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プロローグ



 正神界

 それはこの世の礎を創り世界を産み出した正神とその側仕えである副神が棲むとされる世界


 邪神界

 それは人の世の営みに大いなる影響を与える邪神が棲むとされる世界


 正神は偉大なる恵みを齎し、副神は人々が恵みを受けるに相応しい器として育む。

 しかし、邪神はそれらとは色の異なる存在だった。

 個としての感情より己の役割を優先する正神達と対照に、邪神は各々の気儘に行動する。人の感情や意志による言動を面白がり、正義であろうが悪であろうが気まぐれにそれらに加担する。世の歴史はそうした邪神の存在の影響を多大に受け、悪が何世紀も蔓延る暗黒の時代もあれば、ひとつの正義が支配する眩い時代も存在した。

 正神は邪神の気儘な態度を嫌い、邪神もまた正神らの機械のような眼差しをつまらなく思った。

 やがて正神と邪神は対立し、互いに触れ合う機会はほとんど無くなっていった。

 しかし、いつ如何なる場合にも、例外というものが存在した。


「レン・フリート。聞こえますか」


 優しい女神の声が、抱き抱える幼い神の耳に届く。しかし、産まれたばかりの幼い神にはその言葉の意味を理解できなかった。ただ聴き馴染んだ声に安らぎと喜びの声を上げた。


「ああ。私の可愛いレン・フリート。それが(あの人)が最期にくれた私達の宝の名」


 女神は足元の揺り籠に我が子を入れ、目の前を流れる大きな川に浮かべた。


「愚かな私達を許して。正神である私と邪神である貴方の父は、本当ならば子を為すことなど許されぬ身。道ならぬ恋であの人に、そして貴方にも今不幸な運命を背負わせてしまっている」


 幼いレン・フリートは意味を解さない。ただただ母親の声に反応して無邪気に笑っている。その姿を見た女神は、微笑みながら涙を頬に零した。


「私ももう行かなければなりません。己の罪を償わなければ。それでは、私の最後の言葉をしっかりと胸に刻んでください。今は分からなくとも、貴方が成長し、その意味を理解した時、貴方に託された使命を全うするのです。そうすれば、人としての生を終えた貴方はきっと、正神界に受け入れられることでしょう」


 女神は揺り籠から手を放した。川の流れに流され揺り籠はどんどんと下流へ流れていく。


「人の身となりて、人の世の営みを正しなさい。悪しきを挫き、正しきを助けるのです。そして、邪神が忌み嫌われるこの世界を、変えて……」


 流されていくレンの耳には、それ以上聞こえなかった。レンは川に揺さぶられ、いつしか眠りに就いた。夢の中で母の言葉を反芻しながら。


物語は更に10年の時を経て始まる。

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