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003

それから文香といつものようなやりとりを授業をはさみつつ。

 気づけな放課後。

 でっ文香と二人で下校中。


 「でね彼方」


 「うん? なんだ文香」


 適当に会話を流している所で文香が適当な事をぶち込んできた。


 「もう聞いて! 私たちの挙式の日にちについてよ!」


 「よく聞いてないとみるや、そういうありもしない事ぶち込むのは止めろ!」


 「えー聞いてなかったから分からないでしょ?」


 「いくらぼんやり聞いていても、そんな会話の流れならわかるわ!」


 「もう恥かしがちゃて! 新婚プレイは準備オーケーよ!」


 「はいはい遠慮遠慮します」


 「もう二回も言う必要ないじゃない! でもえい!」


 「だから抱き付くなって」


 そういって腕を絡ませ腕に抱き付いてくる文香。

 全く本当に文香は俺にベタ惚れである。

 何でこんなに好きなのか自分でもわからないそうだ。


 「じゃあ話を戻――」


 そう文香が何かを言いかけた時だ。

 ふっとまるでいきなりいなくなったように隣の文香の気配が消えた。

 先ほどまで感じていた腕の温もりさえ。

 俺は驚いて文香が絡ませていた右腕を見た。


 「文香? どこいったんだ文香」


 きょろきょろと辺りを見回しても誰もいない。

 文香どころか先ほどまで歩いていた通行人一人さえいない。

 先ほどまで明るかった空は紫色の雲に覆われ薄暗い。

 道端の外灯は時折点滅しながら光に誘われた羽虫たちは、光の周りを円を描きながら飛び回る。

 見覚えのある光景――。

 二度と見たくない光景――。

 これは今までの夢と同じ光景だ。


 「グロロロロロロォオオオオオオオオオオ!」


 それを示す化け物の咆哮。

 悪夢は現実に変容する。

 流れ出る冷や汗。

 すくむ足。

 ガチガチとなり出す歯。

 いままでは夢だったから耐えられたのだ。

 それが現実となれば勝手が違う。

 夢の中では自然と動いたはずの足もすぐには動かない。

 次に目の前の道に巨大な影がさした。


 「うわわわわわわ!?」


 その影が引き金になって体は放たれた矢のように動き出す。

 まるで体そのものが考え動いているかのようだ。


 「はぁはぁ」


 俺は道をまっすぐ走る。

 見慣れ通学路に酷似はしているが、街中はボロボロで人がすまなくなって何十年も過ぎたように見える。

 さらに先へ。

 しかし。


 「ここって」


 間違いないさっき通った道だ。

 この郵便ポストと外灯の立ち位置間違いない。

 

 「まさかループしているのか……」


 「グロォオオオオオオオオオオオオオ!!」


 近いここから数メートルないのかもしれない。

 俺は駆け出しながら本身を反らし後方へ視線を飛ばす。

 そんな無茶な体の動きをしたせいで、危うく転倒しそうになりもつれる足を何とか制して声の主を見た。 

 漆黒の巨大な体躯。

 筋肉ははち切れんばかりに盛り上がり。

 一本角の無毛の頭の三つの目玉は鮮血のように赤く同色の焔を纏い。

 俺の頭がすっぽり入るであろう大口に並ぶかろうじて白い歯は黄ばみを帯び。

 そこまでは夢と同じ違うのは強烈な臭気。

 酢を何十瓶も凝縮したようなつんと鼻を突く臭い。

 それはまるで薬品のようで呼吸をして息をするだけで鼻と口内がぴりぴりする。

 このままこれを体内に入れるのは危険だ。

 制服の袖で口を塞ぐ。

 そこまで通気性の良いとは言えない秋口の制服は、マスクの代わりとしては不十分で、ただでさえ足りない酸素の供給量はさらに減り、それでも道をかける。

 この先の道は右は先ほど通った道で左側は――


 「左だ」


 咄嗟にそう判断するがすぐに後悔する。

 酸欠と焦りで忘れていたこの先は行き止まりだ。


 「グロロロロロォオオオオオオオオオオオオ!!」


 化け物は俺を追い詰めたことを確認すると、口も力大量の涎を滴り落とす。

 アスファルト程度簡単に溶かす強酸。

 漏れ出る化け物のおぞましい声。


 「グロロロロ――」


 「うるさい」


 凛とした声が響いた。


 「もう一度言う。うるさい」


 声は化け物の後方から、若い女性の声に聞こえる。


 「グロ!?」


 化け物が後方を向うとした時だ。

 化け物の首が飛んだ。

 吹き出る流血は雨となり降りそそぐ。

 夢と違う所は俺には血がかからなかったところだろうか。


 「三度目はない。見つけた」


 俺は膝から崩れ落ちる化け物――。

 後方に立つ少女――。

 その姿はフリルの沢山ついたゴスロリ風の魔法少女と言ったとこか。

 まだ俺は夢を見ているのだろうか――。

 その顔は影に隠れて良く見えない。

 

 「これは夢ではない、現実この光景全て」


 抑揚のいない声で彼女は言う。


 「私は永劫の魔法少女エマ・エマ貴方を守りにきた」


 「それはどういうことなんだ?」


 「詳しくは後で話す。でもこれは言わなくてはいけない」


 一体何をだ?


 「見つけた貴方は私の最後の希望」


 そう彼女は言った。

 その言葉の意味はそのままの意味で、彼女はずっと解放を願っていた。

 この時より俺たちの物語は始まった。

 

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