ョシバジナオ ←
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「6つの魂」
タケルが唐突に口にする聞いた事もない言葉。
しかし、思い当たる節がひとつだけある。
それは( )と再会した時に、本来ならば任務内容はあまり口外するべきではないという暗黙の了解を破って聞いた事。
まだ彼女の半身が化物時、正式には3カ月ほど前の真夏だ。
その時はまだ「漂うもの」の浸食を抑える為に離れ小島で任務をしていた。
最後のその島での任務の時、彼女は醜くなり果てた殺人鬼のシンデレラを殺したらしい。
そして元々依頼であった調査を再開した際、今までとは比べ物にならない程の、アルトさえも怖気づく程の物体を見たらしい。
「漂うもの」とは程遠い、それよりも強力で言葉では言い表せない何かと接触したらしい。
【らしい】だらけで曖昧な表現だが、当事者ではない俺らしくて良いだろう。
「コード11が想像している通り、コード05が離れ小島で接触したそれが6つの魂のうちのひとつ」
「名を【くるしみ】」
それの出現はまだ先だと予測していた神様の不手際で( )はその【くるしみ】とか言う存在に出会ってしまった。
コード01からの救出任務を与えられたコード02とコード03の助けによって( )は難を逃れた。
難を逃れたのではなく、死を逃れたのだ。
「で、先の話に戻る」
「シニガミコードは数字が欠けた時に起こるものだ」
「奴等は死神の魂を欲しがるが…これの意味は?」
コード01は紅い髪を揺らして俺に問う。
解かりきってはいるが、答えなど言えない。
一度死んで死神となっているのに、化物にまた殺される。
しかも、俺達は死神になる為の条件を知らず知らずのうちに達成して死神として生き返った。
同じ化物に俺達は2度も殺される。
コード07の無差別大量殺人。
否、ドミノの一枚を抜く事で倒れるのを止める【幸福】は、ある意味人間としての死を与えているも同然だ。
ぐっと憎しみがこもる表情を浮かべていると、コード03がそれを止める。
音もなく駆け出して、俺の頬を両手で触る。
ふわりと舞う黒髪が幻想的で、思わず目を見開いた。
「憎しみに染まるな」
「奴らの思う壺なんだよ」
「私はね、私達はね、お前のような優しい者を守る為にここにいる」
確かにこの言葉で俺の心の中の黒い靄が一気に払拭された気がする。
そしてコード03は微笑んだ。
この俺に向かって微かに笑みを浮かべたのだ。
「さて、話の続きをしようか」