誘拐された娘。 一話
旅日記 1P-4P
ヒーローの旅
山々に囲まれたいわゆる秘境に存在するその村に、ある一人の旅人が向かっていた。
[そろそろつくかなぁ~、さすがにこの時期に遭難でもしたら大変だぞ。]
雨季真っ只中でじめじめとした大気に旅人はうんざりしながらも注意深く歩いていく。
道はもちろん舗装されていなく、気をつけて歩かないと道を見失って遭難してしまう危険性もあった。
そんな道を歩いて数時間、
[流石に少し疲れたから休憩するか。]
旅人は額に汗を滴ながら背負っていたリュックから水筒を取り出し、手頃な場所にあった石に座る。
[はぁ~~]
深いため息をつく旅人。
地図によるとこの道をまだ2~3時間は歩かなければいけないという事実が旅人を急かした。
太陽はまだ真上に位置しているが、鬱蒼と茂った木々は光を遮り、周囲は随分と暗い。
[よし、いくか。]
少し休憩してから、旅人は出発した。
日暮れが近づいてきた頃だろうか、旅人がようやく村の入り口らしき建築物を見つけた。
周囲は少し薄暗く木々に囲まれた村は少し不気味ではあったが旅人は覚悟を決めて村へと"侵入"を開始した。
旅人はナイフがズボンの後ろにあるホルダーに入っているのをしっかりと確認して、村の入り口であろう建築物を迂回する形で山のなかに入っていく。
すこし獣道を進んだ所だろうか、周囲はもう暗く馴れてない人ならばすぐに迷うであろう道に旅人はいた。
[ここからなら村の全貌が見えそうだな。]
そして数分、ちょうど村の右に存在する小さな崖にたどり着いた男は眼下にポツンと存在する村を、匍匐前進の状態で細心の注意を払いつつ、草むらから顔を出した。
[家が、いち、に、さん.....六棟か、あとは.....あぁあれか。]
村のちょうど中央に存在するであろう建築物、まるで誰かを処刑するためにあるような、そんな"もの"があった。
-------この旅人、名前は"レオ"という男がこの村に来たのは理由がある。
男は数日前にとある町に滞在していた時、酒場にあるクエストカウンター(様々な依頼を出したり、受けたりすることができる)で、奇妙な依頼を発見した。
[誘拐された娘を取り返してほしい。
報酬は1000ディア。
場所は、ここから馬で二日、歩いて半日。
仕事は身代金を持っていき安全に娘を送ること。]
報酬は命を懸けるには安く、安全なら割合がいいといったところだろうか。
男は誘拐という言葉にぎょっとしたものの、報酬と仕事内容を見るとすぐに受注する旨を伝えた。
そして身代金と共に、今に至る。
-----[あのお父さんによれば、指定時刻は真夜中で、身代金の置場所は村の中央の...あれか。]
この時の時刻は午後9時ぐらいであろうか。
辺りはもう真っ暗で、村に所々存在する灯りがぼんやりと村を照らしている。
[しかし、身代金を置くだけっていってもあの雰囲気じゃ入るに入れねえよなあ。]
[そもそも俺が襲われる可能性もあるしな。]
様子見をしながらも色々なことを考えていると、とあることに気がついた。
村にある一番大きな家だろうか、そこから数人が檻を持ちながら出てきた。
檻に入ってるのは裸の女、全身に傷があり、その生活の悲惨さが伺える。
そして檻を持っている数人は皆、同じ服を来ていた。
旅人は目が悪くよく見えなかったが、あれが中央に向かっていることだけは理解した。
男はじっと様子を伺う。
-----時刻は、夜十時半を回ったとこか。
中央の建築物の上に置かれた檻を取り囲む形で村人がいる。
そして建築物には薪が投入されていた。
その時、旅人はまだ様子見をしていた。
[あれはぁ...やべえな....]
と、率直に思ったことをこぼす。
明らかに身代金を渡さなきゃ焼き殺されるだろうと人目見ればわかる状況だ。
そして旅人は、村の入り口には村人が一人立っていることに気がついた。
その男は周囲をキョロキョロと見回している。
明らかに旅人を探している。
[ここに住んでるやつらは村総出で人を拐ってんのか....]
旅人は全身の鳥肌が立つのを感じた。
少し時間がたった頃だろうか。
旅人は村の様子見を辞めて準備をし始めた。
[そろそろ、いくか.....]
-------その頃、檻の中の女性は、
[たすっ...たすけてよ....]
[やだっ...こんなの...]
恐怖から来る叫びが漏れる。
人は恐怖の絶頂にいるときに失禁する。
女性は先程からぶつぶつと何かを喋っていたが周囲のものは聞こえないかのようにただ、立っていた。
-------時刻は12時、月が出ていて辛うじて前が見える道を旅人は進んでいた。
村から離れて一時間ちょっと経ったころだろうか。
女性の"叫び声"が聞こえたような気がしたが旅人は気にせず、前に進んだ。
[.....はは.....]
乾いた笑いが意識せずに漏れる。
旅人のバックには身代金と水筒、旅道具などが入っていた。
[娘がバカなら、親もバカってか....ククク...]
旅人の旅は次の町へと続く。
著者 レオ