ンテツブウドンガイア☆☆ ←
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【ペットショップ】
猫や犬などのペットはもちろんのこと、それらに関する商品を取り扱う店の総称。
サブタイトル的な店名はその店のオーナーのセンスによって決定する。
俺が働いているこの店の店名は、横文字のジャンルには似合わない縦文字で表記されるべきものである。
【☆☆愛玩動物店】
毛筆による達筆で表記されたアンバランスな看板にも拘わらず、店は相変わらずの盛況っぷりだ。
それはそうだろう。
希少種やマニアックなもの、オーソドックスである平凡種、幅広く扱っているのはこの店だけなのだから。
そしてこの店が収納されている建物自体の集客力が半端ないからだ。
「まじパネェわ~」
こんな感じで声が漏れてしまう程である。
桜京市が誇る最大のショッピングモールの中に、この店は参列しているのだ。
服だったり、雑貨だったり、本だったり、映画館だったり、水族館だったり。
とにかくこの場ひとつで夢の国、とまではいかないがそれなりに楽しめる所である。
だから動物という癒しを求めて、この店に来る人間も多い。
中にはマニアックな動物を求めて、わざわざ来店する人間も多い。
ところで、人間は一方的に彼らの存在に癒されている。
それはそれは本当に一方的である。
ケージという狭い空間に押し込められた後は、ガラス越しに見られる毎日。
ごった返す人の波に、奏でるのは人間の耳障りな声。
それでいて、飼い主は自分の手で決められないというもどかしさ。
それに耐えている動物はすごいと思う。
人間が耐えられた状況ではないのは確かだ。
それでも人間は自分勝手である。
意思疎通のできない動物になら、その不快感と絶望を簡単に与えてしまうのだから。
「………」
混雑する店の中で、赤いエプロンをした俺は一人立っていた。
そうするだけで仕事は遂行できるし、そうしているのが仕事だ。
その最中にしなければいけない事は客が持ってきてくれるのが接客業。
早速、若いカップルが声を掛けてきた。
どうやら今さっき昼寝を始めた仔犬が気になるらしい。
せっかく寝たばかりなのに可哀そうだ。
そう言ってしまえたら楽なんだろうが、それではいけないのが接待だ。
嫌な感情を胸に抱いたまま、ゆっくりと笑顔を作る。
そしてカップルと共に目的の仔犬を見に行ったのだった。