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新たな幕開け

その老人はレイ達三人を見つめ、自己紹介を始めた。

「私はエルドリッチ・ソーサラー。この学園の学長を務めている」

エステルが一歩前に出て、丁寧に頭を下げた。「お会いできて光栄です、ソーサラー学長」慌ててレイとミアも続く。


「ふむ」ソーサラー学長は満足げに頷くと、三人をじっと見つめ、そして優しく言った。

「メリッサ殿から簡単に君たちのことは聞いている。さて、クラス配置について話そう」

レイとエステルは身を乗り出して聞き入った。


「レイくんとエステルさんは、二年生のクラスBに配属することになる」学長は言った。「様々な個性の生徒がいるクラスだが、みんな実力のある者達だ」

レイとエステルは顔を見合わせ、少し緊張した様子だった。


次に学長はミアに向き直った。「ミアちゃんは、学園寮に隣接する小等部に通ってもらうことになる。年齢的にそちらの方が適切だろう」

ミアは少し不安そうな表情を浮かべたが、勇気を振り絞って頷いた。


「続いて寮の部屋についてだが」学長は続けた。「エステルさんとミアちゃんは同室にしたよ。女子寮の三〇五号室だ」

エステルは安心したように小さく頷いた。

「レイくんは男子寮の二〇四号室になる」学長は言った。

レイは静かに頷く。

「さて、何か質問はあるかな?」学長が三人を見回す。

三人は顔を見合わせ、レイが答えた。「いえ。大丈夫です」


「では、説明は終わりだ」学長は立ち上がった。「明日から君たちの新しい学園生活が始まる。基礎から応用まで、しっかり学んでほしい。頑張りたまえ」

レイ、エステル、ミアは深々と頭を下げ、学長室を後にした。


廊下に出るなり、レイが深いため息をついた。「いよいよ始まるんだな」

エステルが冷静に応える。「ええ、そうですね」

ミアは少し寂しそうだった。「私、お兄ちゃんたちと離れるの……?」

レイはミアの頭を優しく撫でる。「大丈夫さ。寮ではエステルと一緒だし、すぐ近くにいるからな」

ミアは小さく頷いた。


三人は新しい環境への期待と不安を胸に、これからの学園生活に思いを馳せながら、夕暮れ時の廊下を歩いていく。

「なんか、疲れたな」レイが背伸びしながら言う。

「随分歩いた後ですからね」エステルが同意する隣でミアだけは、元気そうに跳ねるように歩いていた。


三人は中庭を横切り、寮の建物に向かった。やがて、女子寮と男子寮の分岐点に到着する。

「じゃあ、ここで別れだな」

「では。明日の朝、またここで待ち合わせましょう」

「ばいばい、お兄ちゃん」

三人は別れを告げ、エステルとミアは女子寮へ、レイは男子寮へと向かう。


レイは階段を上がり、自分の部屋番号を確認しながら廊下を進んだ。「えーっと……ああ、ここだ」

適当にノックをしてから、ドアを開けると。部屋の中には一人の少年がいた。

彼は机に向かって何かを読んでいたが、レイが入ってきた音に振り返った。

「あ、君が新しいルームメイトかい?」と少年が立ち上がる。「僕はライアン・スペルフォージ。魔法工学専攻の二年だ」


レイは少し緊張しながら答えた。「えっと、はじめまして。俺はレイ。今日から編入することになったんだ」

ライアンが興味深そうに尋ねる。「へえ、編入生か。何を専攻に入ったんだい?」

「えっと……実は、まだよくわからなくて」

ライアンは理解したように頷いた。

「そっか。まあ、ゆっくり決めればいいさ。ここには主に二つの学部がある。純魔法学部と、僕がいる魔法工学部ってやつさ」

「純魔法と、魔法工学……?」レイは言葉を噛みしめるように繰り返した。


その後、ライアンはレイに学部について説明した。

純魔法学部は文字通り、魔法そのものを深く学ぶところで。理論から実践まで、魔法の本質を追求する。故にか魔法の才能がある者が多いという。


