ロウドノエマクタジ ←
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生まれてから25年。
自分は動物に好かれる方だと自負している。
動物から見たら、どうやら俺は人畜無害という印象らしい。
そう思うのは勝手だが、そう思って懐くのは勝手だが、それが本性とは限らない。
現に今、俺は目の前の犬に吠えられているのだから。
本性を見抜く賢い犬だよ、コード05の飼い犬はな。
なんて心の中で褒めてみる。
「アルト、保健所に、連れて行くぞ!」
コード05がリードを引っ張って吠えるのをやめさせようとする。
コード05がそう言った途端、犬は「キューン……」と鳴きながら大人しくなった。
まさかの【保健所】という存在を理解しているとは。
俺は笑った。
よい子は寝る時間、そんな時に街中で笑った。
「( )、アルトに苦労してんのな!!」
「だって( )が、アルトに合った、躾の本、書いてくれないから」
俺達が( )と呼び合うのは珍しい事ではない。
コード05【ヒメカ】とは旧知の間柄である。
彼女とは年齢も同じで、しばらくの間は彼女が行方不明となっていた。
しかしそれが突然、半年前にフードを深く被って、半分黒色の身体で俺に会いに来た。
その要件を聞いて俺はまた笑った。
犬のしつけ方を教えてくれ。
それが2年ぶりの彼女が発した第一声なのだから。
今はどういうわけか肌も肌色で、それはそれは綺麗な卵肌だ。
知り合った頃…高校の時から色気がすごかったが、それがさらに凄まじい事に。
そんな彼女が犬一匹でこんなに苦労するとは……。
「アルト、俺は別にお前を狩ったりしねぇって」
「お前がいなくなったら、( )が死んじまうだろ」
そう言うと、犬はじっとこっちを見て脳内に直接話しかけてきたのだった。
それはそれはドスの利いた声で。
まるで俺を信じてくれないように、突き放した言葉で。
『飼イ主サマ以外ニハ懐カナイ主義ナンダ』