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1-2 回想と回想

 駅に着いた。


 改札機に定期をかざしホームへと降りていくとちょうど目当ての電車がもうすぐ着くのをアナウンスが知らせた。

  電車に乗り込み、つり革を掴んで車窓から見える外の景色を眺めながら俺は先程の公園のことを思い返した。




 ----朝の陽ざしが池に反射されて光の揺らめきとなって辺りを照らしている。その光が眩しいのか、あるいは恥ずかしさからなのか、生徒会長の嶋吉真祐は目を伏せてしまっている。



 『今日の放課後、ウチに来てくれないかな、、、』


 そう言った彼女もどういう意味で受け取られてしまうのかを即座に理解したようでそんなことを急に憧れの異性に言われて頭の中がパニックにならない訳がない。俺はこの言葉がどういう意味で言われたのかを理解しようと固まってしまった。

 しかし、、さっきから二人して固まってしまっていた。


 「え、・・と、それは、なんでですか?」


 ようやく俺の方から絞り出すように言葉が出た。

 彼女は俺にそう聞かれると、今度は言葉を選びながら慎重に口を開いた。


 「えと、君に相談したいことがあって、、、。それでちょっと家で落ち着いて話たいなと思って、、、」


 こういう風に言葉に詰まりながら話をされていると、なんだか愛の告白をされているようだが、残念ながらそんなことはない。ペットについてのことだ。

 とりあえず彼女が俺に家に来て欲しい理由は分かった。


 「その、、ここで話を聞くことは出来ないんですか?」

 「ごめんね、、まだ言えない。なんていうかうまく話せない」


 ???ペット関連の話ではないのか?

 そう言われるとこちらもこれ以上はもう聞けなくなる。

 他にも聞きたいことはあるはずなのだが、何から聞けばいいのか、どう聞けばいいのか分からくなっていた。

 また、二人して黙り込んでしまったので、彼女は申し訳なさそうに慌てて言った。


 「ごめん。やっぱり何でもない。悪かったね急に呼び止めて。」


 だからといって憧れの女子の家に誘われて、簡単に断るほど俺は甲斐性無しでもない。


 「いえ、行きます。放課後」

 

 つくづく男とは単純な生き物である。今初めて会話した女性の家に二つ返事で行くのだから。

 まぁ、でも話ってのがなんなのか気になるし、なにより相手は曲がりなりにも生徒会長だ。とりあえずは変なことに巻き込まれるようなことはないだろう。

 と、それらしい理由を付けて、俺は放課後に生徒会長の家に行く約束を取り付けた。


 俺が家に来るのを了承すると彼女はホッとして無邪気に笑った。

 

 「あ~よかった。ごめんねびっくりするよね。も~絶対断られると思った。あ~恥ずかしっ」


 そう言いながら彼女は顔を両手で扇いだ。

 

 ようやく落ち着いた生徒会長から放課後の待ち合わせ場所と時間を教えると、鞄を置きっぱなしだと言ってまたさっきの場所へと戻っていた。

 しばらくその背中を見送っていると、そういえばペットについては誰かに話していいか聞きそびれたことに気付いた。

 何も言われていないがとりあえず俺は口外しないことに決めた。----



 そうこう思い返していると電車が駅に着いた。


 駅を出てからしばらく歩くと長い坂が見えてくる。その坂を上りきると我が母校である東若葉高校に着く。


 その坂を上り校門の前に着くと道路脇の雑木林が開けて、この街の都市部が一望できる場所があるのだが、これがなかなかの絶景で隠れた名スポットになっている。

 しかし、そんな名所もこの高校に通っていればもう何度も見ることになるので、ここを通る生徒の多くは見向きもせず歩いている。

 

 そんな俺も皆と同様にいつも通りその景色をスルーしようとしたが、今日はなぜか見入ってしまっていた。

 なんとなくあの景色が儚く思えてしまい、一瞬で崩れてしまうように感じたからだ。


 そこで俺はハッとなって今朝見た夢のことを思い出した。 


 夢の中では、今見える景色からはとても想像できないような惨状が広がっていた。倒壊したビルや至る所に無残に転がっている車の残骸、まるで映画のワンシーンのように現実味のない光景だった。


 俺はそんな世界の終わりのような街中を一人歩いていた。

 すると、そこに一人の女性が現れ少し会話をした覚えがある。

 会話の内容までは思い出せないが、その後のことははっきりと覚えている。

 夢とはいえ信じられないことだが、俺は自らのこめかみに当て、自ら命を絶ったのだ。


 そこで夢は終わってしまったが、なんとも恐ろしい夢だった。

 撃ち抜かれた頭が今になって痛くなった気がする。


 それにしても、あの女性は誰だったのだろうか。夢の中ではお互い面識もあったようだし、俺も彼女をよく知っているような気がするのだが、それが誰かまでは思い出せない。


 あれは本当に夢だったのだろうか、、、。

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