静かになった部屋だったが


「じゃあ、俺も近衛の方へ戻るわ。今日は少し遅くなるから先に夜ご飯食べといて」


イーサンはそういうと、イヴのこめかみにキスを落としてから部屋を出た。


イヴ、タッカー、ダニエルがその後ろ姿を見送った後


「イヴ、本当にイーサンと付き合ってるんだな」


としみじみとタッカーが呟いた。

イヴも頷いた後


「はい、お付き合いさせていただいてます」


と言いながら書類を触り始めた。


タッカーはそんなイヴを見ながら

 確かに、職場に色恋を持ち出すのはよろしくないとは思うが、イヴを見ていると本当にイーサンが恋人なのか分からないんだよな。浮かれてないし…。下手したら、以前の方が浮足立っていたというかフワフワしていたよな。

だからといって夫婦のような落ち着いた雰囲気でもないというか…。


「イヴ、お前、イーサンと共にいて幸せだよな?」


タッカーはふいにイヴに聞くと


イヴはジーンが残していった書類をまとめながら


「…。そうですね。幸せだと思います」


タッカーは本当に大丈夫か?と不安そうにイヴを見ていたが、そのまま自分の仕事を再開した。


イヴは書類をまとめながらふと手首を見ると昨日思い付きでお互いに付けた組紐を見てフッと微笑んだ。

 こうゆう穏やかな思いもいいのかもしれないなこれからどうなるかはちょっと分からないけど


と自分なりの思いをまとめていた。


その微笑む瞬間を見ていたダニエルは、タッカー隊長が心配するほど冷めた関係ではないんだと思った。

 警邏にイヴとお土産を届けたイーサンは、その足で近衛の棟に入った後先に宰相と打ち合わせをしていたデイビッドと合流した。


「おはよ~。イヴちゃん無事に戻ってこれたんだね。」


デイビッドは任務の内容までは知らないので無事に帰還できた事を喜んでくれた。


「ああ、と言ってもそこまで危険な内容では無かったみたいだよ」


「それは良かったよ。イーサンが急に元気がないから体調が悪いのかと思ったら、恋人が出張に行ったのが原因って聞いて驚いたよ」


デイビットは肩をすくめながら話した。


「まあまあ、イーサンもせっかく両想いになった恋人と離れるのが寂しかったのでしょう」


宰相はイヴの任務内容を知っているので、イーサンの肩を持った。

任務を発令したのは自分だったのでデイビットに対して少しだけ後ろめたかった。


「さてさて、今日私を守ってくれる騎士様はどちらなのかな?」


宰相は話題を替えるのは良かったが表現の仕方は宜しくなかったらしい。

周囲で働いている部下たちが一瞬固まりこちらをチラリと見ている。


「宰相殿、そういう言い回しは本当に止めてもらえませか?」


イーサンは真剣に注意した。前回のブレスレットお揃い事件から誤った情報が王宮の主に宰相室周辺で発生しているからだった。


「え~、私は別にいいけどね」


デイビットはあえて否定せずに喜んでいた。


「大丈夫だ、お前も含まれているから余計に問題になっているんだろ」


イーサンはこめかみを押さえながら話す。


「えっじゃあ、三角関係ってやつ?」


デイビットは面白くなってもう少し深く聞いてみると


「…。揉めているんじゃない。()()()()になっているんだ」


「あ~3〇ね」


デイビットは明け透けに表現すると、さすがの宰相も顔を顰めた。


「どこの世界に朝の引き継ぎでそんな言葉を使うやつがいるんだ」


と持っているペーパーナイフでデイビットが机に手をついている人差し指と中指の間に刺す。


「うわっ。すみません!えっと違う表現にすると…。」


すぐさま手を机から離すともう片方の手で指をさすった。


「その話は本当に止めよう。周囲の人たちの仕事の手が止まっている」


イーサンは呆れながらデイビットと一緒に見渡すと確かにほぼ全員が固まってこちらを凝視していた。

はたから見ると見目麗しい男性三人が楽しくそのような会話をしているのを見逃すはずがなかった。


「あっ宰相、実は私も休暇が欲しいのですが」


イーサンが突然思い出したように宰相に言い出す。


「ん?珍しいね。恋人は帰ってきたんでしょ?」


宰相もからかうように言うと


「恋人の為に取ったライセンスが切れそうなので更新にいかなくてはいけないのですよ」


「あ~。あのケアしていた時のやつか。そうだね。イヴちゃんが(私が)入っていた(経営している)病院だったよね」


イーサンが以前イヴをサポートするために取得したライセンスの更新場所がちょうどイヴの入院していた病院で行われていた。


「ん?そうなの。更新しなきゃいけないんだ」


デイビットが疑問に思ったので尋ねると


「日々新しい情報や研究がなされているからね。これでも数年に一度でいいから助かるよ。でも今のイヴに必要不可欠って訳じゃないだよ。」


宰相はふむと頷くと


「じゃあ、僕が公務がなくなるべくここにいる時間が長い日の直近に休暇を取ってね。別に他の近衛隊でもいいんだけど、まだちょっと任せるのは難しいかな?カッセル隊あたりなら半日なら大丈夫かも」


「分かりました。イーサンの休暇の半日はカッセル隊に警備してもらうように要請します。」


すると、イーサンが難しい表情をしながら


「カッセル隊ってダナム(ウォルター)がそっちに戻ったよね?」


と確認してきた。

宰相とダナムの相性はあまりよくないのではと考えていると


「えっ、ダナムなら移動になったよ?」


デイビットが知らなかったの?という表情で答えた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