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「痛てててて」
教科書で叩かれた頭が地味にいたむ。
叩かれた後ですぐに予鈴が鳴って今は休み時間まだ痛い。
「彼方またなの? 最近多いけど」
そう語り掛けてくるのは俺の幼なじみ。
工藤文香その風貌はアイドル並みに整っていで胸は控えだが、艶のある手入れの行き届いた黒髪の長髪が、人気の学園のアイドルと言われているらしいが、ずっと昔から見慣れているので、確かに綺麗な奴だとは思うがそこまでの驚きはない。
世界線が違っていたらこの俺、彼方要自慢の幼なじみであったかもしれない。
「最近よく眠れてなくてな……」
「また怪物に襲れるとかいう夢で? いい加減医者にいったらどう」
「それ以外はいたって健康だからな。少しばかり睡眠は足りんが別に問題ないしさっきのは少し変だったけどな」
「変てなにが?」
「何か化け物の首が飛んでて見つけたとかなんとか女の子の声が」
「ほんとに医者いったら?」
「ただの夢だから大丈夫だって」
「ならいいけど。ほんとに気をつけてよ。貴方は私のお嫁さんなんだから!」
「文香またそれか、いい加減あきらめろって……」
「だーめ! 貴方は私のお嫁さんなの!」
「へいへい」
「むう私は本気なんだから!」
風船みたいに頬を膨らませる文香。
なんか餌を必要以上にほうばるハムスターみたいだな、
「だったら家事の一つでもできてからいえ」
「仕方ないじゃない忙しくて」
「お前こそ生徒会長なんか荷が重いんじゃないか?」
「そうなのよね……でも辞めるわけには……」
文香は文香で大変だな。
今年の生徒会はポンコツぞろいと聞く。
生徒会は文香1人で全て回しているという噂さえあるほどだ。
まだ俺と同じ高一だというのにな。
「まぁ頑張れ」
「だったら彼方も生徒会入ってよ! 夫婦の共同作業ってやつだよ!」
「えーーやだ」
「なんでよ! 貴方の可愛い奥さんが頑張ってるのよ!」
「だって嫁じゃないし」
「これは作戦Dの決行が試案されそうね!」
「ちなみに何だその作戦?」
「むふふふ男の子の夢って奴よ! 私は彼方が手に入ればそういうのは気にしないから!」
「そうかい期待しておく多分」
「なんで多分なのよ!」
「だってな……」
「だってじゃないうわよ! 全くこんな美少女の寵愛に何が不服なのよ!」
「それ自分で言うといろいろと台無しだぞ」
「むう! 真実じゃない! 私は貴方の前では本音トークよ! 女子の好感度より貴方の好感度を上げたいの!」
「はいはい」
「全く私のお嫁さんはそっけないわね! でもそういう所も好き!」
と抱き付こうとうする文香を手で遮る。
いつからかこいつの好感度が高くなって今ではこれだ。
悪い気はしないが、そこまで深く受け入れる気にはなれない。
その理由は俺にもよくわからん。
文香が可愛いとも美人だと思えるのにな。
「いけず! 出し惜しみは女の子の初めてだけでいいのに! 当然初めては大好きな彼方に予約済みだから! 場所さえ選べばいつだって私はバッチこいよ!」
「そのまま責任取らされそうだから遠慮する」
「えー何でよ! 初めてを捧げた大好きな人と結婚なんて最高じゃない! 女の子なら一度は思う夢よ! 私は彼方と結婚したいの! ここまで私をメロメロにした責任とってよ!」
「勝手にそうなってるくせに」
「でもまんざらでもない事は分かってるのよ! さあ吐きなさい何が足りないの?」