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「どうぞ」
「あ、りがとうございます」
「改めまして僕はシオン。こっちは僕の補佐兼騎士長のセオリト」
「……どうも」
鉄仮面ことセオリトが真緒とシオンの前に淹れたての紅茶を置く。
ぎこちないお礼を言ってしまうのは未だ彼に対して慣れていないから。表情が全く変わらないので何を考えているかが分からなさ過ぎるのだ。
(でもセオリトさんが淹れてくれた紅茶は美味しい)
「どう?落ち着いてきましたか?」
「まぁ……なんとなく。お話しを聞いたところではここはまず日本でも、そもそもここは地球でもないんですよね?」
そう、ここは地球とは違う星。というより異世界といった方が正解に近い。
新界と呼ばれるこの世界は地球である地球に存在するありとあらゆる物語を管理しているそうだ。
争いはなく、とても平和で地球に行くには鏡をつかって行き来をしているそう。
(だからあのとき鏡が光ったわけね)
「物語を管理している、って正直必要性があるのって思ってませんか?」
「あー……ぶっちゃけるとそうですね」
まさにそう思っていたところでした、といった考えが顏にかなり出ていたのだろう。シオンは笑みを浮かべているが逆にセオリトからは不機嫌なオーラが放たれていてかなり怖い。
「……マテリアの物語は遥か昔から存在している。童話や神話、戯曲や映画に漫画にラノベに官能、小説など媒体は様々あります。そしてそれらは良くも悪くも人々に多大な影響力を与える。それこそ性格や価値観、夢や想いも全てに」
(ラノベも含まれるんだ……)
確かに漫画を読んで漫画家になりたいって思ったことが真緒にも昔あった。お姫さまに憧れを抱くのだってそういった物語を読んだからこそである。セオリトの言うように影響力はとても大きい。
「そう。だからグラティアは悪意ある物語が生まれないよう、そしてそうならないよう管理すべく存在しているんだ。……その、キミと出逢ったときも視察でマテリアに赴いていた最中のことでして」
(まさしくファンタジー設定こんにちは!っていった感じなのね)
世界の仕組みは理解できた。
そしてシオンはこの世界の王子様でトップなお人。そんな人が真緒を待っていた、といっていた。
お腹が減って行き倒れていたところでただパンを貰っただけ。それだけの理由でまさか恩返しとでもいうのだろうか。
もし本当にそれだけだったらこんなまどろっこしい行為をするとは考えにくい。
(まさかパンをもらったからその優しさに一目ぼれした~……なんてさすがに自惚れすぎだよね)
「じゃああたしをここへ連れてきた理由、それは教えてもらえるのかしら……?」
シオンとセオリトが顏を見合わせる。
(勇者でも魔王でも天使でも女神でも巫女様でもなんでもこいっ!世界の救世主でも、ただの恩返しだってここまできたら驚かないんだから!)
「キミにはある物語を完成させる手伝いをして欲しいんだ」
「物語、ですか?つまり……伝説の文豪の力を受け継ぎし者、とかだったりしますあたし?」
「「全然」」
(でっすよねー!)
「聞いてもらえますか?グラティアに伝わる『はじまりの物語』を」