誘拐された娘。 二分の一話
旅日記 4P-5P
山岳地帯を抜けると周囲は既に明るく、小鳥のさえずりが朝を告げていた。
周囲には黄色の花が沢山生えており、この辺りは自然が豊かだと分かる。
[とりえあえず、川かなんか見つけたら水浴びでもするかね。]
旅人は殆ど三日三晩、体を洗っていないため自分でも分かるくらいに匂っていた。
舗装はされていないがしっかりと踏み固められた道を歩きながら、旅のことを考える。
---次の町まで、もう二日ほど歩かなければ着かないだろう。
[そう考えると、乗り物がほしいなぁ。]
今になって、馬を連れてこなかったのを後悔する。
--まあ、あの道じゃどちらにせよ馬は通れないのだが。
------時刻は午前十時を回ったところだろうか。
道を少し右にそれた所からだろうか、旅人は川の流れる音が聞こえため少し寄っていくことに決めた。
荷物を下ろし、服を脱ぐ。
川は浅かったが、旅人は我慢して水浴びをすることに決めた。
[ふぅうう...生き返るわ.....]
川の水は強い日差しで熱を溜め込んだ体をゆっくりと冷やす。
少ししてから、旅人は荷物から真新しい下着と長袖の白いシャツを取り出し、先程まで履いていたズボンと一緒に服を着た。
荷物を背負うと、旅人は、出発した。
--道中は特になにも起きなかったため割愛する
ともかく、二日後に旅人は予定通り町へ着いた。
村への入り口には兵士と思われる人物が二人立っており、その片方に話しかけられる。
[こんにちわ! 旅の方でしょうか?]
[どうも]
目的、名前や滞在期間などを聞かれたので答えると兵士は、
[私たちは貴方を歓迎します! どうぞ出発するときまで楽しんでください!]
と、迎え入れてくれた。
[ありがとう。]
そう、短く答えた。
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[クソッ!!!.....もうそろそろ帰ってきていいはずなのに....あの旅人は大丈夫だろうか....]
[バードン、おちつけって...きっと奴なら大丈夫だろう。]
[どうしてそんなことが言える!! 俺は....俺は自分の目で確かめにいってくる....]
[.......勝手にしろ]
---------この老年の男性、依頼を出した本人は焦っていた。
酒場で落ち着きがないのか、貧乏揺すりを続ける、この男だ。
--男は二週間前に娘をとあるカルトグループに誘拐されていた。
娘はどうやら家への帰り道に酔い潰れていた所を誘拐されたらしい。
そして、自宅には一通の手紙が残されていた。
----******教団 代表 ******
貴方の娘は****に選ばれたため、私たちの村へ向かっている。娘を返してほしければ****ディア(この国で使われている通過)を指定した日時までに届けよ。
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動揺した男はすぐにクエストを依頼することに決めた。
自分で行く、という選択を取ろうと迷ったが、ここから馬を使っても往復6日はかかる旅をこの老体が耐えられるとは考えられなかったからだ、そして、そんな勇気も男は持ち合わせてなかった。
[どうか....どうか娘を...]
人目で大金と分かるディアをクエストカウンターの係員に渡すと男はどこかへふらふらと行った。
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馬で二日間走り、山道をちょうど半日ちょっと歩いた頃だろうか。
男はついにオカルトグループのいる村へと着いた。
この時の時刻は午後8時ほどだろうか。
周囲は既に暗く、月の光でうっすらと建物の形が分かるぐらいだった。
入り口と思われる建築物に向かうと、ある、一人の男性が話しかけてきた。
[****、*****?]
男は笑った気がした。
老年の男は答えた
[おい...........オイッ!!!!]
酷く焦った男は汗を額から滴ながら正気を失ってしまう。
暗闇に移る男の輪郭が笑った。
そしてこの父親、老年の男は結局のところ、捕まってしまったという。
----男たちと同じ服を着た娘を見ながら
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旅人は案内された通りに町のホテルにいた。
比較的小さなホテルだ。(モーテルを想像してもらうと分かるだろう)
しかし、小さいながらもベッド、シャワー、そしてキッチンもついていたので旅人には十分だった。
[ふぅ....結構長いこと歩いてきたが、やっとベッドで寝れるわ...]
男はシャワーをした後、汚れた服を洗ってから
キッチンでちょっとした料理を作っていた。
町の商店で買った卵と缶詰めの牛肉の煮込みを一緒に炒めたものだ。
決して高級なわけではないが、普段の旅人の食事に比べればちゃんと料理だ。
それと同時に、ポットで沸かしたお湯でお茶を作り終えると、旅人は食事を始めた。
[いただきます。]
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真っ暗なモーテルの一室、空になった皿は机においたままで気持ち良さそうな顔をした旅人は眠っていた。
--------明日からは町の観光だ。
著者 レオ