壊れた人形を貴方は愛せますか?〜歪んでしまった想い〜
※サラッとお読みください
誤字脱字多かったらすみません!
今日は私の両親であるベナート伯爵夫婦が来るらしい。私は闇の影で黒いドレスを作り身に纏う。マーメイドドレスにスリットが入っている体の線が分かるドレスだ。
最初に用意されたドレスでは動きにくく、いざという時身が守れない作りになっていたからだ。
「ティーゼ!!無事で良かった……何だその格好は!?はしたない!!」
「お姉様ったら、まるで娼婦の様な格好。異界ではそれが普通なの?」
「ナーシュ様が長年あなたを取り戻そうと尽力なさってくれたのに、みっともない格好はよしなさい!!」
「ナーシュ様、ティーゼも生きて帰って来た事だし、シリルを婚約者にしてもらえないでしょうか。見たところティーゼは異界に染まってナーシュ様の隣に立つのには相応しく無い」
「ごちゃごちゃ、うるさいなあ。今すぐ殺したい気分なんだけど」
影をテーブルに叩きつけて割る。私の言動と行動に脅えを見せる三人。そりゃそうだろう、魔法を使いこなせていなかった時とは違い、今は簡単に自分の意思で使えるのだから。闇の魔法の性質は静寂と破壊。あの世界で私も色々と人間の汚さを学んだのだ。そのおかげか私はこの力を使いこなせる様になった。
「テ、ティーゼ!!親に向かってなんて事を言うのだ!!」
「そうよ、ティーゼ!!育ててもらった恩も忘れて親を脅すなんて」
「お姉様、野蛮で怖いわ。ナーシュ様の事を解放してあげて?」
ああ、本当に面倒くさい。
私は影で父親と名乗る男の太腿を貫き、母親と名乗る女の首を絞め、私に似た少女には影で作った無数の蛇を巻きつける。
「ぐあああ!!」
「カハッ……」
「きやああああ!!蛇が!!ナーシュ様助けて!!」
助けを求められたナーシュ様は動こうとはせず、傍観しているようだ。
「育てられた恩ねえ。だったら私の親はクロだってわけか。ナーシュ様?どうする、婚約破棄しても私は全然平気だけど。生きてく術もクロに教わったし」
「いや、ティディ。君との婚約は絶対に破棄しない」
ナーシュ様も何をそんなに拘っているのだろう。初恋でも拗らせたか?もう初恋だったらしい『ティディ』はいないのに。だから余計拗らせてるのか。
そんな事を考えながら影に返しを作り、わざと痛いように父親と名乗る男から影を引き抜く。母親と名乗る女からも影を消してあげる。でも、私と似た顔の少女はどうしよう。叫び声を上げながら慌てふためいてる姿が異様にムカつく。まるで私がそうしているみたいだからか。
殺すか。
そう思った瞬間ナーシュ様に手を取られる。ナーシュ様の首には影が突き刺さる寸前だ。いや、少し血が出ているから刺さっているな。
「ティディ、もうこの辺で止めよう。君が思う事があるのは分かる。だが、やり過ぎだ」
「ん〜?私が思うことはゴミがごちゃごちゃと煩く騒ぐから黙らせたいなあって事?」
「ティディ……」
「はいはい、分かりましたよ〜。ナーシュ様には家に置いてもらってる立場だし、部屋を汚して迷惑をかけるのは止めますよ」
少女、シリルの蛇も消してやる。
「ナ、ナーシュ様!!こんな化け物の味方をするのですか!?」
父親と名乗る男が本心を剥き出しにしてナーシュ様に詰め寄るが、ナーシュ様は顔色を変えず淡々と答える。
「ティディが異界に飲み込まれた後、貴方達がしたことは上辺だけの心配と、私の婚約者にはシリルをとそれだけだった。何一つティディの心配などしていなかった。シリルも姉のティディが『異界で幸せに暮らしてると良いですね』と宣う始末だ。誰も、何も知らない世界に放り出されてティディが必死で生きていたというのに!!」
ナーシュ様の言葉に思わず笑ってしまう。私が思っていた両親の行動が当たっていたからだ。クロにも『毒親なんてさっさと忘れろ。承認欲求なんざ糞食らえだ』と言われていたので何一つ傷つかない。
「あははははは!!!!まあ、最初は暴力も振るわれて大変だったけど、クロに教わって人を殺すようになってからはそれなりに楽しかったよ?」
まるで玩具を壊す感覚で人を殺してきた。最初は数を数えていたが、三桁を超えたあたりからは面倒でやめたが。
シリルが涙を溜めて私を見つめてくる。怯えたようにシリルは私に言った。
「ひ、人殺し!!化け物!!」
私と同じ顔でそんな事を言うものだから、あまりにおかしくて笑いが止まらない。
「何がそんなに面白いの!?」
「いやあ、同じ顔をしてるのにこんなにも違うのかと面白くて。やっぱり育ての親が違うとこうも違うのかあ。そうだよ?私は人殺しの化け物、だから簡単に貴女達も殺せる」
「ヒッ!!」
怪しげに笑いながらシリルの首を優しく掴む。
「ティディ!!ベナート伯爵、婚約者は変わらずティディだ。さあ、帰ってくれ」
「いつか後悔しますぞ!!」
ベナート伯爵達は憤慨しながらも、私をみて怯え、足を引きずりながら帰っていった。私はソファに沈み込むように座り、足を組む。
「心配してるなんて、やっぱ嘘じゃん」
「すまない、あの時は使いを出す理由を付けなければと思って咄嗟に……」
「まあ、ある程度は予想してたからいいよ」
ああ、でもやっぱりあの煩い玩具を壊してしまえば良かった。さぞや楽しかっただろうに。拷問もクロに教わっていたから完璧だ。
「ナーシュ様。偉いでしょ?あの玩具達を壊さなかった私って。ねえ、こんな私を貴方は愛せる?」
蠱惑的に微笑み、ゆっくりとナーシュ様の首に影を巻きつける。するとナーシュ様は愛おしそうに私の影をなぞりゾッとする様な笑みを浮かべる。
「これで、君は私だけのティディだ」
お互い歪んだ笑みのまま口付ける。
どうやら歪んで育ったのは私だけではないらしい。
お読みくださり有難うございます!