一方、魔法工学部は魔法を物に応用する方法を学ぶ学科だった。武器や道具に魔法を付与したり、魔法のアイテムを作ったりするといった所だ。


レイは何度も頷く。「へえ、どっちも面白そうだな」

「まあ、正直言うと、純魔法学部の方が少しばかり格上だと思われてるんだ。でも、僕は実践的な魔法の応用に興味があったから、今の学部を選んでる」


レイは興味深そうに聞いた。「そうなのか。でも、どっちも大切な分野だよなぁ」

ライアンが嬉しそうに頷いた。「君はどっちに興味がある?」

「うーん、まだよくわからないけど。純粋な魔法について学ぶ必要があるかもな。まぁ、これから色々学んでみて決めようと思う」

「そうだね。急ぐ必要はないさ。ゆっくり考えればいい。それより、荷物の整理を手伝おうか?」


レイは感謝の気持ちを込めて頷いた。「ありがとう、助かるよ」

そして二人は談笑しながら荷物の整理を始めた。

荷物の整理を手伝いながら、ライアンはレイに学園のシステムについて説明し始める。


「そうそう、この学校のシステムについてまだ聞いてないよね?」ライアンは本を棚に並べながら言った。

レイは興味深そうに聞き入る。「うん、まだよくわからないんだ」

「二年生までは純魔法学専攻も魔法工学専攻の学生も、一緒に基礎的な授業を受ける」ライアンは説明を続けた。「そして、特別授業の時だけ別々の教室に分かれるんだよ」

「へえ、そうなんだ」レイは驚いた様子で言った。


ライアンが続けた。「そう。それで三年生からは、どちらかの学部を選んで専属のクラスに入ることになる。だから、二年生の間にじっくり考えて決められるわけさ」

「なるほど」レイは理解した。

「ところで、ライアン。俺はBクラスらしいんだが。君は何クラスなの?」

「そうなんだね!僕もBだよ!」ライアンは笑顔で答えた。「じゃあ明日は一緒に教室に行こう」


翌朝、レイとライアンは男子寮を出た。女子寮の前では、エステルとミアが待っていた。

レイが「おはよう」と声をかけ「彼は、ルームメイトのライアンだ」と、さっそく仲良くなった友人を紹介する。

しかしライアンはガチガチに固まっていた。彼の目は、エステルに釘付けになっている。


朝日に照らされた銀色の髪が風に揺れると、ライアンは息を呑み、頬は紅く染まっていた。

「あ、あの…」ライアンは顔を真っ赤にし、どもりながら言葉を絞り出す。

「ぼ、僕はライアン・スペルフォージです。よ、よろしく」

エステルは冷静に、しかし優雅に頷いた。「エステルです。よろしくお願いします」

昨夜のレイとのスムーズな会話が嘘のように、普通に言葉を紡ぐことさえ難しそうだ。


四人は一緒に歩き始め、まずミアを小等部へ送った。

校門の前で、ミアは不安そうな表情を浮かべ、レイの袖を軽く引っ張る。

「お兄ちゃん……私、ちゃんとやっていけるかな」彼女の声は小さく震えていた。

レイは優しく微笑んで、ミアの頭を撫でた。「大丈夫だよ。ミアは強い子だもん。新しい友達もきっとできるさ」

エステルも珍しく柔らかな表情を見せ、「なにかあれば、すぐに駆け付けます」と付け加えた。


ミアは深呼吸をして、勇気を振り絞ったように頷いた。「うん……行ってくるね、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

彼女が小等部の校門をくぐる姿を見送りながら、レイの胸に小さな不安が芽生えた。

その後、レイ、エステル、ライアンの3人で教室へ向かった。ライアンは相変わらずエステルの存在に圧倒され、ぎこちない様子で歩いている。


教室のドアを開けると、そこには思いがけない人物の姿がある。それは昨日遭遇した三人の魔法剣士だった。



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